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太陽と星のバンデイラ  作者: さくらのはなびら
日が落ち星が隠れたとしても
91/122

サンバ2

 パレードをやりきったふたりは、無言で軽くハグをした。

 ふたりとも想っていることは同じ、美嘉のことだった。


 夕方からはステージだ。

 衣装を変えるので軽く休憩を挟み準備を進めた。


 ステージではカザウだけのショーもある。三分ほどだが意外と長い。


 ステージは曲ごとにパートが入れ替わりパフォーマンスを行う構成だ。


 子どもや学生ダンサーのクリアンサスで構成されたグループが、潑剌さと可憐さに、仄かな色香も纏わせたステージで、元気の良さと可愛さが輝いていたパレードとは異なる一面を見せ、観客を感動させていた。

 彼女たちを子どもの頃から見てきたであろうメンバーが涙ぐんでいる。

 まだ付き合いの浅い暁ですら、ぐっとくるものがあった。皆親戚の叔父や叔母になったような感覚なのだろう。わからなくもないと暁は思った。


 続いて、パシスタたちの群舞が始まった。

 サンバらしい、派手で盛り上がる構成だ。

 華やかな羽飾りに目が行きがちだが、ノペで揃える部分など、かなりの高速ステップであるにも関わらず、全員が綺麗に揃っていて、手指の動きもしなやかで美しい。


 流れるように、パシスタの中でも実力者数人による、ソロに繋がる。

 三人のダンサーが立ち替わりパフォーマンスを披露している。

 それぞれ、チーム有数の実力の持ち主で技術に甲乙はつけ難いが、個性は表れていて、三者三様の見応えがあった。


 三人に続いて、マランドロのハルがソロでパフォーマンスをする。

 ダンディなスタイルで、女性ダンサーとは趣の違う魅力でステージを彩っていた。これもまた、サンバなのだ。

 曲が変わり、照明も明るくなった。

 明るい曲調に合わせ、ソロを踊っていないパシスタたちが華やかに登場する。


 カザウの出番はこのパフォーマンスの後だ。


 ハルはダンディで格好良いダンスから一変し、軽妙で少しコミカルなダンスでパシスタたちに絡む。

 最後はステージ上のダンサーが列になりノペを踏む。

 この曲が終わる時に、カーテンコールのように全員で手を繋ぎ、客席に向かって礼をする構成だ。


 全員が手を繋いだ。

 カザウの出番が来る。暁と慈杏は手を取り、バンデイラの位置を確認した。いつでも出られる。


 曲が変わる。入れ替わるようにカザウがステージへと出陣した。



 バンデイラを掲げ、翻すポルタ。

 華やかなポルタを優雅にエスコートし、時に滑らかにポルタの周りを廻り自らも回るメストリ。


 観客にエスコーラ名の太陽と星をデザインしたバンデイラを広げてみせるふたり。



 かつていがみ合い、やがてまとまった、ふたつの商店街を象徴するバンデイラ。



 いろいろな人たちの、悩みや葛藤を経て、努力と献身でここまで来られた商店街は、確かに太陽のように眩しく、星のように美しく、輝いていた。


 

 差し込んだ翳りなど、いくらでも振り払える。



 サンバの放つ情熱を受け熱狂する観客の姿は、まだまだこの街の住人の熱量が尽きていないことを若人や慈杏、治樹などの商店街のメンバーに実感を伴う勇気を与えた。


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