第24話 戦うお茶会令嬢
「本日フレイアさんをお呼び立てしたのは、ほかでもありません」
私はソーサーの上に紅茶のカップを置きつつ、目の前のフレイアをじっと見つめる。
「私に『お茶会』を教えていただきたいのです」
「ソフィア様が『お茶会』……ですか?」
フレイアは怪訝な表情を浮かべた。
──全然王女らしくない私が、いきなり『お茶会』なんて言い出したら、そういう表情になるよね……。
私はフレイアに対し、王妃エリザベートが一週間後に全令嬢を集めたお茶会を計画していること、また、私がそのお茶会での振舞いに失敗した場合には、エリザベートは国王と離縁し、私をエリザベートの実家の公爵家に連れて帰ることを説明した。
「そんな……。ソフィア様をご実家に連れ帰るだなんて……」
フレイアは少し俯くと、ショックを受けたように口元を手で押さえる。
「……エリザベート様は本気なのですか?」
フレイアは縋るような表情で、私に問い掛けた。
「はい、本気です。お母様のふくよかな胸に顔を埋めつつ、頭をヨシヨシと撫でられながら、甘~い声で何度も話し掛けられたので、間違いありません」
スパーンッ!!
私の後頭部を強い衝撃が襲う。目の前がチカチカとしたが、意識は失わなかった……。
「……ソフィア様。エロい虫が後頭部に」
「アリエッタさん! 来ると思ってましたよ! でも、話にリアリティを出すために、どうしても言いたくて!」
私はアリエッタにジョークで返すが、彼女は冷めた目で私を見る。一方、フレイアの後方に控えていたマリーが、目を丸くしてアリエッタを糾弾し始めた。
「アッ、アッ、アリエッタッ!! あなた、王女殿下に対して、なんてことをしてるのっ!?」
アリエッタはマリーに視線を合わせると、きょとんとした表情で答える。
「え? いつも通り、ソフィア様の後頭部を平手打ちしたんだけど?」
マリーは一瞬言葉に詰まりつつも、そのままアリエッタの糾弾を続けた。
「おっ……王族に手を上げるなんて大丈夫なの!? 普通なら、クビだけじゃ済まないんじゃないの!? 伯爵領だと、主への暴力は投獄された上に懲役刑だったよ!?」
「そうだ、そうだー!」
私が後ろを振り返ってアリエッタをニヤッと見つつ、マリーの糾弾に乗っかかると、アリエッタは私の頭頂部を軽くチョップした。
「マリー、大丈夫よ。私はソフィア様の専属侍女になる時に、国王陛下から特別な許可をもらってるから」
「「……え?」」
私は初めて聞く事実に、マリーと同時に声を上げた。
「ソフィア様の更生のためなら、私は軽いお仕置きを許可されてるの。だから、行動に問題があるソフィア様を叱るぐらいなら、その範囲内なわけ。……まぁ、最近は、行動よりも言動に問題があるけどね」
私がアリエッタの言葉にプーっと頬を膨らませると、アリエッタがドヤ顔で私を見下ろした。
「いっ……いつか見返してやります!」
「どうぞ、どうぞ。見返せるぐらい、立派な王女殿下になってください」
フレイアは既にこのやり取りに慣れたようで、軽く目を閉じて澄ました顔で紅茶を飲みながら、私達の会話が終わるのを待っていた。しかし、マリーは信じられないもの見るように、ずっと驚愕した表情を浮かべている。
私はアリエッタとのやり取りを終えて、フレイアの方に向き直ると、軽く咳払いをした。
「オホン……。では、場も和んだことですし、本題に入りましょうか」
私の言葉に皆が姿勢を正す。私はフレイアに視線を向けた。
「フレイアさん。まずは、『お茶会』はいかなるものなのかを教えて頂きたいのです。今度のお茶会が私の将来を決めるものであることは分かっているのですが、記憶がない私には『お茶会』の実態が分からないのです」
フレイアは私の質問を受けて少し考え込むと、しばらくして、紅茶のカップを上品な仕草でソーサーの上に戻した。
「そうですね……。私は、個人的に開かれる小さなお茶会から王家主催の大きなお茶会まで、様々なお茶会に参加してはいますけれど、改めて『お茶会』を問われると何からお話ししたら良いのか難しいです。しかし、敢えて簡単に説明するとすれば……」
そして、ゆっくりと口を開いた。
「お茶会は、女性貴族の戦場です」
フレイアの説明は、エリザベートの話とも合致していた。
それほどまでに、お茶会は殺伐としているのだろうか?
