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第11話 ガレナさん③

 「よし、到着」


 庭から屋敷までは何故かすんなりと侵入する事ができ、俺は今長い廊下で障害物から障害物へと隠れながら進んでいた。

 屋敷の中には流石にエルフ達が大勢おり、メイド姿のエルフが巡回していた。


 「ガレナさんはどこにいるのかな・・・」


 屋敷の中は貴族という事だけあってそれなりに広く、豪華な装飾が施されたカーペットに上手そうな絵やエルフの石像が至る所に設置されていた。


 「それにしても何でメイド服ってこんなにいいもんなんだろうか・・・」


 白黒というシンプルな色にフリフリのスカートに着崩していない筈なのに漂うエロす、更にそれをエルフが着ているのだ、今この瞬間だけは貴族を讃えて上げたい。


 「っとそうじゃなかった。ガレナさんどこだろう・・・やっぱドルマントの所しか考えられないよな・・・」


 エルフ達の隙をついて一つ一つ扉を開けて行きながら、部屋を確認していき最後に残った部屋の前に辿り着いた。


 「ここが最後か」


 ドアノブに手をかけ、扉を開けようとした時だった。その奥からドゴンッ!!という大きな音が聞こえてきた。

 ガレナさんに何かあったのかと思い、慌てて部屋に管理人が入るとそこには意外な光景が映っていた。


 「ガレナさん!!大丈夫で・・・す・・・何してんですか??」

 「ひ、ひぃ〜!助けてぇ〜!」

 「・・・」


 扉を開けた先には、部屋の隅まで追いやられ、汗だくでガタガタと震えている小太りの少年とキングサイズのベッドを片手で持ち上げ、今にもドルマントにぶつけようとしているガレナさんの姿があった。


 「あれ?え、えー普通逆じゃないですか?・・・」

 「・・・」!!


 部屋に入ってきた俺に気が付いたガレナさんはベッドを床に放り投げ、近づいてきた。


 「ぶ、無事、でした、ね・・・」

 「・・・」コクン


 助けに来たはずなのに、なぜか悪役みたいな少年の方が怯えてる。・・・え、俺、助けに来た相手、間違った?てゆうか助けに来る必要あったか!?

 

 「ガレナさん、あの、俺いまいち状況が分からずに助けに来たんですが、今どんな状況ですか??」

 「・・・」?

 

 ガレナさんは俺からの質問に対して、何のことか分からないと言った風に首を傾げてきた。

 そもそも彼女は話す事が出来ないから知っていても聞けるはずはなかった。

 少しだけ考えた後、未だ部屋の隅で怯えている少年を見てみた。彼から話を聞いて見るしかないよな。


 「あー、ドルマント様であってます??」


 恐る恐る、近づいていき怯えている少年の肩をぽんぽんと軽く叩き確認をとってみた。

 確実にそうなのだろうが、もしかしたらと言う事も万に一つある事からなるべく優しく聞いてみた。


 「お、お前、だ、誰だ!!?」


 小太りの少年はガタガタとその体を震わせながら、怯えた表情で俺のことを見てきた。

 どうやら相当ガレナさんが怖かった様で、まだ数分も経ってない相手である俺相手にもびびりまくっていた。


 「あ、俺は彼女の住んでいるアパートの管理人してます管理人さんって呼んでください。怖がらなくていいですよー?」

 「ひ、ひぃー!」


 ダメだ。相当怖かったのだろう。貴族相手にあんな事する様な人はこの大陸中を探しても・・・そこそこいるな。アンリさんとかフェンリルさんなら速攻でやってる気がする。


 「どうしようか」

「・・・」くいっくいっ

 「どうかしたんですか?」


 ガレナさんは俺の服の裾を引っ張り、椅子を指差していた。

 どうやら一旦、落ち着かせた方がいいと言う事だろう。まぁこうなった原因はガレナさん何だけど、その提案はナイスアイディアだと思い、俺は少年を立たせて席に座らせた。


 ーー


 しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻したドルマントは奴隷のエルフ達に紅茶と高級菓子を持って来させた。


 「それで一体何があったんだい?」

 「何でこの僕がお前みたいな貧乏臭い奴に言わなきゃ行けないんだよ!!」

 「・・・」ムッ


 ドルマントの言葉に再び怒りを露わにしたガレナさんは、ドルマントを立ち上がり睨みつけた。

 それだけでドルマントは怯えた初め、諦めたのか肩を落として話を始めてくれた。


 「実は・・・が、が、」

 「蛾?」

 「ガレナさんに一目惚れして、ついここまで誘き出すような手紙をエルフに書かせてしまいました!!」

 「「・・・」」


 俺とガレナさんは凍りついてしまった。俺はてっきり勝手の仲間を人質にとってガレナさんを奴隷にするつもりだとばかり思っていた。

 ガレナさんもどうやらそれらしき内容が書かれていたからここまで来ていたんだと思う。

 となりをそっと見て見ると、普段感情を顔に出さないガレナさんが顔を引き攣らせドン引きしていた。


 「あの日、鍛冶屋で貴方に出会った時に感じたんだ。こんなにも強くて美しいエルフは見たことがないとね!だから君の力も心もすべて僕のものにしたかったんだ!その方がガレナさんにとっても幸せだと思うよ!?」


