思わぬ事が始動し始める(3)
ビーランは城の中では、体の大きさを自由に変えることができる。
小さくなったまま城の廊下を飛んでいくので、虫と勘違いでもするのか、皆不思議に気づかない。
王の部屋とは、立派な黄金の扉があるが、もちろん開いていない。鍵穴からビーランがやっとの
ことで入り込んだ。
そこで姫が見たものは・・・
ぐったりと項垂れた王と王妃様。
パラリが王妃様に何か囁いているかのように見えたが、彼女が離れた時、王妃が前に倒れてしまった。
パラリは鋭い牙を持ち、血が口から滴っていた。
彼女は吸血鬼。
王と王妃に噛みつき、彼らはもう正気を無くしている。
彼女に操られるまま。
”きゃっ”
あまりの事に驚いたカリエンヌの声が聞こえた。
”誰だ?!”
恐ろしい形相で、振り向くが誰もいない。
カリエンヌが、あまりにも小さいので気づかない。
そっとドアの鍵穴から抜け出し、キヌリアの元に急いだ。
彼の元に向かう間、城の者達は皆青い顔をして正気がないようだ。
おそらく、皆彼女の餌食となったのだろう・・・
キヌリアのいる牢獄へ急ぐと、彼の真っ白な、白銀に近い自慢の羽が、灰色に変わり始めた。
”キヌリア!どうしたの?キヌリア!”
”逃げるんだ、ここから遠くへ逃げろ。早く!”
キヌリアは苦しそうにカリエンヌを見つめ、少しだけ微笑んだ。
その微笑んだ口元に、牙が生え始め、彼の容姿が変わってきている。
あんなに真っ白だった羽は黒くなり、顔も痩せ細り、牙が生えている。
鋭い目、ごつごつした手。
あの優しいキヌリアの面影がなくなり、今にもカリエンヌに襲いかかってきそうだ。
そこに現れたパラリ。
”やっと貴方もこれで私たちの家族となったのよ”
そういって、キヌリアの首元に噛みついた。
ああ、
彼は吸血鬼にされてしまったのだ。
信じられない光景
悲しみと、苦しみと、泣きながらカリエンヌはビーランと共に逃げ出した。
とにかくここから離れなければと。
結局、海の城に向かうしかなかった。
カリエンヌは家族の待つ城へ戻った。
しかし、この城もなんだか騒々しい。
爺がカリエンヌを見ると、泣きながらカリエンヌの元へ走って来た
”姫様、よくご無事で。散々探しましたぞ。急いで、こちらへ。安全な場所へ!”
爺は、カリエンヌをこの間の真珠の大扉へと誘った。
彼女が扉の前に立った瞬間、扉が開き、またあの空間に彼女は佇んでいた。
”カリエンヌ”
父がそこにはいた。
”とうとうこの恐れていたことが起こってしまった。お前は、なぜこんなことになったのか、分かっているはずだ・・・・
時は動き出した。
我ら王族のなすべきことは分かるね
私も全ての力を君に捧げよう。なんとしても我らの民を救うんだ!”
王の姿は光となり、大樹の中に取り込まれた。
中に亡くなった王妃や、3人の王子の姿が浮かんで見えた。
カリエンヌは己の姿を大樹の前に重ねると、彼女と大樹が一体となり、今まで咲かせていた花が止まった。滴る雫も止まり、ただ静寂だけが残った。