「一方、男性貴族にとっては、『酒宴』が女性貴族のお茶会に相当するものですが、酒宴に参加できる年齢は18歳以上の成人です。お茶会のように幼少期から参加できるものではなく、成人同士の会合になりますので、自然とその会話も節度あるものになります。そのため、戦場というほどではありません」
私はフレイアの説明に相槌を打つ。
「お兄様からは、酒宴は、政治や経済に関する会議を兼ねることが多いと聞いています。とはいえ、お酒の影響もあってか、身分差による礼節を気にすることなく、自由に意見を交わすことができるそうで、成人男性は酒宴が大好きです」
私は「なるほど」と軽く頷いた。前世のサラリーマンの飲み会と大差ないようだ。
しかし、「お茶会」との比較対象として、「和やかな酒宴」を持ち出されたことが気になった。
「……つまり、『お茶会』は、令嬢同士のいがみ合いの場ということですか?」
私は窺うようにして、フレイアに問い掛けた。すると、フレイアはアリエッタに視線を向けた。
「……ソフィア様は記憶を失われる前、時折お茶会に参加されていたとお聞きしましたが、どんなご様子でしたか? 残念ながら、私は父上からソフィア様とお茶会をご一緒しないように言われておりましたので、ソフィア様が参加されるお茶会に同席したことがないのです……」
フレイアがアリエッタに視線を向けると、アリエッタが私の代わりにフレイアの問いに答えた。
「私はソフィア様の専属侍女になってから、三度ほど、侯爵家と伯爵家のお茶会に同席いたしましたが、それはもう散々でした……」
私が振り向いてアリエッタを見ると、アリエッタは額に手を当てながら話している。
「まず、ソフィア様に招待状を出して下さったご令嬢達は、ソフィア様が招待に応じることを想定していませんでした。そのため、ソフィア様が実際にお茶会に向かうと、ほぼ間違いなく、主催のご令嬢が顔を青くしているんです。そして、元気のない様子で、『どうしてここに連れて来たの!?』と言いたげにしながら、私を涙目で睨むんです……」
部屋に数秒の沈黙が流れた。
「そして、ソフィア様が参加したお茶会は、もうお茶会とは言えませんでした。先日、ソフィア様にお伝えした通り、ソフィア様は下品な言葉遣いですし、お茶会の途中で平気でオナラをしますので、雰囲気はブチ壊しです。そして、夕食会のような大量の食事をご令嬢に要求したり、ご令嬢の服に泥玉をぶつけたり、ご令嬢に噴水の水をかけて遊んだり……、私は本当に専属侍女でいるのが辛かったです」
私は「それは酷いですね」と言おうとして、自分の過去の行いだと気付き、言葉を飲み込む。それを言ってしまったら、しばらく許してもらえない気がした。私の背中を冷や汗が伝う。
「私は過去、個人的にも令嬢方のお茶会に参加したことがありませんし、ソフィア様の専属に就いてからもこの状況ですので、普通の『お茶会』の知識がありません……」
フレイアは顎に手を当てると、納得するように軽く数回頷く。
「なるほど……。さすが、ソフィア様。『能ある鷹は爪を隠す』という古代ニホンの格言通りですね。そんなお茶会への参加の仕方があるなんて、目からうろこです」
……フレイアさん、話聞いてた?
