夢の国(3)
ジュエルとカイル、2人の屋敷は、広くよく整頓されている。
城ではないが、綺麗なお家だった。
両親は既に居ないようで、2人で暮らしていた。
様子を伺いながら不安げなカイル。
全く気にしていないジュエル。
両極端な性格。
そこにフィーリアが現れた。
前の扉から覗いたフィーリアも美しかったが、ジュエルの中のフィーリアは、さらに美しさを増したようだった。
愛しい人との結婚式が近いからだろうか?
愛し合う2人の見つめ合う様子は、見ているこちらが恥ずかしくなる。
やってられないよ、と言う素振りで、カイラは自分の部屋に行こうとする。
そのカイラを引き留めて、3人でワイワイと結婚式の話、昔の話を話し始める。
”この子は?”
ちょっと隠れていたエレンを見つけたフィーリアは、微笑み、エレンを見つめる。
”小さなお姫様、あなたのお名前は?”
”エレン”
”素敵な金色の髪ね。あなたの深い瞳の色は、まるで海の中に吸い込まれそう。
可愛いエレンちゃん、こちらでみんなで遊びましょう”
何も聞かず、エレンの相手をし始める。
ジュエルとカイラを信用しているからだ。
フィーリアは何でもできた。
パーフェクトな女性だ。
空色の刺繍糸で刺繍すると、それが実態となる刺繍。
雲のクッションに乗ってのお散歩。途中誰かと会うと、かならず皆から声をかけられる。
彼女が連れて行ってくれた空の国のお店には、飛び跳ねるソーダ水、噛み付いてくるハンバーグ。
おしゃべりで、誘惑めいた事を喋る靴下。
勝手に出かけるドレス。
お金が飛び出すバッグ。
自由に飛び回る帽子など。
(空の国のファッションって・・・気ままだわ・・・)
なんだか明るい雰囲気で自由だ。
(自由すぎる気もするけど・・・)
カリエンヌの海の国は、ゆったりしている。
改めて、自由と感じたことがなかったせいか、風の吹くまま飛んで行ったり、
フィーリアの大きな羽の上に乗せてもらって、空を自由に動き回るのは、
今までに感じたことのない感覚だった。
”うふふ、楽しい”
思わず出たエレンの言葉に、フィーリアは嬉しそうだった。
”そろそろお腹が空いたでしょう。あの2人は年中お腹を空かしているから。
帰ってご飯にしましょうね。”
降下して行く先はジュエルとカエルの元だった。
手慣れたもので、フィーリアがご飯を作っている。
材料は見たこともないものばかり。
”さあ召し上がれ”
空中に浮かぶそれは、キヌリアと初めて会ったあの夜に食べた、ピンクラングトトにそっくりの食べ物。
”これはなあに?”
エレンの言葉に、
”ピンクラングトト、我が家に伝わるレシピの1つでね。
家族みんな大好きなの。
もちろん私も、この二人様も。
あなたの口に合うと良いけど”
カリエンヌがもらったピンクラングトトは、ジューシーなハンバーグのような物に、果物が添えてあり少し甘酸っぱい。
なんとも言えず美味しい。
”おいし〜”
思わず言ってしまった。
”良かった、たくさん食べてね!”
そう言って空中に浮かぶピンクラングトトを捕まえては、ジュエルもカイラも頬張っている。
(みんな良い人)
カリエンヌにはこの後の訪れるあの悲劇が、この時点では予想すらできなかった。
”さあ小さなお姫様、何のお伽話をしましょうか?”
フィーリアに言われて、お腹いっぱいのカリエンヌはもう半分寝ている。
そんなカリエンヌを優しく抱っこしてくれるジュエル。
まるで両親とその子供のよう。
のんびりと夜は更けて行くのだった。




