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月の夜に  作者: カノン
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お祭りの夜 (2)

 ”さあお姫様、ここが今年のお祭り会場だよ!”


 彼らの下には、光り輝くフェニックスの空中パレード、ユニコーンやドラゴンの吐き出す花火が飛び交い、まるで昼間のような明るさ。


 空と地上、海上を行き交う人々。

 仮面をつけて、くるくる回りながら踊る者達。


 海上ではフィフィが水ぶえを演奏していた。緊張しながらも必死に吹いているのがわかる。


 ”良かった、フィフィ。無事に演奏できて”


 空中では、妖精のように美しく可愛らしい子供達がクルクルと周り日頃の体操の成果を披露している。

彼女達がバトンのような棒をを振るたびに、花が咲き花火に変わる、それが空からシャワーのように地上へと降り注いていた。リボンを使った演技をするものは、リボンからたくさんのフラワーシャワー花火。そこへやってくるカラフルな鳥達。

 妖精達がふーーっと吹けば、そこに現れる鳥達の音楽隊。

 ドラゴン達がかの有名な、ドラゴン踊りまで披露している。

 ユニコーンの仮装行列って、仮装になっているのかしら???



 ”なんて可愛くて、綺麗なのでしょう。空の国には沢山のお花があると聞いていたけど、本当なのね”

 地上でも、あんなに沢山のお花は見たことがなかったわ”



 ふと目についた、不思議な食べ物

 ”あれは何かしら?皆美味しそうに食べている”


 ”どれ?行ってみよう”


 彼は姫の手を繋いだまま、彼女の指さす方へ降りていく。そこには人が群がり、何かを頬張っていた。

 どうやら、ピンクラングトトを皆頬張っている。


 ”初めて見るのかい?美味しいよ。ちょっと待って”


 彼は2つピンクラングトトを買うと、1つ姫に差し出した。

 それはピンク色でふわふわした、パンのような、綿菓子のようなものだが、中には国で取れる果実と野菜のハンバーグのような物が挟んであり、なんとも言えない美味しさだ。

 ジューシーで、甘酸っぱく、良い香りがする。

 1つでは物足りないくらいだ。


 ”これは空の国で1番人気のおやつさ、美味しいだろう!僕は毎日これを食べて、爺やに怒られているよ。夕飯の前にこれを食べるから、夕飯が入らないのだと、幼い頃はよく叱られた。


 最近は夕食後に内緒で食べているから、怒られることは無くなったけどね”


 とウインクしながら話す彼は、ピンクラングトトを嬉しそうに頬張っている。


 ”あれは?なんだろうね?”


 彼が指差す方には、ペリセルボウイがあった。

 ペリセルボウイとは、海の国でお祭りの時に飲まれるジュース。

広い貝殻グラスから、飛び出してくる泡を飲むのだが、この泡がいつ出るのかがわからない。泡が出た途端飲み込まないと、この泡が噴水と変わり、頭の上から降って来てびしゃびしゃにされる。それが面白い炭酸の塊のような飲み物で、味は、ゴールドパール味(通称 やってやる味)・ブルーウェーバー味(君の瞳が大好き味)・レッドホライゾン味(愛を語ろう味)等、名前から想像するには理解不能な飲み物だ。


 ”行ってみよう”


 姫の手を引っ張り、彼は真っ先にその飲み物を頼んでみた。

 確かに、広い透明な貝の中にゴールド色の液体が入っている。海が近いせいか、海の匂いしかしないような・・・と、突然、ボコっと泡が吹き出した。その瞬間、泡の前に口を開き、泡を飲み込んだ。

 ジュワーと炭酸が口の中で広がり、次の瞬間少しピリッとするような感覚と共に、爽やかな味が口に広がった。

 ”美味しいー”


 ”でしょう、これは頬広鮫の鱗からできる飲み物で、すっきりとした味が特徴なの”

 気をつけないと、次の泡が出るわ、泡は数回できるのよ”


 ”ええ!?”

