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太陽と星のバンデイラ  作者: さくらのはなびら
1章 計画と策動
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策動2

 ブラックスーツの男がプレハブから出てくる。

 この地域に何人かいる元々農家だった大地主は、所有する田畑の多くをマンションや駐車場にしていた。ここもそんな駐車場のひとつである。

 その駐車場の一角に、簡素なプレハブが建てられていた。


 個人の地主の場合、土地を遊ばせておくのはもったいないという理由だけで駐車場化されるためか、とりあえず砂利を敷いてロープで仕切っただけの経費をかけない簡易的な駐車場が多いが、ここはきちんとアスファルト舗装がされていて、定期的にメンテナンスされているのか、路面にひび割れなどはなく色も褪せてはいない。

 四分の三程度が月極で契約できる駐車場で、残りがコインパーキングとして開放されている。

 全体的な駐車率は半分ほど。曜日や時間によってはコインパーキングの方は満車になっていることも多い。

 昨今のイメージ戦略で子育て世帯の流入が多い街であるからか、ワンボックス、ファミリー向けの背の高い軽自動車がやや多く見えるが、小型の軽自動車や国産セダン、外車のセダンもそれなりのバランスで停められていて、偏りは見受けられない。



「長かったね」

 駐車場の入り口近くに設置されていた自動販売機付近で缶コーヒーを飲みながら待っていたサンドベージュのジャケットを着た男が声を掛けた。


「待たせて悪い。挨拶と簡単な提案だけのつもりだったんだが、やはりこのしつらえで評判を得ていると言うのには違和感と興味があって、診てもらった」



 駐車場の隅に建てられたプレハブは、駐車場の所有者の親族が経営している占い屋だった。

 占い師自身も生活するには充分の家賃収入が得られる土地と建物を相続している悠々自適の身だった。利益を求める必要のないその占いは、一律五百円と安価で、営業時間は短時間かつランダムだった。

 神秘性の演出などもなく、どこにでもいそうな女性が、コンビニの店員程度の距離感で平易な敬語で告げる占いに、虚飾性や作為を感じないためか、ある意味信憑性が高いとの評価を得ていた。

 積極的な集客はしていなく、営業時間の兼ね合いから接客数にも限りがあるため分母が少なく、ユーザーボイスの数は多くはないのだが、そのほとんどが結果に対しても満足しているようで、的中率もそれなりに高いのではないかと思わせた。


「わざわざ? 意外と用心深いんだ? それとも占いに興味あったとか?」

 サンドベージュジャケットの男が意外そうに、そして少し愉快そうに言った。


「お前が気になるって言うんだ。それだけで時間を使うに値するさ」


「光栄だね。で、感想は?」


「いまいち要領を得なかったな。

『己が大事にしているモノを忘れないで。重要な選択をする時は、それに従うように』

だとさ。そんなの当たり前だろうに。何故評判なのかよくわからん」


「大事なモノ、か。そんなの決まっている」


「ああ、ここまで進めて来た計画だ。

これを確実に成功させること。それ以外のものなど余分だ。

全ては計画の成功のための動きであり、一片の油断もしない。確度を上げるための手は尽くす。

そうだな、無駄足になると思うが、あのパン屋にももう一度だけ顔を出してみようか」


「そうだね。今日は俺も同席するよ。相手の変節は期待できなくても、何か情報が拾えるかもしれない」


 

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