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月の夜に  作者: カノン
18/42

紫の風(1)

 穴の中は真っ暗。

 時々、キラッと光る光を目印に中へと進むカリエンヌ。



 やがて、光が強くなっていく。








 パッと目の前が開けた。


 優しい歌声と、いい香り、暖かくて、ゆっくりした風。

 なんて気持ち良いのでしょう。




 カリエンヌが目の前に見た世界は、花が舞い、妖精達が歌っている。

 おそらく消えた住人や彼らの体の一部が、ゆらゆら楽しそうに揺れている。




 ずっと奥には、エラゴラがいた。

 でも最後に見た時とは違い、赤に金の模様の蝶々のようは大きな羽をひろげている。

 元々、彼女の羽は桃色だった。



 ”カリエンヌ!”

 カリエンヌを見つけると、エラゴラが早速飛んで来た。


 ”エラゴラ!よかった無事で、心配したの。貴方を助けてあげられなかった。

 ごめんなさい。

 私、貴方を守るって約束したのに。”



 エラゴラと泣きながら揺れるカリエンヌ。




 ”ありがとう、カリエンヌ。

 私は大丈夫。無事よ”


 微笑むエラゴラは嬉しそう。


 

”私達あの紫色の風に吸われてここに来たの。

だけど、中にはいなくなった友達がいるじゃない!

びっくりしたけど、ここは心地良いの。

貴方に話したでしょう。以前私たちの国がどんなだったか。

これが正に私たちの国よ!!!”


 気持ち良い。美しく、楽しい。





 しかし、ここはどこ?





 ”エラゴラ、確かに素敵な所だけど、ここがどこなのか、貴方は分かっているの?”


 ため息を1つついたエラゴラ。


 ”多分、何かの中。洞窟とか、お城とか、家とかではなく”


 ”?”


 ”何かのお腹の中”


 ”お腹?お腹って、このお腹?”


 自分のお腹を指してみるカリエンヌ。



 ”そう、きっと大きな動物のお腹の中。心臓の音らしきものが聞こえるから。

 耳を澄ませてみて

 ドク、ドクって聞こえるでしょう?”



 確かに、自分の心臓の音とは違うが、何か規則的に聞こえる。



 ”それにしても、貴方のその羽?とっても綺麗だけど、前に見て時と羽の色が違うわ。どうしたの?”



 エラゴラが口を開こうとしたその時、風が来た。

 また外から、誰か吸い込まれたらしい。




 だが吸い込まれてきたのは、招かざる客。


 侯爵だった。



 ”どうだい?私の可愛いペット達。居心地は良いかい?

 それももう終わり。

 私は、君たちが苦痛の表情をするのが見たいのだよ。


 気付いた者もいるようだが、これはドラゴンのお腹の中さ。紫の息を出すドラゴン。珍しいだろう。あれを見つけた時は驚いたがね。

 ドラゴンは他の者が悲しむのが好きなんだよ。

 さあ、君たちはドラゴンの餌となっておくれ。”



 紫の風が侯爵の後ろから、カリエンヌ達を襲うように迫ってくる。

 ずっと奥の方に吹き飛ばされていく。


 暗く、どんよりとした暗闇に飲み込まれる!







 

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