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享年0歳

作者: 明日朝明日
掲載日:2025/11/07

彼は生まれた赤子を見ていた。亡霊として。


彼は本来生まれるはずだったのだが、魂が宿る直前寸前に押しのけられ、魂は宿らずに空へ還り、亡霊として生まれた。


喚き泣き散らしても誰も宥めない。

誰も見てくれない。


生まれた子供はすくすく育っていくのを、彼はずっと見ていた。干渉も何もできずに彼も育った。


彼は思った。


何かが違えば、何か少しでも変われば、あの身体は僕のものになっていたのかと。

生まれて育って、愛を受けて愛を与えられる存在になっていたのかと。


しかし、そんなことはできない。亡霊としてしか育つことができない。誰にも触れられない、悟られない存在として。


しかし、代わりに生まれたその子を見ていると、何か変な感情が湧いた。


よく泣き、よく笑い、よく眠るその子は、うざったく、しかし愛しかった。

時々、亡霊は泣いている彼を包んだ。

彼は亡霊の存在には気づかなかったが、なぜか暖かかった。


亡霊は見守り続けた。

そしてそして、彼は大人になり、泣くこともなくなった。


亡霊は「もう見守る必要もないだろう。僕の存在は不必要だろう」と思った。


そして亡霊は彼の元から去った。

それから数年後、彼の両親が亡くなった。交通事故だった。

彼は嘆き苦しみ、すべてどうでもよくなり、飛び降りて死のうとした。



その時に、彼の携帯に電話が鳴った。


彼は驚いた。なぜなら、携帯は電源が入っていなかったからだ。

慌てて出ると、電話の主は言った。


「まだ来てはいけない。まだ君は一人ではない」


なぜか彼はその声に覚えがあった。小さい頃、幼い頃の記憶の隅にあった。


「あなたは誰?」と彼は聞いた。

電話の主は言った。





「君の一部だよ」

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― 新着の感想 ―
せつないですが、優しいお話ですね。 亡霊の彼は、生まれた彼を自分の分身のように感じていたのかなと思いました。 あいつさえいなければ、と思ったはずが、いつのまにか。 明日朝明日さん、ありがとうございまし…
寂しくてやさしい、良いお話
2025/11/08 22:14 誰も皆心に冬を隠してるというけど
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