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第17話 漆黒纏いし者

 小鳥がさえずる朝八時、俺とアンリさんはいつものように食事をとっていた。


 「うまい!いやー!!!やっぱり、ご飯は美味しいですよねー!!!ね!アンリさん!」

 「う、うむ。な、なぁ、管理人よ・・・」


 朝から妙にテンションが高い管理人に対してアンリは若干、引きながらも声をかけた。


 「何ですかぁ!!!」

 「い、いや。お、お前、声がいつもより、デカくないか???」

 「そりゃそうですよぉ!!!なんせぇー!・・・なんか知らない人がいるんですからねぇ!!!」


 管理人は窓際の方を指差した。アンリもそれに続いてそちらを見てみるとそこには、正座をしてこちらをジッと見つめる黒い騎士を着た人物が座っていた。


 「なんですかアレ!?何であるんですかアレ!?意味わかんないでしょアレェェェェ!」

 「何だそんなことで騒いでいたのか。見てわかるだろ・・・黒い騎士だ」

 「そりゃわかりますよ!俺が言ってるのは何でこんな所にいるんだって言ってんだよ!!?て言うか、何でそんな冷静なんですかぁぁぁ!」


 突然現れた見るからに物騒な黒い騎士に俺が混乱している中、アンリさんは当たり前だと言わんばかりにキョトンとしていた。

 俺だけ並行世界に気づかずに迷い込んでしまっているのだろうか??

 

 「お久しぶりです。アンリ様、ずっとお探ししておりました」


 黒騎士はそう言って深々とお辞儀をした。声は魔法か何かで声音を変えているっぽく、男か女か判別しづらい声色だった。


 「うむ。久しいな黒騎士エーダ」

 「え、知り合いなんですか??」


 あまりにも自然に挨拶をしたアンリさんを思わず二度見してしまった。と言うか、知ってる奴ならもっと早くに追い出せよ!こいつ五時からずっとあの格好でいたんだよ!?


 「こやつは私の右腕だ。通称、魔剣のエーダ、我らの軍きっての剣の使い手だ」

 「へー・・・って、そんな事はどうでもいいんですよ!?何でそんな凄い人がこんな所に来てるんですか!?」


 この街はrpgで言うところの中間地点に当たる街だ。そんな凄い人がわざわざ足を運ぶような事はない。いやあるのか目の前にいるアンリさんが目的か。


 「アンリ様、単刀直入に申します。我らの軍に戻って来てください」

 「断る」

 

 速攻だった。アンリさんは黒騎士の言葉が言い終わると同時に断ると断言した。

 黒騎士は甲冑を着ているので、表情は読み取れないが断ると言われた瞬間、顔を上げていたので恐らく驚いていると思う。


 「な、な、何故ですか!?アンリ様!」

 「ん?私は今人間を知るためにここにいるのだ。ちゃんと理解出来るまでは帰るつもりはない」

 「そんなバカなことを言わないでください!これは貴方の姉上である、ブリュン様からの直々の命でもあるのですよ!?」

 「え?アンリさん姉いたんですか?」

 「うむ。上に兄と姉がおる。しかし、ブリュン姉様からの命ならば余計帰りたくなくなってきたぞ」


 何かトラウマでもあるのか、アンリさんはめんどくさそうにする時の表情をしており、エーダさんの方もそれを察したのかガクリと顔を下げた。


 「・・・わかりました」

 「ん?そうか。ではブリュン姉様によろしく伝えておいて、」

 「アンリ様、貴方に決闘を申し込みます!」

 「「え?」」


 顔を下げたかと思えば、突然立ち上がりエーダさんはそう告げた。

 

 「ふっ、エーダよ。私を誰だと思っている。この"美麗の緑魔"である私に勝てるとでも?」

 「あ、その設定久しぶりですよね」

 「勿論、理解しております。しかし、失礼ながら今の平和ボケしておられるアンリ様に私は負けるとは思いません」


 おお、意外だった。このエーダさんからはアンリさんを本気で慕っているように言葉の端々から感じ取れていた。だから、ここまでアンリさんを挑発するとは思えなかった。


 「言うではないか。ならば、よかろう!このアンリ・マンラがお前の相手をしてやろう!」

 「ありがたき幸せ。では私が勝てば、アンリ様には我らの元に戻ってもらいます」

 「ならば、私が勝てば戻らない」

 「かしこまりました。では"転移(テレポート)"」


 エーダさんがそう言うと俺達は広い草原へと場所を移していた。 転移(テレポート)は魔法の中でも扱うのが難しい部類に入る魔法だ。

 剣だけじゃなく、魔法まで得意なのか。


 「ふっ、中々いい場所を選んだではないか。さぁて久しぶりに揉んでやる」

 「殺す気で来てください。そうしなければ・・・今の貴方では勝てませんよ?」


 腰に下げてあった鞘から剣をエーダさんが抜いた瞬間、その雰囲気が一気に変化した。

 圧倒的な殺気が周囲を支配し、その殺気に気圧された俺は一歩後退りしてしまった。


 「中々、言うようになったではないか。この私を前にしてその強気な発言、面白い!かかってこい!」

 「あ、あの・・・水を差すようで申し訳ないんですが、アンリさん」

 「何だ管理人よ」


 少し膨れっ面をしてアンリさんは俺の方を振り返った。・・・どうやら久しぶりに昔の知り合いに会って今の自分の状況を完全に忘れているようだ。


 「あの、アンリさん今戦えるんですか?」

 「何を言って・・・あ、そうだった。私今、魔力がほぼないではないか」

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