第1話 曲者揃いの住民と管理人
金曜日に出した勇者パーティーを追放されたら、魔王の娘に出会いましたのその後な感じのスローライフたまにバトル物語です。
ここはエルデンリッジという街の端にあるアパート。
朝目が覚めると布団を片付け、朝食の準備を始める。そして、朝食を作り終えたら同居人を起こすのが俺の一日の始まりだ。
「アンリさーん!いい加減、起きてくださーい!」
「んがっ・・・んんっ・・・」
「アンリさんってば!」
案の定、返事がない。俺はため息を吐き、リビングへ向かう。そこには、美しい緑色の髪に白く透き通る肌をした年齢は九歳前後の少女がいびきをかきながら鼻提灯を作って寝ていた。
「・・・まったくまたですか。アンリさん!アンリさんってば!いい加減起きてください!これじゃあベッド片付けれなくて朝食食べれませんよ!」
「んあぁ・・・おぉ管理人、おはよぉ〜」
アンリと呼ばれる少女は大きな欠伸をしながら、まだ寝ぼけているのかぼけっとしながら窓の外を眺めていた。
「あ、あれアンリさん?おーいアンリさーん!」
「眠い寝るお休み・・・」
「ね、寝るなぁぁぁ!!!」
俺は布団を無理矢理ひっくり返しアンリさんを床へと放り投げた。
「まったく!こんな毎日ぐーたらしていたら魔王が泣きますよ!?」
「構わん・・・とゆうか父上も割とこんな感じだ・・・」
「緩いな魔王軍!?とにかく歯磨いて顔洗ってきて下さい!」
「んあ〜」
アンリさんは起き上がり寝癖を沢山つけた髪をかきながら、とぼとぼ洗面台まで歩いて行った。
「まったく・・・」
ここは俺が経営するまほろば荘と言って、俺はある日、この異世界のレイヴァス王国と言うところに大勢の人々と共に勇者として召喚された。いわゆる異世界転移と言うものをしてこの世界にやって来た。
「おい、管理人よ、歯磨き粉がもう無くなるぞ」
「え、本当ですか?昨日はまだ沢山ありましたよ??」
「うむ。目測を誤ってな、鏡と床と洗面台が歯を磨いている状態になっとる」
「あの、それ俺のせいじゃないですよね?後でアンリさんが責任持って買いに行って下さいね?」
「えぇ〜めんどくせぇ〜」
そしてこのブー垂れている少女の名前はアンリ・マンラと言って、こう見えてこの異世界に存在する四人の魔王の一人である魔王ゾロディーンの一人娘で魔族だ。
彼女とは俺が勇者パーティーから解雇されて、この街に来た時に森で出会ったのが始まりだった。
「ほらアンリさん!いい加減にシャキッとして下さいよ!」
「ううむ。だが眠いのだぁ〜」
「全く・・・そろそろ他の皆さんもいらっしゃいますよ」
その瞬間、部屋の外の階段をドタドタと音を立てながら上がって勢いよくこの部屋の扉を開け、狼の耳と尻尾をつけた中性的な見た目をした女性が入って来た。
「おっはよう少年!!!今日も食べに来たぞぉ!」
「おはようございますフェンリルさん」
「ノンノン。私の名前はフェrー」
「フェンリルさん!おはようございます!」
彼女はフェンリル。本名はフェラと言って僕が昔、勇者として活躍していた時から、何処にも属さず一匹狼としてこの世界で勢力を保っていた存在で何処から聞き出したのか、このアパートやって来て住み着き人間社会で働いている。
因みに今は何を思ったのか冒険者ギルドの事務員として働いている。
「てゆうか、少年は辞めてくださいよ。もうそんな歳じゃないですから」
「何を言ってるんだい?私にとっては君はいつまでも少年さ。ほら私があーんでもしてあげようか?」
「あ、それは結構ですので早くご飯食べちゃって下さい」
「あーん、酷いぃー」
「お邪魔しまーす!」
「・・・」コクリッ
フェンリルさんを適当にあしらっていると今度は元気な声が玄関から聞こえ、大きな胸を弛ませながら制服をきた女の子と無口な少女の二人が入って来た。
「おはようございます管理人さん!」
「ああ、おはようモニちゃん、ガレナさん」
「・・・」コクリッ
制服を着た女の子の名前はモニといい、魔法使いのたまごで現在エレクセントリック魔法学校に通っている一年生の子だ。
もう一人はエルフのガレナさんといい、アンリさんよりもニ、三歳上の見た目をしているが、実は彼女は五万歳であり、このアパートの中では最年長の女性となっている。
「おっはよぅぉ!モニちゃんは相変わらずココがムチムチのプニプニねぇ!」
「うひゃぁ!?ちょ、また!?フェンリルさん辞めて下さい!!!」
フェンリルさんはモニちゃんの胸を鷲掴みにして、そのたわわに実った二つの果実の柔らかさを堪能していた。
勿論、俺だって男だ。見ないなんてことはできない。じっくりとそれを堪能させてもらい、
「じゃあなかった。フェンリルさん!早く食べないと遅刻しますよ!!」
「おっとそうだったね。今日は冒険者達の待遇改善の会議だから遅れると面倒だった」
フェンリルは朝食を一瞬で済ませた後にすぐに慌ただしく部屋を出て行った。
その後、モニちゃんも食事を食べ終わって元気に魔法学校へ登校していった。
「ガレナさんは今日、またドワーフさん達の所ですか?」
「・・・」コクリッ
「頑張って下さいね」
食事をし終わったガレナさんはそのまま立ち上がり台所に食べ終わった皿を置いて仕事に行く為に、ドアノブに手をかけた。
だけど、
バキッ!