私は話を本題に戻すため、自分の世界に入っているフレイアに声を掛ける。
「え~っと、私の不品行な昔話は置いておくとして、結局、この国の本来の『お茶会』はどうあるべきなのでしょうか?」
その言葉に、フレイアはハッとしたように私に視線を向けた。それまで何を考えていたのかを聞くのが怖いため、もちろん、そこは聞かないでおく。
フレイアは少し天井に視線を向けると、思い出すように話し始めた。
「私がレーゲンス家で経験している中規模以上の『お茶会』は、令嬢たちが笑顔を浮かべながら、お互いの足を引っ張り合うものです。私としては、そこに楽しさや面白さなどは微塵も感じませんでした」
フレイアはしばらく間を置く。
「どうして令嬢達は、いがみ合うための『お茶会』を開くんでしょう。……正直な話、私は、ソフィア様のお茶会の方が楽しそうで好きです。そちらに参加したかったです。そして、ソフィア様と一緒に……」
フレイアが儚げな美しい笑みを浮かべたが、私は全力で話を止めに入った。アリエッタも、私を援護する態勢に入る。
「フレイアさんっ! その話はまた今度でお願いします!」
アリエッタも後方で懸命に頷くジェスチャーをする。すると、フレイアは目を少し見開いて、口元を手で押さえた。
「あっ、すみません。つい、過去のソフィア様の偉大さに感動してしまいました」
フレイアは「オホン」と咳払いをして気持ちを落ち着かせると、話を続けた。
「それでは、お茶会のポイントをお話しますね。お茶会には、三つの重要な要素があります」
フレイアは人差し指を立てた。
「まず、礼儀です。主催者には、招待客を丁重にもてなす力が求められます。エリザベート様がソフィア様をチェックする部分はここでしょうか。ただ、私が今のソフィア様を見る分においては、おそらく礼儀は問題は無いように思います」
次に中指を立てる。
「次に、お茶とお茶菓子です。話題の中心になることもあり、この部分をケチると、未来永劫、ネチネチと陰口を叩かれることになります。そのため、侍女達は国中のお茶菓子の情報を集め、招待客に相応しいものを選定します。……まあ、王家の場合は、この部分を気にする必要はないですね」
最後に薬指を立てた。
「三つ目は、イベントの開催です。お茶会の目玉イベントを企画する必要があります。お茶会の目的は、このイベントにあると言っても良いぐらいです。今回はエリザベート様主催のお茶会とのことですが、おそらくソフィア様に、イベントの企画と立案を丸投げされると思います。令嬢の技量が試される部分です」
……は?
私は耳を疑った。
──イベントって、前世と同じ意味の「イベント」のこと? 同人誌即売会とか、声優ライブとか、公開収録とか……。
思わず、私の口から質問がついて出る。
「あの……、イベントの開催って何ですか?」
私の質問を受けて、フレイアは一瞬言葉に詰まった。しかし、すぐに口を開く。
「……私には当たり前すぎて、ソフィア様が理解できていなかったことに気付かず、申し訳ありません。『イベント』とは、令嬢向けの……なんと言いましょうか、え~っと、お茶会を盛り上げるエンターテインメントのことです」
この世界に来て初めて、私は「エンターテインメント」という言葉を耳にした。前世と同じ「エンターテインメント」という意味で良いのだろうか?
私がフレイアの説明をまだ飲み込めずにいると、フレイアはいくつかイベントを例示してくれた。
「イベントは何でも良いのですが、例えば、皆がワッと驚くような大魔法ショーを催すとか、」
──ふむふむ。こっち世界では本物の魔法だけど、前世のエンターテインメントに近いね。
「かくし芸大会とか、」
──令嬢のお茶会で「かくし芸」? ふふっ、なんだか前世のお正月みたい。
「あと、最も企画されるお茶会のイベントは、令嬢同士の『ケットウ』ですね。私が知る限り、中規模以上のお茶会では、大抵『ケットウ』が行われます。周りの令嬢達は、それを観賞してお茶をします」
…………。
…………。。
…………。。。
……ちょっと待って。お茶会で「ケットウ」って何?
