紫の風(1)
穴の中は真っ暗。
時々、キラッと光る光を目印に中へと進むカリエンヌ。
やがて、光が強くなっていく。
パッと目の前が開けた。
優しい歌声と、いい香り、暖かくて、ゆっくりした風。
なんて気持ち良いのでしょう。
カリエンヌが目の前に見た世界は、花が舞い、妖精達が歌っている。
おそらく消えた住人や彼らの体の一部が、ゆらゆら楽しそうに揺れている。
ずっと奥には、エラゴラがいた。
でも最後に見た時とは違い、赤に金の模様の蝶々のようは大きな羽をひろげている。
元々、彼女の羽は桃色だった。
”カリエンヌ!”
カリエンヌを見つけると、エラゴラが早速飛んで来た。
”エラゴラ!よかった無事で、心配したの。貴方を助けてあげられなかった。
ごめんなさい。
私、貴方を守るって約束したのに。”
エラゴラと泣きながら揺れるカリエンヌ。
”ありがとう、カリエンヌ。
私は大丈夫。無事よ”
微笑むエラゴラは嬉しそう。
”私達あの紫色の風に吸われてここに来たの。
だけど、中にはいなくなった友達がいるじゃない!
びっくりしたけど、ここは心地良いの。
貴方に話したでしょう。以前私たちの国がどんなだったか。
これが正に私たちの国よ!!!”
気持ち良い。美しく、楽しい。
しかし、ここはどこ?
”エラゴラ、確かに素敵な所だけど、ここがどこなのか、貴方は分かっているの?”
ため息を1つついたエラゴラ。
”多分、何かの中。洞窟とか、お城とか、家とかではなく”
”?”
”何かのお腹の中”
”お腹?お腹って、このお腹?”
自分のお腹を指してみるカリエンヌ。
”そう、きっと大きな動物のお腹の中。心臓の音らしきものが聞こえるから。
耳を澄ませてみて
ドク、ドクって聞こえるでしょう?”
確かに、自分の心臓の音とは違うが、何か規則的に聞こえる。
”それにしても、貴方のその羽?とっても綺麗だけど、前に見て時と羽の色が違うわ。どうしたの?”
エラゴラが口を開こうとしたその時、風が来た。
また外から、誰か吸い込まれたらしい。
だが吸い込まれてきたのは、招かざる客。
侯爵だった。
”どうだい?私の可愛いペット達。居心地は良いかい?
それももう終わり。
私は、君たちが苦痛の表情をするのが見たいのだよ。
気付いた者もいるようだが、これはドラゴンのお腹の中さ。紫の息を出すドラゴン。珍しいだろう。あれを見つけた時は驚いたがね。
ドラゴンは他の者が悲しむのが好きなんだよ。
さあ、君たちはドラゴンの餌となっておくれ。”
紫の風が侯爵の後ろから、カリエンヌ達を襲うように迫ってくる。
ずっと奥の方に吹き飛ばされていく。
暗く、どんよりとした暗闇に飲み込まれる!




