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月の夜に  作者: カノン
26/42

作戦、その後

 城に戻った2人。



 この間までとは違い、城には沢山の魔法使いがいる。

 掃除したり、お洗濯したり、ご馳走を作ったり。窓を拭きながら、姿を見つめているナルシストなほうきさん


 虹色のユニコーンに似ているが、ツノのない動物がせっせと命令して、お城を整えていた。





 ”カリエンヌこれが本当の魔法の世界の姿だよ。”


 殺風景な城とは違う、賑やかで美しい花の城・ブーメン城。

 あちこちに巣を作った鳥達が歌う城。

 陽気な音楽が聞こえてくる。



 ”君に感謝と僕からの敬意を。そして、この国の王として改めてご挨拶をさせていただきます”


 カリエンヌの手を取り、その手のひらに敬礼し口付けした。




 ”わが国、魔法の王国ラビナスは貴方への忠誠を永遠に誓います。カリエンヌ姫”

 

 オリナスは実は王子ではなく、王だった。


 王としての自覚が無かった訳ではない。父がいなくなってしまった事実を受け入れたく無かった。だから皆には王子と言っていたが、実は王となっていた。




 そして、カリエンヌの婚約者候補だった。

 しかし、自分が王になり、魔法の国を捨てて、海の国の王にはなることができない。




 そのため、婚約者候補から外れることになったのだ。

 もしカリエンヌがこんなに美しく、聡明な女性と知っていたら・・・・




 国を捨てることはできない。

 自分には兄弟も居ない。

 今更、不可能だったことを考えてもしょうがないが。




 オリナスの心の中には、カリエンヌに対する恋心が生まれていた。

 そんな気持ちには気づきもしないカリエンヌは、先ほどから皆と一緒になって歌いながら、城の掃除を楽しんでいる。



 ”私お掃除ってやったことがなかったけれど、楽しいのね!!!”



 彼女を眺めながら、オリナスは心に秘めた秘密に蓋をした。












 平和な国を取り戻した記念に、晩餐会が行われることとなった。


 カリエンヌには、薄紅色に桃色のドレス。黄金の髪飾り。



 オリナスは王の冠をつけ、紫色の正装に金糸のマントを身につけた。

 肩には小さなホワイトバーンが止まっている。


 王の品格を十分に備えている。









 集まった魔法使い達も、皆正装しフェニックスの飾りを胸につけていた。





 オーケストラの鳥達が歌い始め、音楽が流れ始めた。


 ”踊っていただけますか?”


 オリナスに申し込まれ、カリエンヌは彼の手を取った。


 2人の踊る姿は、伝説になるだろう。美しいだけではない。気品と貫禄を備えた2人。

 王と王女の地位にふさわしい2人の姿だった。






 晩餐会も、皆の周りを踊りながら魔女達が箱をばら撒いていく。


 その箱からご馳走にお菓子、飲み物がポンポン飛び出してくる。


 空飛ぶケーキは、逃げ足が早く、捕まえて食べるにはなかなか苦労した。








 少し風に当たろうと、バルコニーに出たカリエンヌの後をオリナスが追いかけてきた。


 ”疲れたかい?カリエンヌ?”


 ”大丈夫。少し風にあたりたかっただけ。”


 王広間の海は、カリエンヌに故郷を思い出させた。


 ”カリエンヌ、君に話したいことがある。”



 カリエンヌにオリナスがウインクすると、2人は違う空間に移動した。



 そこは、カリエンヌが父とだけ入った、大樹の空間。



 ”貴方、どうして?この空間には私達王族しか、王になるものしか入れないのに”


 ”知っているよ。ここは君の知る場所に似ているけど、大樹の間ではないよ。あの空間は、僕の先祖が作ったのだよ。だから、僕らはどんな空間になっているのか知っている。

 空の国から、他の国に行ける通路、というか洞窟がある事を知っているかい?

 あの空間も、僕ら・・・・

 というか、父と君のお父様である王が、面白半分に作ったのだよ。

 あの洞窟を使って、よく遊びに出掛けていたと聞いている。


 (キヌリアが、遊学中に国によく戻るときに使っていた。あの洞窟のことね。あれをお父様達が作っていたなんて!)






