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序 章 十五年前
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バルサザール、お前を殺したのは私。
八月の第四土曜日、ミズモ乗馬クラブの観覧席から仰ぎ見た空は真っ赤で、美術の授業で見せられた赤い夕焼けの写真と同じだと思った。
もうすぐ麻布獣医大学の馬運車が来る。
笙が、待機馬場に横たわったバルサザールの頭の傍に立っているのが遠目にもわかる。
私もあそこへ行かなければ。
あの子と一緒にいられる時間が、どんどんなくなっていく。
なのに…行けない。
うつむく笙の姿が私を拒絶しているのがよく分かる。
いや、そう感じられて悲しみよりも、怯えが私を観覧席に固める。
お前が追い込んだ。
お前がその心臓が破裂するまで動かした。
お前がその拍車で休むことを許さなかった。
そう――私だ。