 と次の泡ができ始めていた。急いで飲み込む、爽やかだ、でもどこか懐かしい味

 次から次へと、泡が出てきて、それを飲み込むのが意外に大変だが、これも人気の1つらしい。


 ”やっと飲み終えた”

 と少々困惑気味の彼。もう貝の中に液体はほとんど残っていなかった。


 ”そうかしら?”

 姫がふふ、と微笑んだその時、貝に残っていたほんの少しの液体が泡となった。


 ”しまった”

 流石に今回は間に合わなかったようで、泡は空中に浮かび、わざとかと思うように、頭上で破裂した。

 彼は水浸し


 ”油断してはダメよ。このゴールドパールは、一番手強いのだから。”

 ”手強い飲み物って・・・”

 ”これは元々賭け事に使われていた飲み物で、いつ泡が終わるのか、最後までわからない。それが面白くて有名になったのよ”

 今度はあちらに行ってみましょう。”


 彼の手を取り、お祭りを楽しむ姫。

 ”あれは!ねえ、あれ!ちょっと来て”

 無理やり彼の手を引く姫。


 ”まだ誰の手にも渡っていなかったのね、1回やらせてください。”

 そう言って、そばにあった吹き出し魚を掴み、尾っぽを思い切り引っ張った。

 吹き出し魚の体がぐーんと伸び、その後鉄砲のような速さで的に向かう。的の前には噴出し魚を的に当てないように、蝶々魚が飛び回り、的当てを阻止している。

 

 だがそんな小細工、姫には通じない。この日の為に、どれだけの練習を重ねたことか。


 案の定1発で、目的の矢を当てた。




 ”ヒュー凄いね君”

 驚く彼に、

 ”この日の為に、毎日お部屋に的を用意して練習したのだもの”

 姫は自慢げだ。


 ”はい、こちらが商品になります”

 出店のおじさん人魚から、念願の玉手箱を受け取った!

 

 それは、姫が昨年取り損ねた玉手箱。小さな真珠貝の形をしている。中には7つの真珠が入っているとの噂で、その真珠1つ1つが、姫の見たことのない世界を映し出してくれるとの噂だった。

 興味と好奇心の塊の様な姫には、この真珠貝の玉手箱がどんなに欲しかったか。

 本当は今にでも開けてみたいところだが、そうも言っていられない状況になりそうだ。




 ”あのー?

 貴方はカリエンヌ姫様ではありませんか?今夜は晩餐会にご参加では?お祭りの開会式でもお見かけしませんでしたが、先日の16歳のお誕生日のお祝いで、姫のお姿を拝見いたしましたので、もしかして?”


 ドキッとした。

 本当ならこの場所ではなく、城にいなければならないはずなのに。

 ここに居るのを見つかったら、後から皆に相当怒られる。


 咄嗟に、

 ”私は、カリエンヌ様によく似ているとしばしば言われるのですが、全くの他人で、ただの似ているさんなのです・・・ほほほほ”

 しどろもどろに返事をするが、その姿が余計に疑わしい。


 なんとか場を切り抜けようと、彼の手を掴み、走り出した。

 しかし噂を聞きつけた、衛兵達がこちらに向かっているのが見える。多分、城を根け出したこと自体ばれているのだろう。


 ”行こう!”


 逆に彼がカリエンヌの手を引っ張り、更に走り出した。なぜか彼は嬉しそうに笑っている。


 ようやく、人気のない岩場までたどり着いた時、

 ”君がかの有名なカリエンヌ姫だったとは”


 ?


 ”噂には聞いていたけど、おてんばで、美しい姫君だと聞いていた。それは事実だった様だけど、ここまで破天荒とはね”

 ”紹介が遅くなったけど、僕は・・・”




 ”カリエンヌ様!、お探し申し上げました。一体城を抜け出して、どちらに?今夜はお城に居るように国王様からのご命令があったはずです。直ぐにお戻りを!”