「何度もすみません。『ケットウ』って何ですか? ……私の記憶にある『ケットウ』は、戦う意味の『決闘』なんですけど、まさか、その『決闘』じゃありませんよね?」
私の言葉に、フレイアはパァっと笑顔を浮かべると、興奮気味に前のめりになった。
「それ! それですよ! ソフィア様は『ケットウ』のご記憶があるんですね! その戦う『決闘』です! やっぱりソフィア様には、生まれながらにして戦闘系の血が流れているんですね!」
…………。
…………。
…………。
「すみません。おっしゃっていることが全然理解できません」
私から、どこかのタブレット端末が音声認識に失敗した時のようなセリフが漏れる。私は続けて、フレイアに問い掛けた。
「というか、なぜ令嬢同士がお茶会で決闘を?」
フレイアは、前のめりになっていた体勢を戻して、椅子に座り直すと、私の問いに答える。
「『決闘』は、神の意志によって、女性貴族だけに認められた特権だからです。男性貴族には、その特権がありません。ですから、お茶会で決闘を行うのは、女性貴族として自然なことなんです。決闘では、婚約権や爵位など、女性貴族の権利や家の将来を賭けて戦います。ですから、『お茶会は女性貴族の戦場』と申し上げたのです」
本当に「戦場」なのは分かったが、言ってることがサッパリ分からない……。今までは前世と共通する部分も多かったが、この件は、異世界転生者である私が最も理解できない内容だ。
私が眉間に皺を寄せて無言で固まっていると、フレイアがマリーに補助してもらいながら椅子から立ち上がった。そして、テーブルの後方に数歩下がり、マリーに離れた場所に移動するように指示を出した。
「私にとっては普通のことなのですが、おそらく記憶喪失のソフィア様には口頭の説明だけではご理解いただけないと思います。ですので、実際に『神の意志』をお見せいたしますね」
フレイアは軽く足を開いて立つと、深呼吸をして、初めて聞く魔法の詠唱を始めた。
「戦いを司る軍神マルスよ! 全ての敵を打ち払う、滅びの剣を我が手にっ!」
フレイアは、両手を胸の前でパンっと音を立てて合わせる。
「出でよ! 我が剣、ライネシアッ!!」
フレイアの手元が、紫色の毒々しい光を放った。
フレイアが両手をゆっくりと離していくと、左手の手の平から眩い光を放つ剣の柄が現れた。フレイアはその剣の柄を右手で掴むと、一気に引き抜く。
引き抜く際に剣先が通過した周辺の空気が、闇の力に支配されたように一瞬暗くなった。
「……うっそ……」
「このように、世の中の全ての女性は自身の中に『神剣』を持っていまして、一定の魔力を使って、その剣を実体化できます」
「…………」
「でも、ご存じの通り、魔法や魔力を使えるのは貴族だけですので、実際にこうして剣を出せるのは女性貴族だけなんです。ですから、令嬢による『お茶会での決闘』は、神の意志です」
「令嬢、こわっ!」
「そうですか? 私は小さい頃からこの剣を使って戦っていますので、何も思わないですね」
フレイアはそういうと、ブンブンと剣を振る。フレイアが剣を振る度に、禍々しい光の残像が軌跡を描く。私はテーブルの反対側に座っているが、正直言って怖い……。
「ソフィア様は魔力が使えませんでしたから、物理的な剣をお使いでした。でも、物理的な剣ですと重たいですし、神剣と刃を合わせると、すぐに物理的な剣は折れてしまうんです。ですから、ソフィア様は何本も剣をお持ちでした」
すると、フレイアは思い出したように私に笑みを向けた。
「あっ、そういえば、ソフィア様は魔力が使えるようになったんでしたね! もしかするとソフィア様も神剣を出すことができるかもしれません。一度、試してみませんか?」
「……え?」
私が思わず不安気な表情をすると、フレイアが私を安心させるように言う。
「神剣を出すのは、魔法を使うよりも簡単ですよ。侍女も元は女性貴族ですから、神剣を出すことができます」
フレイアは、マリーとアリエッタに交互に視線を向ける。
「二人とも、ちょっとここで神剣を出して差し上げなさい。この場での顕現操作を私が許可しますから」
