作戦、その後
城に戻った2人。
この間までとは違い、城には沢山の魔法使いがいる。
掃除したり、お洗濯したり、ご馳走を作ったり。窓を拭きながら、姿を見つめているナルシストな箒さん
虹色のユニコーンに似ているが、ツノのない動物がせっせと命令して、お城を整えていた。
”カリエンヌこれが本当の魔法の世界の姿だよ。”
殺風景な城とは違う、賑やかで美しい花の城・ブーメン城。
あちこちに巣を作った鳥達が歌う城。
陽気な音楽が聞こえてくる。
”君に感謝と僕からの敬意を。そして、この国の王として改めてご挨拶をさせていただきます”
カリエンヌの手を取り、その手のひらに敬礼し口付けした。
”わが国、魔法の王国ラビナスは貴方への忠誠を永遠に誓います。カリエンヌ姫”
オリナスは実は王子ではなく、王だった。
王としての自覚が無かった訳ではない。父がいなくなってしまった事実を受け入れたく無かった。だから皆には王子と言っていたが、実は王となっていた。
そして、カリエンヌの婚約者候補だった。
しかし、自分が王になり、魔法の国を捨てて、海の国の王にはなることができない。
そのため、婚約者候補から外れることになったのだ。
もしカリエンヌがこんなに美しく、聡明な女性と知っていたら・・・・
国を捨てることはできない。
自分には兄弟も居ない。
今更、不可能だったことを考えてもしょうがないが。
オリナスの心の中には、カリエンヌに対する恋心が生まれていた。
そんな気持ちには気づきもしないカリエンヌは、先ほどから皆と一緒になって歌いながら、城の掃除を楽しんでいる。
”私お掃除ってやったことがなかったけれど、楽しいのね!!!”
彼女を眺めながら、オリナスは心に秘めた秘密に蓋をした。
平和な国を取り戻した記念に、晩餐会が行われることとなった。
カリエンヌには、薄紅色に桃色のドレス。黄金の髪飾り。
オリナスは王の冠をつけ、紫色の正装に金糸のマントを身につけた。
肩には小さなホワイトバーンが止まっている。
王の品格を十分に備えている。
集まった魔法使い達も、皆正装しフェニックスの飾りを胸につけていた。
オーケストラの鳥達が歌い始め、音楽が流れ始めた。
”踊っていただけますか?”
オリナスに申し込まれ、カリエンヌは彼の手を取った。
2人の踊る姿は、伝説になるだろう。美しいだけではない。気品と貫禄を備えた2人。
王と王女の地位にふさわしい2人の姿だった。
晩餐会も、皆の周りを踊りながら魔女達が箱をばら撒いていく。
その箱からご馳走にお菓子、飲み物がポンポン飛び出してくる。
空飛ぶケーキは、逃げ足が早く、捕まえて食べるにはなかなか苦労した。
少し風に当たろうと、バルコニーに出たカリエンヌの後をオリナスが追いかけてきた。
”疲れたかい?カリエンヌ?”
”大丈夫。少し風にあたりたかっただけ。”
王広間の海は、カリエンヌに故郷を思い出させた。
”カリエンヌ、君に話したいことがある。”
カリエンヌにオリナスがウインクすると、2人は違う空間に移動した。
そこは、カリエンヌが父とだけ入った、大樹の空間。
”貴方、どうして?この空間には私達王族しか、王になるものしか入れないのに”
”知っているよ。ここは君の知る場所に似ているけど、大樹の間ではないよ。あの空間は、僕の先祖が作ったのだよ。だから、僕らはどんな空間になっているのか知っている。
空の国から、他の国に行ける通路、というか洞窟がある事を知っているかい?
あの空間も、僕ら・・・・
というか、父と君のお父様である王が、面白半分に作ったのだよ。
あの洞窟を使って、よく遊びに出掛けていたと聞いている。
(キヌリアが、遊学中に国によく戻るときに使っていた。あの洞窟のことね。あれをお父様達が作っていたなんて!)
