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始まりの地
『管理地』と書かれた看板の向こうに見える景色に、かつての面影は無く。
文字通り管理されているであろうその土地には、ちらほら見える背の低い雑草以外、ほぼむき出しの無味乾燥な地肌が晒されていた。
その場所で積み重ねられた営みも、想いも、はじめから何もなかったかのように。
長い夏。咽ぶような暑さの中で。
大冒険の果てに見つけ、新天地のように感じていたこの土地は、大人の感覚で訪れれば近所と呼べる程度に近く、広大に思えた敷地も更地になれば意外とこじんまりとしていたことも、荒涼とした気持ちに拍車をかけたのかもしれない。
あの場所が、最期を迎える準備をしていたごくわずかな期間。
誰にも知られていない、俺たちだけの時間も、白昼夢だったような気がしてくる。
「無かったことになんかさせるかよ。なあ、――――」
乾いた風の音が、呟いた声を飲み込み意味を持つ音にはならなかった。
しかし、掻き消された音は初めから無かったことになるわけではない。
弱くなった日差しが季節の移ろいを実感させても、暑かった夏が無かったわけではないように。