「・・・」シュン
「あ、あはは・・・またやっちゃいましたか」
そう、彼女はとんでもない馬鹿力の持ち主なのだ。 本来エルフというのは魔力は高いが非力な種族なのだが、ガレナさんはどうやら突然変異という部類に入るらしく、そのせいで住んでいた村を追放されこのアパートに住むことになったらしい。
「大丈夫ですよガレナさん。あとは俺がやっておきますから。はい、これお弁当頑張って下さいね!」
「・・・」コクリッ
ガレナさんがアパートを出て行った後、俺はドアノブに応急処置を施した後、俺は未だ呑気にもぐもぐしているアンリさんを見てため息を吐いた。
「もぐもぐ、何だこれは私のだぞ」
「そんな事、分かっていますよ。ハァ…アンリさんも家でゴロゴロするくらいなら何か手伝って下さいよ・・・」
アンリさんに出会って、このアパートを建ててから数ヶ月が経過している。その間に入居したフェンリルさん達は皆、何かしらの職についたりしているが見た目が少女である事からアンリさんは日がな一日食って寝ての毎日を送っている。
「馬鹿もん。もぐもぐ・・・私はこれでも魔王ゾロダースの娘、アンリ・マンラなのだぞ。働くなどプライドが許さん」
「そんなもんゴミ箱にポイして下さいよ」
「何を言うか。燃えるゴミにも燃えないゴミにも入らんぞ」
「そこじゃねーだろ働け」
と言いつつも結局、アンリさんをこうしてゴロゴロさせてしまっている。
「うぃ〜食べた食べた。相変わらず管理人、お前の作る料理は美味いな!」
「ありがとうございます。皿洗いたいんでこっちに持って来てもらっていいですか?」
「はいお〜」
実は今のちんちくりんな姿はアンリさんの本来の姿ではない。
本来のアンリさんは魔族きっての美貌を持ち美麗の緑魔という異名がついていた。
その容姿は魔族のみならず人間、エルフ、ドワーフといった他種族すら虜にする程だった。
それが何故、少女の姿になっているのか。
「持って来たぞ〜」
「はい。ありがとうございます。・・・アンリさん少し失礼しますね」
「うおッ!?な、何だいきなり!?こ、コラ髪を触るな!んっ、お、おい・・・そこは!」
その原因は俺にあった。アンリさんは魔族にとって魔力の源でもあり制御する為のツノが片方折れているのだ。
俺はとある事件が起きたことによって死にかけていた。いや実際ガチで死んでいた。
それを彼女は魔族にとって命の次に大切なツノを折り、その力で俺を救ってくれたことがあった。
その結果、彼女はこうして魔力の大部分を失い今の子供の姿へと変わってしまった。
「お、おい・・・もう、」
「ごめんなさいアンリさん。俺を助ける為にツノがこんな風に」
「んぁ、お、お前ぇ・・・わざとやって、いるだろう・・・」
「ん?あ、ご、ごめんなさい!忘れてました!」
しまった完全に忘れていた。魔族は自身の力が溜まりやすい部分があり、そこは非常に敏感なのだ。
「お、お前ぇ〜!今日という今日は許さん!」
「い、いや不慮の事故なんですよ!だから許し、」
「た、大変だぁー!!!ま、魔王軍が来やがったぞ!!」
アンリさんに襲われかけた時だった、アパートの外から焦った声色で叫ぶ人の声とカンッカンッとなるベルの音が聞こえて来た。