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月の夜に  作者: カノン
13/42

1つ目の国、1つ目の経験(1)

 カリエンヌが漂っていた時、眠っている彼女に聞こえてきた声。

 無意識のうちに、彼女は声の主に導かれていた。

 1つ目の試練 ・ 1つ目の世界




 最初のお話


 気づくと、カリエンヌは舞台の上で歌っていた。

 どうやらオペラ歌手らしい。

 皆が彼女に拍手喝采している。


 パタパタパタ


 不思議な拍手の音。


 鳴り止まないパタパタパタパタ




 カリエンヌも周りも皆薄っぺらい

 まるで紙のよう。

 ペラペラ



 しかも皆何かない。

 目が無いもの、口が無いもの、耳がないもの、手が無いもの



 何かがない



 妖精が飛んでいるが、妖精も薄い

 ペラペラと空気の流れるまま、皆揺れている。





 (ここは、もしかしてキヌリアが話してくれた国かしら?)


 皆がゆらゆらしてる国


 エバラリ


 妖精と花の国


 そこの住民は皆紙みたいに薄く、空気を漂って暮らしているけど、いつも幸せそうで、素敵な国だったと言っていたけど、

 なんだか、話に聞いていたのとは違うような。

 皆幸せそうにはあまり見えない・・・・



 カリエンヌの歌声に、涙を流して拍手してくれているけれど・・・


 控え室に、ゆらゆらしながら空気の流れで戻ったカリエンヌの元には、沢山のお花が届けられていた。



 ”お花が薄い・・・

 でも嬉しいわ、いい香り”



 すると、

 ”こんにちは”

 声がする。



 ”こんにちは、可愛いお姫様。

 私はエラゴラ。

 花の妖精。”




 薄ーい花束の中から、薄ーい妖精さんが現れた。




 ”貴方の歌、素敵だった。聞き惚れたわ。どうやったら、そんな美しい歌声が出るの?

 私も前は歌えたの。これでも上手なのよ。

 でも今は、歌えないの。”




 (歌えない?)

 カリエンヌがエラゴラに尋ねた。

 ”なぜ歌えないの?”



 ”歌が出てこないから”

 そう言って、エラゴラは下を向いて悲しそうな顔をするので、それ以上聞けなくなってしまった。


 ”シーーーっ”

 エラゴラは隠れてしまった。






 楽屋の扉の隙間から、2枚(2人)の男性が入って来た。


 トマヌ侯爵とその家来


 ”カリエンヌ嬢、貴方の歌声に聞き惚れておりました。

 よかったら、我が邸宅で音楽会を行います。貴方もご参加していただけないでしょうか?

 もちろん、謝礼はお支払いします。”


 侯爵自らカリエンヌに話しかけてきた。由緒ある貴族なのだが、あまりカリエンヌは好きでない。

 薄気味悪いあの口元と目つき。

 悪い人ではないのだが、何か別の下心を感じるのだ。


 ”お誘いありがとうございます。

 ありがたいのですが、私は舞台の上で、皆様に喜んでいた抱くために歌っています。

 侯爵様の邸宅での音楽会など、私には未分不相応ですので、他の方をお誘いください。”


 丁重にお断りした。


 それでもしつこく誘ってきたが、今回はなんとか行かないことで落ち着いた。







 侯爵が居なくなった後、


 ”あの人嫌い、なんだか嫌な空気が漂っているわ”

 エラゴラがひょっこりペラペラの顔を出した。


 同じ気持ちがする。カリエンヌもなんだか嫌な気分がしていた。






 

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