大樹との会話
空中に浮いているような感じ。カリエンヌに羽はない。ふわふわと、何もない空間を漂っている。
心地よく、漂っている。
一体どれだけの時間が経ったか。
カリエンヌが目を覚まし始めた。
目の前に大樹が現れた。彼女はしばらく大樹の前に立っていた。
その後、大樹から離れ、彼女が反対側に歩き出した。
前に扉が現れ、扉の外へとカリエンヌは戻って行った。
そこには、さらに歳をとったような爺が待ち構えていた。
”姫様、待ちくたびれましたぞ。時は来ました。ご指示を”
彼女の前に、爺と城の者達が跪いた。
”剣を”
カリエンヌは王族に代々受け継がれた剣を持ってくるように伝えた。
それは錆びていて、剣なのか何かもわからないような代物だったが、すっと王家の守り神とされていた。
爺がその剣を姫に渡す。
すると、剣は鼓動し始めた。
ドクン、ドクン
それは剣に姿を変えていたドラゴン、ゴールドとシルバーの2頭のドラゴンへと姿を変えた。
”時は来た、戦いましょう。吸血鬼達を滅ぼすのです。彼らのために、我らの民は吸血魚となっている。他の民達も。
もうこれ以上彼らのやりたい放題にはさせません。
月は満ち、太陽は我らを照らします。
この2頭のドラゴンの示す様に”
ドラゴンの鱗が沢山の小さな剣となり、皆の手元に飛んでいった。
”この剣で戦いましょう。我らの国を、平和だった時を取り戻すのです!
いざ!”
そう言って、姫が剣を高々にかざすと、そこに太陽が現れ、陽の光が剣を照らす。
”オーーーーー”
歓喜を上げて、兵士や民達が戦いに向かって行った。
”爺、指揮はあなたに任せます。
私には待ち人が来るでしょうから”
そう言って姫は大樹の空間へと戻っていった。
”御意、姫様”
涙を流しながら、爺は老人とは思えないような気迫と貫禄で、争いの支持を出し始めた。
その昔、この国随一といわれた将軍だと聞いていたが、姫の爺やとなってからは、物静かなおとなしい、心配性で口うるさい爺であったので、予想にもしなかった。
この度の姿は、かつての勇者の姿を感じさせた。
”貴方は、いつになったら、私を殺しに鬼となってやってくる? 待っています。あなたが来るのを。”
姫が樹に吸い込まれ、空間を漂っていた時、声が聞こえた。
”もうずっと長いことここに居るよ。お姫様。そろそろこの呪縛もいい頃だ。
3回チャンスをあげよう。
3つの世界を生きてごらん。
もしどれかの世界で、君のことを、君が一番大事な人が気づくなら、私はなんでも君の言うことを聞くよ。
しかし、もし君の大事な人が、君だとわからないなら、結果は知っているね。
王家の者の勤めを果たしてもらうよ”
姫は何も言葉を発しはしなかった。
小さく頷き、その身を任せた。




