終焉(2)
キヌリアはカリエンヌの胸に剣を突き立てた。
次の瞬間、その剣を彼の胸に向き替え、こう呟いた。
”愛しい人、君をこの剣で貫くことなど出来ないよ。
君に刃を向ける羽目になるなら、僕に向けよう。
それなら同じだろう?
僕らのどちらかがいなくなれば、この呪いは解ける。
君を失うくらいなら、僕が消えよう。
愛しているよ、ずっと。君と僕達の小さな命も!”
彼は剣を自分の胸に突き立てて、その刃先で己の胸を貫いた。
”ダメ!キヌリア!ダメ、行かないで!”
彼女の叫び声が響く中、キヌリアは剣を胸に刺した。
何故か彼は微笑んでいる。
彼の命が終わろうとしている時、
精霊達が現れ始めた。
キヌリアをじっと見守っている。
すると、キヌリアの剣が刺さった場所から光が放たれ、懐かしい元の姿のキヌリアが、光の精霊の姿となった。
流れる涙が止まらないカリエンヌ、そして何が起こっているのか?
精霊達が、カリエンヌとキヌリアを見つめながらこう言った。
”貴方達は幸せになって。
もう十分。私達は、この呪いを納めようとしてきました。
カイルの呪いは、強く深かった。
でもその彼の心も今では浄化され、元のカイルに戻ろうとしている。
彼はカリエンヌに、3つの試練を与えたでしょう?
キヌアリは、貴方を見つけていましたよ。
どんな姿になっても、記憶もなくしていても。貴方をずっと支えていた。
その姿を見て、カイルはジュエルとフィーリアの本心も理解したの。
孤独では無かった。2人が、カイルの事をいつも大事に考えていたことが分かって、カイルの呪いは解け始めたの。
カリエンヌ、貴方はカイルの本当の気持ちを知っているでしょう?
暗闇の中、彼は本当の気持ちを、貴方に話したでしょう?”
カリエンヌは知っている。
真っ暗な中、様々な声が聞こえる中で、カイルの本心が聞こえてきた。
”ごめんジュエル、ごめんフィーリア、いつまでも愛している。大事な君達を傷つけたくは無かった。
愛しているよ、ジュエル兄さん、ごめん”
そうカイルは鬼でも悪魔でも無かった。
ただ自分の気持ちを素直に言えていなかった。寂しかった。
孤独の気持ちにつけ込まれ、吸血鬼とされ、世界を貶める羽目になってしまった。
でも常に心の底では後悔していた。謝りたかった。もう1度みんなで幸せな生活を送る事を夢見て。
何かきっかけが欲しかったのかもしれない。
カイルの心を溶かすきっかけが。
何千年もの時が過ぎ、ようやくカリエンヌがそのきっかけを作れた。
それは簡単なことでは、決して無かったけれど。
彼女は愛する人を守りたかった。
己の命を投げ捨ててでも。
カリエンヌは、
自分の命を捨てるか、
キヌアリの命を奪うか。
この2つしか、選択肢がない事を理解していた。
愛し合う2人のどちらかが欠ければ、呪いは解ける。
この世は元の世界に戻ることができる。
それには、愛しい人との赤ちゃんも犠牲にしなければならない。
でも、ここで終わりにしたかった。
長い呪いの終焉としたかった。
思わぬことに、姿が変わってもキヌリアの心はそのままだった。
彼が命を断とうとするとは!




