今の世界
カリエンヌが戻って来た。
将軍として指揮している爺から、すぐに報告が来た。
長い間、吸血一族は人数を増し、かなりの数となっている。彼らは研究を重ねているのか武力も伴い、両者ほぼ互角で戦っていた。
このままでは、皆疲弊していく。
一方の吸血族は、夜の闇の力で、疲れを知らないようだ。
前線に出るというカリエンヌに、爺は何も言わない。
心配している。
(姫に何かあったら!)
しかし彼女以外に、この戦さを収められるものがいないことはよくわかっている。
小さな手で、自分の指を握りしめてくれた。
ニコニコしながら、笑ってくれた。
姫が赤ちゃんだっだ頃。
成長し美しくなられたが、いつになってもお転婆で、いたずらばかりして。
でも優しく、皆から慕われる姫。
運命をその手に宿して生まれて来た、その時から彼女の為にお仕えすると決めていた。
お守りすると。
その姫を前線に送る気持ちは・・・・・
”大丈夫よ爺。
私は大丈夫。”
戻られた姫の顔つきは、もう少女の姫では無くなった。
彼女は女王として戻って来た。
この先の全てを任せよう。
カリエンヌ女王。
”貴方のお心のままに”
武将と呼ばれた爺の披露した顔を見て、どれだけの時が過ぎたのか。
自分が他の世界を垣間見ていた時に。
それでも絶対に根を上げない爺。
心から信頼できる者が側にいる。それだけでも心強い!
周りの周りの兵士たちも疲労している。
(決着をつけよう!)
カリエンヌは人魚達の前へ出た。
空のもの達も後ろに控えている。
闇の中、真っ赤な瞳に、牙を剥き出す吸血達。空から今にでも一斉に襲い掛かろうとして構えている。
先頭にはマーキラとその一族がいた。
ギラギラしたその目で、こちらを睨んでいる。
カリエンヌは両手を上に高く上げ、剣を横に掴み掲げた。
”無駄な戦さは辞めましょう。
沢山の犠牲を出した。沢山の悲しみと憎しみも。
もしここで貴方達が戦さを止めるなら、私たちは貴方達を受け入れよう。
だが、これ以上続けるなら、私は貴方達を滅しよう。
憎しみからは、悲劇しか生まない。よく分かっているでしょう?
貴方達も、この長い歴史を見てきた者たち。
もう終わりにしましょう・・・・”
カリエンヌは以外にも、彼等に降伏を尋ねた。
マーキラが前に出てきた。
”お前に何が分かる!この私達の気持ちが分かるはずがない。
ずっと虐げられ、こんな体になった。闇の中でしか生きられない。”
”それは、あなた達のせいでしょう!身勝手な研究で、身体を無理に変えようとした。
そんな事は誰にもできません。
自然に逆らった報いです。
それを周りのせいにして、皆んなを巻き込んでいる。
降伏してください。
私は、あなた方が苦しんだことも知っている。だから、最後のお願いです。
ここでお互いを憎むのは、辞めましょう。”
カリエンヌの言葉は、彼らには通じなかった。
マーキラは返事もせず、兵達達に襲いかかるよう指示を出そうとする!
カリエンヌは一瞬目を閉じた。
”ダメなのね。これが定め”
目を開き、その手にある剣を空へと向けた。
剣の先から光が放たれ、金と銀の龍、ユニコーン、フェニックス、そして赤い蝶達が空に飛び出し始める。
その光が闇を照らし、空にあった重く暗い雲を追い出して行く。
暗闇に明かりが差し始めた。
ホワイトバーンが太陽を運んで来る!
陽に照らされ、マーキラ達は苦しんでいる。皮膚や羽が焼け落ちて行く。
光の中から、緑色の花が出てきた。ラビナス国に咲いていた花。
花は焼けて行く吸血鬼を飲み込むように、捕まえては花を閉じる。
その後オレンジ色の花びらに変わり、光を放った。
姫が訪れた国のもの達が加勢してくれた。
闇が晴れてきたせいで、海の国、空の国に忠誠を誓う国のもの達も加わり、戦はあっという間に勝利した。