 大樹の間




 これが世界の中心


 沢山の星が集まって、この場所ができた。次に生物が生まれ始めた。知能を持ち、グループを作り始めた。いろんな世界ができ始め、時には争いごとも生まれ始めた。


 その争いを収めたのが、最初の海の王ジュエル。王妃フィーリア

 だが、ジュエルとフィーリアに憎しみを抱いたカイラ。

 彼は吸血鬼となった最初の人魚。

 そこから生まれる悲劇。




 兄とフィーリアに恨みを抱き始めたカイラは、死の淵を彷徨い、生き返ってきた。

 吸血鬼となって。

 ジュエル王とフィーリア女王の皇女の出産の宴の時、国を襲い、フィーリアを殺害した。

 悲しみと驚きと、落胆。





 ジュエルとカイラは戦った。

 ジュエルは勝利したが、彼の愛したフィーリアはもう居なかった。

 カイラは呪いをかけて死んだ。




 今後海の国と空の国の者が、満月の夜に愛し合うなら、その者は闇に落ちる。

 王族同士が愛し合うなら、この世の均衡は保たれず、世界は夜の世界となるだろう。





 ジュエルは優秀で、カイラよりも強いと思われていた。


 実際にカイラと戦ったジュエルは、カイラの方がずっと賢く強いものであったこと、王の器に相応しいものであったことを実感した。


 それでも、弟がこうなったのは気が弱かったからなのか。自分が助けてやれなかったことを後悔した。





 カイラも同じように感じていた。

 自分の方が知識も、剣術も強い。だが、闇に落ちたのはこの気の弱さ。




 それを思うと、兄が王になって良かったのだろう。


 孤独に耐えられなかった。





 兄とフィーリア、大好きな2人の両方を手にいれることができなかった。

 それが孤独を強くした。

 もしどちらかとずっと一緒にいられたら、兄と戦うことはなかっただろう。


 そして、彼は敗れた。


 兄が強かったからではないのかもしれない。


 兄を信じる民の力が、カイラを敗北へと導いた。


 自分は、誰からも愛されなかった。

 その孤独はずっと付きまとう。




 代わりに呪いを、この世界に呪いを。

 今後永遠に続く呪いを。

 満月の夜に海と空の民が結ばれるなら、世界は闇となろう。

 我が孤独のような、永遠の暗い闇に。


 そう言い残した。





 この呪いは永遠に続いていた。


 それでも、歴代の王族の勤めにより、民が愛し合うにはなんとか障壁は無くなった。


 しかし、王族の者、その手に月と太陽、2つの巨大な力を持つものが生まれたなら、その者は世界を動かす。

 2分することもできる。

 その者だけは、空のものと交わることは決してあってはならない。


 だから父はカリエンヌが生まれた時から、愛しい気持ちと、複雑な気持ち、また心配をしてきた。

 カリエンヌの婚約者をわざわざ探してきたのも、その為だった。


 何も知らないカリエンヌは、キヌリアと恋に落ちた。


 それがこの世の均衡を崩す羽目になると、最初は知らなかったにせよ、あの大樹の空間に行き、全てを知った後でも何もできなかった。


 だからあちこちで、異変が起き始めているのだ。


 カリエンヌは自分のせいでこうなっているのでは?と感じ始めていた。


  




 どうしようもない。







 なぜなら、彼女は新しい生命を孕っているから。


 この生命の誕生をどうしても望んでいた。

 それはあの優しかったキヌリアが望んでいたからだ。




 どうやらオリナスには全てがお見通しのようだ。


 彼が魔法の王国の王であるのは、生まれた家系だけではない。

 彼は未来を見通す力を持っている。



 王たるもの、国を守ることが1番の使命。

 それにはオリナスが適任だった。



 全てを見越していたのだ、オリナスは。求婚者のリストから外されることも、実は分かっていた。



 そんな彼が、この先だけは見通せない。






 2つの運命

 2つの選択肢





 ”カリエンヌ、君は自分の決めた道を進むんだ。

 それがどうなるのか、流石の僕でも見通せない、

 僕は未来を見る力を持って生まれた。だからこうなることも分かっていた。


 でもこの先だけは、君の未来だけは、僕には見えない。


 君を信じるよ。


 魔法の国を救ってくれた。

 君は前の国でも、世界を救った。




 君の進む道は君にしかわからない。僕らは君に従うよ。


 カリエンヌ姫。


 海の王国の女王。


 天地を納める者。

 その力は、世に平和をもたらすが、一方で闇をももたらす。



 それを選ぶのは、我らが女王。

 お心のままに”




 そう言って彼女の前に跪いた。












 カリエンヌの気持ちは決まった。


 オリナスの肩に触れ、


 ”オリナス、貴方が私の味方であることに感謝いたします。

 この国をお願いします。

 私は、私のするべきことをいたしましょう。”




 顔を上げて、改めてオリナスはカリエンヌを見つめた。

 その顔は、もう少女のカリエンヌでは無い。

 女王カリエンヌ

 彼女の覚悟は決まった。


 そして、次のステージに進む覚悟も。





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