2つ目の冒険(2)
空の星の間を縫うように馬車は進み、少し経つと巨大な風船のように浮かんだ、不思議な模様の城が見える。魔女文字が沢山書かれている。
何万年も生きる魔法使いの国に似つかわしい、複雑な紋様だ。
馬車はそのまま飲み込まれるように、文様に向かっていくので、ぶつかるのかと思いきや、城の中庭へと到着した。
近くに咲いている、黄色い花を1輪、オリナスが摘むと、大きな風船となり、オリナスとカリエンヌを包み込み、上空へと浮かんでいく。
上から見る魔法の世界は、2つの島がくっついたような形をしていた。
片方が太陽を型取り、片方は月を形どったような島
その中心の空中に、魔法の国の城は浮かんでいる。
見るものが逆さに映る鏡の回廊を通り、歴代の大魔法使い、王族の姿が浮かんではウインクしながら、挨拶してくれる。
笑うツボと音を出す剣の歓迎の演奏に、今度はぐるぐる回るゴンドラが、廊下を進んでいるのだが、このゴンドラ、回るだけではなく上下もする。
ちょっと気分が悪くなり始めた時、大広間へ到着した。
この国の大広間は、空中にあるにもかかわらず海の一部、つまり海が大広間だった。
”君には懐かしい風景なのではないかい?”
オリナスにたづねられて、ハッとした。
確かに、海の国によく似ている。懐かしい。ずいぶん長い間、あの国に帰れていないような錯覚さえしてしまう。
”ここは、僕の父である王が結婚した際、君の父上が親友へのお祝いとしてくれた広間なんだ。海の国の1部をここにくれたんだよ。異次元で繋がっているから、これは君の国なんだよ。
ほら、魚が泳いでいる。”
そう言って指差す先に、見慣れた魚達がいる。
流石に人魚は居ないようだが、ぼんやりとクラゲが照らす明かり、飴色の岩場、海の匂い、全てそっくりだった。
ただ違うのは、そこは海の国ではない。
気づくと、オリナスが大きくなっていた。
城に戻ると魔力が戻るらしく、カリエンヌより背が高い。
先ほど、子供と間違えたのは確かに失礼だった。
”オリナス、貴方大人なのね?子供の時は可愛らしいけど、今の貴方は素敵よ。
立派な王子様って感じで”
笑いながらオリナスは、
”なんだよ、立派な王子様って感じって!立派な王子様なんだよ!”
初対面だけど、気取らないオリナスにカリエンヌはすっかり打ち解けた。
一番景色の良い、水辺の来客部屋を用意してくれた。
しばらくすると夕飯の時間となり、数人のメイド達が現れカリエンヌを着替えさせ、お化粧までしてくれた。
晩餐の部屋には、数人の魔女が空中に浮かび、花を作ってくれる。
花から現れるご馳走は、美味だった。
唯一不思議なのは、オリナスしかいないことだ。
王様も、王妃も居ない。
”オリナス、貴方ご兄弟はいないの?”
その言葉に悲しそうな表情をするオリナス
”兄弟は居ないんだ。僕は1人子。
母は僕を産んですぐに亡くなってしまった。
王である父も実は昨年・・・
1人になってしまったよ。
本当は王位を継承しなければいけないのだけど、そんな気になれなくてね。
お嫁さんもいないし。このまま王子のままでもいいかなーって”
微笑んではいるが、聞いてはいけない事を聞いてしまった気がした。
”そう、ごめんなさい。私。聞かなくても良いことを聞いてしまったかも”
”いいんだよ、それより問題は僕の王位ではないのさ。
この状況だよ。
カリエンヌ、君は原因が君だとわかっているね。
世界が狂い始めている。
月が太陽を侵食してしまったら、どうしようもなくなる。この世は闇と化す。
それを阻止しなけえればならない。
この国に、月と太陽を運んでくれるのは、ホワイトバーンなんだ。
彼らが弱ってしまい、この状況が悪化している。なんとかホワイトバーンを元気にしないと!”
”なぜ弱ってしまったの?原因は分かっているの?”
”ホワイトバーンは番なんだ。最近彼らの番がいなくなっている。
他の国からの密猟だよ。ホワイトバーンは希少な生物だから。
その上、とってもデリケートなんだ。この魔法の国でしか彼らは生息できない。
それを知らない密猟者達が連れて行き、死なせてしまうんだよ。
何度か密猟者を捕まえたが、彼らは捕まると姿を透明にし、見つからないようにしてしまう。
だから捕まえても逃げられてしまって、後を経たないんだ。
実は今ホワイトバーンの生殖時期でね。
もう直ぐたくさんのホワイトバーンが生まれる予定なんだ。
彼らは絶対に守りたい。
無事に産まれてくれれば、また月と太陽を運び均衡が保たれるはずなんだよ!”
オリナスは真剣な顔で説明する。
国の一大事だから。
”オリナス、私も手伝うわ!絶対にホワイトバーンの赤ちゃん達を産んでもらいましょう!
密猟なんて、絶対に許せない。彼らには手を出させてはいけないわ!”
カリエンヌはオリナスの手を握りしめた。
少し驚いたオリナスだったが、すぐ嬉しそうは表情で、
”うん、カリエンヌ、君の言う通り。密猟者から、ホワイトバーンを守ろう!”
そう言って二人の会話は夜遅くまで続いた。