マリーとアリエッタは、顔を見合わせて諦めたように軽く笑みを浮かべると、それぞれ、広めのスペースに移動した。そして、同時に魔法の詠唱を始める。唱える言葉は、フレイアが詠唱したものとほぼ同じだ。そして、最後に神剣の名称を叫ぶ。
「出でよ! 我が剣、フィリアディアーレッ!!」(マリー)
「出でよ! 我が剣、リーゼライトッ!!」(アリエッタ)
二人はフレイアと同じようにして、手の平に現れた柄を持って一気に剣を引き抜いた。
「……本当に剣が出た……」
ただ、フレイアが出した禍々しい剣に比べると、二人の剣は比較的おとなしい形状だ。私が知る普通の武器に近かった。おそらく、その人物が持つ魔力量や精神性に影響を受けて、剣の形状や効果が変わるのだろう。
「ソフィア様、ご覧の通りです。ほら、簡単ですよね?」
デモンストレーションを終え、その場の全員が神剣を消す。神剣の消し方は簡単で、鞘に収めるように、再び手の平に押し込むだけだった。当然だが、神剣は自分自身を傷付けない仕様らしい。
私がその光景に呆然としていると、フレイアが胸の前で両手をグーにして、興奮しながら私に言う。
「ソフィア様の神剣は、きっと暴力的で、全てを打ち滅ぼすような凶悪なものだと思うんです。はぁぁ~、私、見るのが楽しみです!」
……あの、そんな剣、私は全然楽しみじゃないんですけど……。
私は顔を引きつらせながら、フレイアに愛想笑いを見せる。しかし、神剣を顕現させるにあたって、私には分からないことがあった。その疑問をフレイアにぶつけた。
「あの、試してみるのは良いのですが、私、まだ自分の剣の名前とか知らないんですけど……」
すると、フレイアは「どうしてそんなことを聞くの?」というような表情を浮かべた。
「ソフィア様。神剣は自分の精神の一部ですから、名前は心の中に浮かんできますよ。魔法の詠唱の前に、一度、胸に手を当てて考えてみてください」
私はアリエッタの補助で椅子から立ち上がると、広めの場所に移動した。そして、両目を閉じて、手を胸に当てる。
…………。
…………。。
…………。。。
……神剣の名前、全く浮かんでこないんですけどっ!!
私が片目を薄っすらと開けると、フレイアが頬を紅潮させて、ワクワクしながら私を見ていた。
……う~ん。
……う~ん。
……もう何でもいい!! 適当に格好良さそうな名前にしよう!! 前世のお酒っぽい名前にするかなっ!!
私はフレイアと同じように、魔法の詠唱を始めた。ただ、凶悪な神剣は嫌なので、言葉を少しだけアレンジした。
「戦いを司る軍神マルスよ! 巨悪を滅ぼす正義の剣を我が手にっ!」
私は両手を胸の前でパンっと音を立てて合わせる。
「出でよ! 我が剣、ローゼヴァインッ!!」
私の手元からピンク色の光が溢れ出る。
私が両手をゆっくりと離すと、皆と同じように剣の柄が現れた。
──すっ、すごいっ!! 私から剣が出てるっ!!
私はその柄を持って一気に引き抜く。
…………。
…………。
…………。
「……なんだか、可愛い剣ですね」
皆が唖然とする中、フレイアがポツリと呟いた。私も唖然としつつ、口を開く。
「……あの、これって、『剣』なんですか?」
それは、どう見ても、幼女向けアニメに出てくる魔法少女のステッキだった。
剣先と思われる部分に王冠が可愛く乗っており、刀身は刃ではなく、白くて長い棒状になっている。柄だと思っていた部分は、日の下で見るとプラスチックのような素材で、鍔の部分にはいくつかの星マークが付いていた。
「こんな可愛い神剣、初めて見ました……」
マリーがポツリと呟くと、他の皆も同意するように頷いた。そして、アリエッタが呆れるようにして溜息を吐く。
「ある意味、とってもソフィア様らしいですね。……ホントにいつも、予想を超えてくる人です」
私が「多分これ、大魔法使いになるための道具なんですよ!」と言いながらステッキを構えると、皆が私の仕草を見ながら、堪え切れないように笑い始めた。
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