 この少年は確かにガレナさんに恋をしているのだろう。それは直ぐに理解出来た。だが、やはり彼も貴族の一人だ。告白している筈なのに上から目線でものを言ってしまってる。


 「・・・」ムカッ


当然、ガレナさんも腹が立ったようでお茶とお菓子が用意されている机を持ち上げぶつけようとしていた。

 今日初めて知ったのだが、彼女は意外と短気だったらしい。


 「ひ、ひぃー!!?」

 「ガレナさん落ち着いてください」

 「・・・」コクン


 怒り狂っているわけではないようで俺がそう言うと大人しく机を戻し座り込んだ。

 一応彼の名誉の為に言っておくと彼はエルフ達をぞんざいに扱う事はしていないらしく、部屋を見ていた限りでは、普通の人と変わらない生活を送らせていたと思われる。天竜人よりはマシなのだろう。


 「まぁこれを見た通り、ガレナさんは貴方の元に行く事はないと思いますよ?それに早く返さないとドワーフがここ襲撃してきますよ?彼らには貴族だとかそんな事、関係ないので」

 「ど、ドワーフ!?わ、わ、分かった!分かったからもう帰ってくれ!!」

 「ありがとうございます」


 ドワーフ達は動かないようにお願いしといたので勿論これは嘘なのだが、この様子だとモルグラスさん達が相当怖かった様で涙目にまでなっていた。

 まぁ彼らドワーフは顔が強面だし、あの筋骨隆々な体つきだ恐れられるのも無理はない。


 「さ、帰りましょうかガレナさん」

 「・・・」コクン


 ーー


 「ガレナ!無事だったみてぇだなぁ!!」「心配かけやがって!」「ガレナが帰ってきた祝いだ!今日は酒飲むぞ!」「おっしゃ!買ってくるぜ!」

 「・・・」こくん

 

 ドルマントの屋敷を出て、アンリさんと合流した俺達はそのままドワーフさん達の元に帰ってきた。

 帰ってきて早々にドワーフの皆んなは俺達を囲んで祝杯をあげ始めた。


 「うひぃ〜、あの人達は相変わらず飲むペースが早すぎるんだよ・・・」


 ドワーフは全員もれなく酒に強く、飲むペースも異常に早い。昔、この街で酒をどれだけ飲めるかの大会が開かれた時、ドワーフの飲む早さにつられて多くの参加者がアルコール中毒になって倒れていた。


 「うぁ〜、夜空綺麗だなぁ〜」


 ドワーフさん達に飲まされた酒のせいで、頭がぽわぽわしており思考が上手く出来ない俺は外に出てしばらく風に当たることにした。

 部屋では未だアンリさんとドワーフ達が飲みまくっていた。勿論、アンリさんにはノンアルのジュースを与えているのだが、場酔いしてしまっているので気がついていない様子だった。


 「・・・そう言えば、ガレナさんはどうしてあそこに行ったんだろう?」

 

 あの手紙の内容はアンリさんによれば、『エルフの仲間達を奴隷から解放したかったら屋敷まで来い』と言う内容だったらしい。

 ガレナさんがそれで助けに行ったと考えるのが自然なのだが。


 「んー・・・どうにも腑に落ちないんだよな・・・」


 ガレナさんはエルフ達から迫害を受けてきたんだ。今更助ける様な義理もない。

 それでもガレナさんが助けに行ったのは一概に彼女が優しいからなのだろう。

 しかし、何か他に理由があるような気がしている自分がいる。


 「かーんーりーにーん!!」

 「おわっ!?」


 考えていると突然後ろからアンリさんが背中目掛けて飛び込んできた。


 「いきなりなんですか!?」

 「おう、管理人お前こんな所にいたのか!」

 「モルグラスさんまで!?」

 「まだ飲みの席は始まったばかりだぞ!!ほら行くぞ!」

 「え、ちょ、俺はもうッ!!」


 こうして俺はアンリさんに無理矢理連れられ、再びドワーフ達の飲み会に参加させられた。

 そんな彼らを屋根の上から眺めていたガレナはふっと少しだけ笑いながら首にかかっているペンダントを取り出した。


 「・・・」ジッ


 ペンダントに入っていた写真にはガレナとそんな彼女によく似た少女がそこには写し出されていた。


 「・・・ガラナ」


 喋る事を辞めた少女は一人、その写真を指で触れながら掠れる様な声でそう呟いた。

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