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月の夜に  作者: カノン
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1つ目の国、1つ目の経験(2)

 カリエンヌは、お天気の良い日にエラゴラと外を漂っていた。


 気持ちが良いとはこのことかもしれない。


 風に吹かれるまま、ゆっくりゆらゆらする。


 妖精の歌声とお花の良い香り。この国の者達は、この花の香りを栄養とするのだとわかった。


 香りは様々だが、酸っぱい匂いは薬。甘い香りは元気のない時。清々しい匂いは栄養。草の匂いはおやつらしい。

 ちょっとヘンテコだが、慣れてくれば美味しいものだ。



 ”以前はね”

 エラゴラがちょっと悲しそうに話し始めた。


 ”以前はもっと楽しいところだったのよ。

 私たちはゆっくりと揺られながら、妖精の歌を楽しむの。

 妖精の歌で、花が咲き、匂いが変わるのよ。

 みんな楽しく、ゆったり暮らしていたの。


 それがある時、嫌な風が吹き始めた。

 紫色の、冷たい空気。

 その風が吹くといなくなるの。この国の人が。もしくは見たでしょう?体の一部が無くなってしまうの。吹き飛ばされてしまうのよ。

 その後戻って来ないの。


 そうやってこの国の住民が減っていった。なくなった部分も戻ってこない。


 妖精は悲しくて歌わなくなっていくでしょう。だから花も咲かない。匂いもだんだん消えて行っている。もうすぐ何もなくなってしまう。


 私も歌えない。


 悲しいのに楽しい歌は歌えないでしょう?




 貴方の声は、私たちに以前の国を思い出させてくれた。

 でも気をつけて。

 また必ずあの風は吹く。紫色の悲しくて冷たい風。


 そして、その風の吹く方に全て吸い寄らせていく。


 いつか私も、風の向こうに連れて行かれるかもしれない。


 そうしたら、私の為に歌ってね。”


 エラゴラは悲しそうに微笑んだ。





 ”私は歌わないわよ、あなたの為に”


 ”えっ”

 驚きの声を出すエラゴラ。



 ”絶対に貴方のために歌わないわ。貴方がいなくなるわけないでしょう。そんな事させないわ。

 貴方はここで初めてできた私のお友達。失いたくない。

 何があっても、私が貴方を助けるから!”



 エラゴラは嬉しさと戸惑いの表情を隠せなかったが、そのうち大笑いし始めた!


 ”なんだか貴方が言うと、本当になる気がする。その時はお願いね。

 大好きよカリエンヌ!”



 こうやって、ひと時でも、笑いながら流れる時間はとても心地の良いものだった。











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