 と言うのは、いつもの爺。

 行儀人で、あれこれと普段から口うるさい。姫のためを思っているのはわかるが、とにかく口うるさい半人魚もとい半人魚老人なのである。


 ”はーーーーーっ”

 とうとう見つかったか、という気持ちと、ちょっと悪い事をしたことへの気持ちで、やっと見つかったかとの気持ちの複雑な狭間のカリエンヌ。


 

 ”姫様、直ぐにお戻りを。

 ところで、間違いでしたら失礼致します。

貴方は?

ひょっとして?

リーデルコーヴォン国の王子、キヌリア様ではありませんか?貴方がどうしてこちらに?”


(リーデルコーヴォン国?)


 

 苦笑いしながら、キヌリアは、

 ”ちょっと散歩をしていたら、こちらの姫と偶然出逢いまして、2人で今宵のお祭り騒ぎにと出かけたのですが、とうとう見つかってしまいましたね。彼女がカリエンヌ姫とは今のいままで知りませんでしたが”

 と返事をするこの彼が、リーデルコーヴォン国の王子!!!






 『リーデルコーヴォン国』

 何千年の前から、空と陸地に君臨する王国で、なぜかよく国名が変わる。実際の国名は、もっと長く、リーデルコーヴォン、アーテル、サイナイ、ムラリオス、カイエンリア、トーテム、オーベン、コーリアンテル、ヴェルビス王国だったかなんだか。もっと名前があった気がするが、長すぎて覚えられない国名。


 王族は皆白い羽を持ち、時にゴールドかシルバーの羽を持つものが生まれるといる。

 その者の辞世は栄えるとともに、1度で終わりを告げるという、なんとも奇妙な王国なのだが。

 彼らが主に空の世界を支配している。


 


 逆にカリエンヌの家族は、海の王族。リーデルコーヴォン国と陸地を共有しながらも、主に海を支配し続ける王族で、こちらは何世紀も前から同じ王族が支配している。なんでもこの王族にしか受け継ぐことのできない大事なしきたりがあるとのことで、ずっとこの王族が君臨しているのである。



 リーデルコーヴォン国との仲は良好で、仲違いすることも無く、良い関係が何千年も続いている。

 中には人魚と結ばれる者もいて、人魚なのに羽を持つ者、逆に羽が退化し、飛べなくなった者もいる。そのものたちは陸を拠点に住んでいる。



 今まであえて王以外の王族同士が合うこともなく、お互いの領地を平和に収めていた。まれに王族の交流があるとすれば、それは年1度のこのお祭りぐらいであった。

 この日だけは、皆仮面を付け、舞踏会に参加するもの、街でこういったイベント、出店を楽しむ民と、空と陸と海が混じって騒ぐのである。



 例年なら、カリエンヌも王族として参加するのだが、今年は例の満月の夜には外に出てはいけないとのお達しで、彼女はお留守番だったのだ。

 それにしても、このキヌリア王子には会ったことが無かった。


 ”おっと、僕にもお迎えが来たようだ。”

 空から、衛兵の一段がやってくる。白とブルーの、まるで晴れた空と雲のような色の衛兵服は、昼間なら、空に溶け込んでわからない。

 夜中だからその姿に気づいたが。


 ”王子、探しました。

 お戻りを。

 皆様ご心配になっておられます。突然舞踏会から居なくなられて、一体どこへ行ってしまったのかと。

 王妃様など、また他の国に前触れもなく立ち去ってしまったのではないかと、先ほどから伏せっておられます。直ぐにお戻りを”


 (そういえば、リーデル王国の王子は、長いこと留学していると聞いたことがあるのを思い出したわ。

 この方が。

 だから見たことなかったのね。)


 ”楽しかったよ、カリエンヌ姫。いつかまた、どこかで会えたら!”

 そう言って、衛兵の集団と共に飛び立っていく王子。


 ”またどこかで”

 嬉しそうに手を振りながら、カリエンヌは見送った。


 これが、この2人の運命の出会いだった。




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