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第22話 とらぶる

 次の日から俺の嫌な予感は見事に的中してしまった。

 昼食終わりにエイカさんはアンリさんと自分の食べ終わったお皿を洗いに行った。


 「貴様の様な人間にアンリ様のお皿を洗わせるわけにはいかん!」


 と、言うことらしい。よほど、俺にアンリさんの皿洗いをさせるのが嫌だったのだろう。

 丁度いいやと思い、洗濯物を畳んでいるとキッチンの方から何度も皿が割れる音がして、扉を開けてアンリさんとエイカさんが入ってきた。


 「か、管理人、変わってくれ。エイカの奴不器用すぎる・・・」

 「も、申し訳ありませんアンリ様・・・」

 「あ、あははは・・・、えっとそれじゃあ、洗濯物お願いしてもいいですか?」


 途中まで終わっている洗濯物を床に置いて、皿洗いの為に立ち上がりついでに洗濯物を頼んだ。


 「誰が貴様なんぞの命令を聞くか!」

 「エイカよ、やるぞ」

 「はい。アンリ様!」

 「えぇ〜・・・」

 

 まぁ大体、予想はついていたがアンリさんの言うこと以外は全く聞かないので困り果てている。

 厄介なのは、これが俺だけじゃなくてアパート中の皆んなにも迷惑をかけていると言うことだ。


 「あ、あのあのエイカさーん!」

 「これはアンリ様が苦手なゾッコリ、これはマイン、何故こうもアンリ様の嫌いな物ばかり・・・まさか貴様アンリ様の命を狙う敵か!」

 「ち、違いますって!!それは今度の授業の・・・」

 「言い訳無用!!」


 剣を抜いたエイカはそのままモニに斬りかかったが、寸前のところで管理人が割って入り、白刃取りで受け止めた。


 「あっぶな・・・」

 「お、おにいさん!」

 

 本当にギリギリだった。

 今のこの剣は完全に殺る気の威力だった。額から顎にかけて温かい何かが地面に落ちるくらいには俺も寸前なほどだ。


 「お兄さん、血が!」


 どうやら少し額を切ってしまっているらしく、頭から血が出てしまっていた。

 直ぐにモニちゃんはポケットからハンカチを取り出して、額に当ててくれた。


 「くっ!やはり貴様もアンリ様の命を狙って!」

 「エイカ!何をやっているのだ!」


 怒りのままにエイカさんはもう一度、剣を高く上げて振り落とそうとした時だった。

 モニちゃんの部屋での異変を感じ取ったのか、アンリさんが扉を思い切り開けて、凄い形相で俺とエイカさんの間に割って入ってきた。


 「ッ!アンリ様、ですがこれには深い訳が・・・」

 「言い訳は聞かぬ!今日で何度目だ?さっきもガレナの部屋で問題を起こしていただろう!」


 おっと、それは初耳だった。俺が少し留守にしている間にそんな事があったのか。

 どうりでガレナさんが休みの日なのに部屋に閉じこもってる訳だ。


 「しかし!私にはアンリ様をお守りするために、本当にこのアパートの住人が安全で信用にたりうる者達であるのか理解しておく必要があるのです!」

 「ばかもん!たった二日やそこらでそれがわかる訳ないであろう!?」


 従者としては主人の為、身を粉にして動く彼女の行いは百点満点だと思う。しかし、当のアンリさんからしたら、迷惑極まりない事なのだろう。

 

 「お兄さんお兄さん」


 服の裾をグイグイと引っ張りモニちゃんがそばに寄ってきた。


 「どうかした?」

 「止めなくていいんですか?」

 「あー・・・」


 確かに止めた方がいいのだが、エイカさんは俺の言う事は一切聞かないのだ。

 だから今ここで無理に割ってはいってもさらに状況を悪くするだけなのだ。


 ーー


 その日の夜、俺とアンリさんの二人はエイカさんの事について話し合っていた。


 「どうしたもんかなぁ・・・」

 「あやつは昔から行き過ぎたところがあったからな。魔族同士の友好を結ぶ時などもエイカがいるだけで大変だったものだ」


 このままでは何処かでアパートが住民同士の喧嘩で跡形もなくなってしまう可能性すらある。

 そうなっては異世界でのスローライフどころではなくなる。


 「はあぁい管理人とアンリちゃ〜ん」


 俺とアンリさんが頭を悩ませている時だった。このアパート内でも一、ニを争うくらいにめんどくさい男がやってきた。


 「・・・何で来たんですウィル?」

 「おいおい、そりゃないぜ。僕だって一応、このアパートの住民じゃないか。街で聞いたよ何かあったんだって?」

 

 ヘラヘラと笑いながらウィルは履いていたサンダルを脱いでずかずかと部屋に入ってアンリさんの隣に座ってきた。


 「それで何を二人で頭抱えて悩んでいるんだい?」

 「ウィルには関係がないからとっとと借金と家賃を払って帰れ」

 「いや、ここ一応僕の住んでるアパートでもあるんだけど・・・」

 「まぁ落ち着け管理人よ。この際だ、この男にも話を聞いてみようではないか。此奴、女の扱いならば得意であろうしな」


 アンリさんの言葉に俺は少しだけ考えてみる事にした。確かにウィルは女性関係にダラシなく、日常的に命を狙われることも珍しくない男だ。

 それは裏を返せば女の人の扱いに長けてるとも言える。・・・長けているのだろうか?


 「まぁでも確かに聞いてみるのは悪くないかも知れないですね。そう言うわけでウィル力を貸して欲しい」

 「仕方ないなぁ借金と家賃をゼロに、」

 「は?」

 「いや何でもないよ!聞こうじゃないか!」


 俺とアンリさんはウィルにエイカさんとの話の一部始終を話した。

 

 「と言うわけなんだ」

 「・・・なるほどねぇ」

 

 ウィルは腕を組んで少しだけ考える様子を見せた後に笑顔でとんでもないことにを言いやがった。


 「よし!なら、合コンをしようか!!」

 「「はぁ?」」

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