少年と決意
いろんなことがあった日だと思った。
実際はそれほどではないのだが。
どちらかと言えば、いろんなことを思った日であった。
あの日、俺は何に絶望したのだろうか。
程度の低い同級生に?
ガビを追い出した奴らに?
閉鎖的排他的な地域性に?
そんなことを言われるような仕事をしていた工場とガビに?
大人同士の落としどころで帳尻をつけた親たちに?
ガビを人さらいだと言ったどこかの大人に?
かつてくだらない冗談で同じ言葉を使った俺自身に?
ガビを悪く言われ、図星を突かれたようにキレた俺自身に?
ガビを信じ切れていなかった俺自身に?
もうわからない。考えるのも疲れた。
腫れた頬が熱を持っていて気付かなかった。
いつの間にか頬を伝っていた涙は生まれて初めての悔し涙だった。その後感情を伴う涙を流すことのなかった俺の、最後の涙だった。
そこに絶望があるのなら、そんなもの潰してやるよ。
何もかもが気に食わないなら、その全てを潰してやる。
痛みと熱に思考を覆われながら眠りにつく刹那、染められたのは俺の脳だったのか、心だったのか。
ある日、俺は土手に羽龍を呼び出し、伝えた。
俺の誓いを。そして、計画を。
羽龍は伏し目がちにゆっくりと頷いてくれた。
土手から見る河川敷の向こうに落ちようとしている陽は濃い藍色に押されながらも、尚朱を輝かせ、命が奪われるその瞬間まで燃盛るのを止めない野生動物の心のようだと思った。
俺は、俺たちは、この空を忘れない。
この朱を忘れない。
たとえすぐに藍に塗りつぶされてしまうとしても、強く俺たちの心を染めてくれたその朱を――。