戦さの後
戦いは勝利に終わった。
少なくとも吸血鬼となった一族と、彼らに対抗する民の戦いは。
この後、本当の戦いがある。
勝利する民を残して、カリエンヌは大樹の間に向かった。
”爺、後はお願いね”
爺と呼ばれる武将は、カリエンヌの後ろ姿を見送った。
周りの歓声とは違い、彼の気持ちは鉛のように重かった。
カリエンヌは大樹に寄り添い、耳を傾けていた。
聞こえてくる。色々な声が。
そして彼が近づいて来る。愛しいキヌリア。
今は吸血鬼となり、我を失っているだろう。鬼の形相をした彼が、こちらへ向かって来るのが分かる。
(恨んでいるでしょう。私の事を。
もし私が貴方を好きにならなければ、もしあの満月の夜出かけなければ、もし私が貴方を愛してこの子を宿さなければ、
『貴方は吸血鬼になどならなかった』
私が運命を受け入れて、従っていれば、こんな不幸は来なかった。
本当の事を話していれば・・・
私は自分の身勝手さで、世界を闇に貶めるところだった。
キヌリア、私を恨みなさい。
鬼となって、私を殺しにやって来なさい。
貴方を待っています。)
晴れたはずの空が、また暗くなった。
闇が訪れたからでは無い。
空を覆うほどの大きな黒い羽。
彼が来た。キヌリアが。
キヌリアは勝利に喜ぶ民を上から見ていた。
民の中に佇む老武将を見つめ、姿を消した。




