第6話 フェンリルさん
「えーと確か、ここであってますよね」
俺は今日エルデンリッチにある冒険者ギルドへと足を運んでいた。
冒険者ギルドの名前は"戦神の杯"といい、この世界の冒険者達は基本的に皆んなここに所属している。
「失礼します」
扉を開け中に入ると屈強な肉体を持った男や魔法使いのような身なりをした女性、体調が悪そうな見た目をした不気味な男など様々な人や中にはエルフやドワーフ、獣人といった他種族までもが飲み食いをしながら騒いでいた。
「すみません。ここ、窓口であってますか?」
「はぁーい!」
そんな中を一般人の俺が堂々と歩くのは怖いので壁沿いをゆっくりと気配を消しながら歩き、窓口まで来て声をかけたら元気な声で返事をしてこちらに小さな女の子がやってきた。
「はいはーいなんでございましょーかー!」
「・・・子供?」
「あ?誰が子供でごぜぇますかぁぁぁ!」
「いででででで!頭噛まないでくださぁい!」
子供と言った途端、態度が豹変した少女に頭を齧られ窓口前を転がりまくった。
「ん?何してるんだい少年?」
そんな俺の前に受付嬢の姿をしたフェンリルさんが白いパンツを見せながら真上に立っていた。
「・・・パンツ、見えてますよ?」
「もう、見せてるの」
「あの、冗談はいいのでこの子、どうにかしてくれませんか?」
「おやおや、ナミ先輩またやってるんですか?」
「ガルルルル!」
完全に理性を失ってしまっている少女をフェンリルさんは持ち上げて体をゆすった。
「あれ?私は何をしてたんでちょう?」
「相変わらず子供に間違われると理性飛んじゃうねぇ〜」
「あ、あの、俺呼ぶなら最低限、そうゆう事は教えといてくださいよ・・・」
頭から流れる血を抑えながら俺は今日ここにきた本来の目的であるフェンリルさんに文句をいった。
「あはは〜細かい事は気にするなよ少年!」
「はぁ・・・まぁいいや。それで俺が呼ばれた理由何ですか?」
「あぁ、それならあっちの部屋で話すよ。ついてきた前少年」
「だから少年じゃ・・・はぁ、わかりましたよ」
フェンリルさんに着いて行き、俺は少し先にあった部屋に歩いていった。
部屋に入りフェンリルさんから出された紅茶を啜りながら事情を聞く事になった。
紅茶を出してくれたナミさんは子供扱いした俺を睨みながら仕事に戻るために部屋を後にした。
「それで俺はなんで呼ばれたんですか?」
「実は私の仕事の手伝いをして欲しくてね」
「え?いやいや、そんな事言われても俺には無理ですよ。第一、何の手伝いですか?」
フェンリルさんはギルドで受付嬢や雑務、時には新人冒険者の教育などを担当している。過去にも何度か俺が密かに手伝うことはよくあったので今回もそれだろう。
「実はね、今度新人冒険者の子と一緒に魔獣アクノシシの討伐に行く事になったんだけど、今回もついてきてくれないかい?」
「またですか、とゆうかアクノシシってまた厄介な奴相手にしましたね」
アクノシシ、この街から東に進んだところにある森に最近現れ、自分のテリトリーを広げてきている魔獣だ。
「それ初心者にはキツくないですか?」
「そうなんだけどね〜。本人達は何かすごくやる気出してるんだよね。勿論、私も止めたよ?」
彼女はふざけているように見えて意外と仕事はできる。ギルド内でも頼られる事が多く、今回のもそれなのだろう。
「ねーねー頼むよ少年!お礼は沢山してあげるからさ?主に夜の方で、ね?」
「あははは、帰っていいですか?」
乾いた笑い声を出しながら管理人はそのまま部屋を後にする為に立ち上がり扉を開けて出ていった。
「あ、ちょ、冗談だってば!待ってよしょーねーん!!」
そんな管理人を追ってフェンリルのフェラもまた部屋を後にしていった。
ーー
次の日
「えーじゃあ今日、魔獣アクノシシの討伐に行く子たちは君達で間違いないんだね?」
「おう。その通りだぜ!」
「よろしい。私は君達のサポートをする為にきたフェラと言う。で私の隣の彼は管理人だ」
「よ、よろしく〜」
あの後、ギルド内で土下座をされて結局手伝わされる羽目になった俺は初心者冒険者の討伐任務の手伝いに駆り出された。
今回のパーティはリーダーで剣士のレオ、魔法使いのミミ、重騎士のバジルの三人組で構成されたパーティーらしい。
「なぁ!とっとと討伐しに行こうぜ!!」
「落ち着きなよレオ」
「なぁ、あっちのパッとしない男誰?ギルドでも見たことないぜ?」
パッとしなくてごめんなさいね。自分でもキャラは薄いと思ってるからほっとけ。
「てゆうかよ。受付嬢が何で来たんだよ。俺達だけでも余裕だって!」
「こらこら、君達が今回討伐しようとしてるアクノシシは結構厄介な相手だからね。冒険者なりたての君達では荷が重いんだ」
「何だよ!俺の実力が信じられないのかよ!俺は故郷では一番な実力だったんだよ!」
「なるほど。おーけー、じゃあ私と管理人くんはギリギリまで見学しておくよ」
「え?い、いいんですか?」
フェンリルさんはあっさりとそう言ったが、今回俺達が来た目的は無茶をさせない為な筈なのにそれはどうなんだろうか。
「あ、あのフェンリルさん?いいんですか?」
「ん?あぁいいよいいよ。危なくなったら助ければいいんだよ。私もそこまで馬鹿じゃないよ?」
「へへっ!じゃあ行こうぜ!ミミ、バジル!俺達の伝説はここから始まるぜ!!」
「あ、レオくん!先に行っちゃダメだよ!フェンリルさんの言うことちゃんと聞かないと!」
一人先走って森へと走っていったレオくんの後を追って俺達も森へと向かった。