大樹の間
これが世界の中心
沢山の星が集まって、この場所ができた。次に生物が生まれ始めた。知能を持ち、グループを作り始めた。いろんな世界ができ始め、時には争いごとも生まれ始めた。
その争いを収めたのが、最初の海の王ジュエル。王妃フィーリア
だが、ジュエルとフィーリアに憎しみを抱いたカイラ。
彼は吸血鬼となった最初の人魚。
そこから生まれる悲劇。
兄とフィーリアに恨みを抱き始めたカイラは、死の淵を彷徨い、生き返ってきた。
吸血鬼となって。
ジュエル王とフィーリア女王の皇女の出産の宴の時、国を襲い、フィーリアを殺害した。
悲しみと驚きと、落胆。
ジュエルとカイラは戦った。
ジュエルは勝利したが、彼の愛したフィーリアはもう居なかった。
カイラは呪いをかけて死んだ。
今後海の国と空の国の者が、満月の夜に愛し合うなら、その者は闇に落ちる。
王族同士が愛し合うなら、この世の均衡は保たれず、世界は夜の世界となるだろう。
ジュエルは優秀で、カイラよりも強いと思われていた。
実際にカイラと戦ったジュエルは、カイラの方がずっと賢く強いものであったこと、王の器に相応しいものであったことを実感した。
それでも、弟がこうなったのは気が弱かったからなのか。自分が助けてやれなかったことを後悔した。
カイラも同じように感じていた。
自分の方が知識も、剣術も強い。だが、闇に落ちたのはこの気の弱さ。
それを思うと、兄が王になって良かったのだろう。
孤独に耐えられなかった。
兄とフィーリア、大好きな2人の両方を手にいれることができなかった。
それが孤独を強くした。
もしどちらかとずっと一緒にいられたら、兄と戦うことはなかっただろう。
そして、彼は敗れた。
兄が強かったからではないのかもしれない。
兄を信じる民の力が、カイラを敗北へと導いた。
自分は、誰からも愛されなかった。
その孤独はずっと付きまとう。
代わりに呪いを、この世界に呪いを。
今後永遠に続く呪いを。
満月の夜に海と空の民が結ばれるなら、世界は闇となろう。
我が孤独のような、永遠の暗い闇に。
そう言い残した。
この呪いは永遠に続いていた。
それでも、歴代の王族の勤めにより、民が愛し合うにはなんとか障壁は無くなった。
しかし、王族の者、その手に月と太陽、2つの巨大な力を持つものが生まれたなら、その者は世界を動かす。
2分することもできる。
その者だけは、空のものと交わることは決してあってはならない。
だから父はカリエンヌが生まれた時から、愛しい気持ちと、複雑な気持ち、また心配をしてきた。
カリエンヌの婚約者をわざわざ探してきたのも、その為だった。
何も知らないカリエンヌは、キヌリアと恋に落ちた。
それがこの世の均衡を崩す羽目になると、最初は知らなかったにせよ、あの大樹の空間に行き、全てを知った後でも何もできなかった。
だからあちこちで、異変が起き始めているのだ。
カリエンヌは自分のせいでこうなっているのでは?と感じ始めていた。
どうしようもない。
なぜなら、彼女は新しい生命を孕っているから。
この生命の誕生をどうしても望んでいた。
それはあの優しかったキヌリアが望んでいたからだ。
どうやらオリナスには全てがお見通しのようだ。
彼が魔法の王国の王であるのは、生まれた家系だけではない。
彼は未来を見通す力を持っている。
王たるもの、国を守ることが1番の使命。
それにはオリナスが適任だった。
全てを見越していたのだ、オリナスは。求婚者のリストから外されることも、実は分かっていた。
そんな彼が、この先だけは見通せない。
2つの運命
2つの選択肢
”カリエンヌ、君は自分の決めた道を進むんだ。
それがどうなるのか、流石の僕でも見通せない、
僕は未来を見る力を持って生まれた。だからこうなることも分かっていた。
でもこの先だけは、君の未来だけは、僕には見えない。
君を信じるよ。
魔法の国を救ってくれた。
君は前の国でも、世界を救った。
君の進む道は君にしかわからない。僕らは君に従うよ。
カリエンヌ姫。
海の王国の女王。
天地を納める者。
その力は、世に平和をもたらすが、一方で闇をももたらす。
それを選ぶのは、我らが女王。
お心のままに”
そう言って彼女の前に跪いた。
カリエンヌの気持ちは決まった。
オリナスの肩に触れ、
”オリナス、貴方が私の味方であることに感謝いたします。
この国をお願いします。
私は、私のするべきことをいたしましょう。”
顔を上げて、改めてオリナスはカリエンヌを見つめた。
その顔は、もう少女のカリエンヌでは無い。
女王カリエンヌ
彼女の覚悟は決まった。
そして、次のステージに進む覚悟も。




