少年と公園
「どうする? 森公園に行ってみる?」
この辺りにはいくつかの公園がある。
その中でも最も広いのが『森公園』だ。
サッカーボールネットに入ったままのボールを蹴りながら尋ねたのは同級生の北光羽龍だ。
その声には諦めの色が滲んでいた。
「森公園も良いけど、同じことになるんじゃないかなぁ」
俺たちの住んでいる地域には行動範囲にいくつかの公園があり、それぞれの公園には面白味のない数字と号数で現された正式な名前が別についていたが、俺たちは公園ごとに特徴をなぞらえた通称を勝手につけて呼んでいた。
でかいひよこのオブジェが入り口にある『ひよこ公園』、トンボの形をしていて、羽の部分がシーソーになっている遊具のある『トンボ公園』、遊具は一切なく、小川の流れる樹木園の様相でガゼボのあるエリアと、広いグラウンドのあるエリアに分かれている『森公園』。
森公園は遊具が無いので小さな子どもにはあまり人気はないが、広いグラウンドがあって自由にボールが使えたため、サッカーや野球で利用されることが多い公園だった。
ミニゲーム形式であれば試合もできるので人気は高い。
「だよねー」とため息交じりの羽龍も、同じ予感をしていたようだった。
俺たちは小学校に上がると同時に地元のサッカークラブに入っていた。
きっかけはサッカーを題材にしたマンガだ。生まれた頃にはすでに長期連載の部類に入るマンガだったが、小学校に上がる頃も俺たちの地域では人気は衰えてなく、影響を受けていた子どもは多かった。
俺たちもそんな子どもだった。
物語中で主人公たちが華麗なコンビプレーで相手チームを圧倒し、「ゴールデンコンビ」などと呼ばれているのを見て、真似しているうちに、チームでもコンビとして試合に出るようになっていた。
四年生になると学校でも部活動が始まるが、クラブチームに入っているメンバーの何割かは、部活動から始める連中に交じって基礎から練習するのがなんか「ダサい」と、サッカー部には所属していなかった。(基礎練習はどんな選手にとっても大事なのに!)
サッカー部に入らなくても、体力向上を目的に陸上部や水泳部に入る者も居たが、サッカー部に入らず、だけどサッカーだけやっていたい者は、放課後の練習場所確保が日課だった。
俺たちが住んでいる街には一級河川(理科の授業で習った)が通っていて、川と土手の間が広いグラウンドとして整備されていた。
平日は特に予約などは必要なく、空いていたら自由に使えたので、俺たちはそのグラウンドを単に「河川敷」と呼んで練習に使用していた。
放課後は河川敷で練習するのが常だったが、なぜか今日は河川敷の全グラウンドが埋まっていて使えなかったのだ。
いつも利用していない団体に占拠されているのだから、俺たちのように普段使っている者はあぶれることになる。
練習を諦めないなら必然的に別の場所を探すはめになり、真っ先に候補に挙がるのが森公園だ。森公園には野球用のグラウンドがあるが、そこだって普段利用している者たちがいるので、河川敷からあぶれた者たちも受け入れていたら、既に空きは見込めないだろう。
となると、俺たちには決断が必要だった。