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「夢かなって異世界の王女様に転生しましたが……、この王女様、思ってたのと全然ちがう!」 ~廃嫡寸前のダメ王女に転生した私、魔法王国のキラキラ王女様を目指す~  作者: 白うさぎの子
第2章 「いきなりお茶会!?」王妃の無茶ぶり 編

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第23話 フレイアの新しい専属侍女

 コンコン!


 アフタヌーンティーを終えて、私が「貴族のためのマナー講座」と書かれた本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。部屋の掃除をしていたアリエッタが手を止めて、扉に駆け寄る。私も一旦(いったん)本を閉じて、扉に目を向けた。


 ──フレイアさんには今朝連絡したばかりだし……、まさかね?


 アリエッタはドアノブに手をかけると、様子を(うかが)うように(わず)かに扉を開ける。そして、外にいる連絡係の侍女と小声で話をすると、一旦扉を閉じて、困った表情を浮かべて私の方を振り向いた。


「あの……、ソフィア様。フレイア様が間もなくこちらに到着されるそうです」


「えっ!? もういらっしゃるんですか!?」


 フレイアの予想以上に早い到着に、私は驚いた。


「連絡してからまだ半日も経ってないのに、フレイアさんの専属侍女は見つかったんですか?」


 私の問いに、アリエッタはフッと笑う。


「フレイア様は大人しく見えるので、侍女達の間で人気があるんです。実際、私もそうでした。……でも、レーゲンス家の侍女達からの評価は低いようでしたから、あらかた、何も知らない外部の侍女を(だま)して連れてきたんでしょう」


「……アリエッタさん。相変わらず表現が辛辣(しんらつ)


「相手と一緒に住んでみないと、分からないことってありますよね」


「……妙に身につまされる言葉を言いますね」


 アリエッタの言葉に、私が前世の諸々を思い出しながら苦笑していると、扉が再びノックされる音が響いた。


「ご到着のようです」


 私はアリエッタの補助で椅子から立ち上がると、扉の正面に移動して姿勢を正す。そして、扉の横に移動したアリエッタに軽く手を上げて、フレイアの入室を許可した。


 それを受けて、アリエッタはドアノブを一気に手前に引き、扉を大きく開けた。


「ソフィア様っ! フレイア、ただ今参りました! 到着が遅くなり、大変申し訳ございません!」


 扉の外に立つフレイアが深く頭を下げている。こんなに早い到着であるのに、私はなぜか謝罪されていた。


「……フレイアさん、どうか顔をお上げください。むしろ、フレイアさんのあまりに早い到着に驚いていたところです」


 私の言葉を受けて顔を上げたフレイアは、相変わらずの美少女だ。私は思わず息を呑む。


 ボブカットの髪の毛は綺麗にブラッシングされ、寝ぐせは一切ない。紫色の目はキラキラしていて、じっと見つめられていると吸い込まれそうだ。この世界は美形だらけだが、母親であるエリザベートと共に、フレイアは他の女性達とは格が違いすぎる。


 そんなフレイアが申し訳なさそうに、視線をやや下に落とした。


「魔法学園なら1時間以内にソフィア様の(もと)に到着できていたと思いますが、本日はドレスが制服ではありませんでしたので、正装の準備に時間が掛かってしまいました」


 ──え? このダサいリボン無しセーラー服の準備に時間が?


「実は、私が侍女にパジャマを脱がせるように言っても、『自分で脱いでください』と言って、私にドレスを着せてくれなかったんですよ!」


「…………」


「…………」


「……それ、着るものが制服でも同じでは?」


「今日は脱がせて欲しい気分だったんです! しかも、ドレス用の靴下も『自分ではいて下さい』って言うんです! ホントにもう! 役立たずな侍女達です!」


 私の脳内で、フレイアが侍女達に叫びまくる光景が再生された。アリエッタも同様の想像をしたようで、開けた扉を手で支えながら、少しゲンナリしているように見える。


 ──この世界ではフレイアさんの考え方が普通なのかもしれないけど、侍女達にも気遣いができる人だったら、私の理想の完璧令嬢なんだけどな。


 私は少し困った笑みを浮かべつつ、フレイアに声をかける。


「フレイアさん。到着は全然遅くありませんよ。お忙しい中、わざわざ私の部屋までお越しいただき、ありがとうございました。こちらこそ急にお呼び立てしてしまって、申し訳ありません」


 私が軽く頭を下げると、フレイアは慌てるようにして私の謝罪を制した。


「とっ、とんでもありません! ソフィア様のためなら、夜中でも駆け付けます!」


 フレイアは胸の前で両手を可愛くギュッと握る。


「今のソフィア様には記憶がないので仕方がないですけれども、これぐらいのこと、臣下に遠慮する必要はありません! それに、私は将来、ソフィア様の専属侍女になるんですからなおさらです!」


 フレイアは頬を赤らめ、私に向かって必死に叫ぶ。


 ──何がフレイアさんをここまで熱くするのか……。やる気は認めるけど、できれば、専属侍女はお断りしたい。


 私は必死に笑顔を作りながら、フレイアの話をスルーして、左手で部屋の奥のテーブルを指し示した。


「え~っと、フレイアさん。まずは部屋にお入りください」


 私の言葉を受けて、フレイアは改めてお(なか)の前に両手を揃えると、礼儀正しくお辞儀をする。そして、上品にゆっくりと足を進めながら、私の部屋に入った。


 次に、フレイアの2メートルぐらい後方に控えていた侍女も一緒に入室してきた。


 フレイアの新しい専属侍女だ。


「マリー!?」


 急に放たれた声の方を見ると、アリエッタが口元に手を当てて、目を丸くして驚いていた。アリエッタは扉を開けた状態で控えていたたため、新しい専属侍女の姿を見たのは今が初めてだ。


 マリーと呼ばれた専属侍女も、アリエッタの姿を見て驚く。


「アリエッタ! 久しぶり! あなた、まだここで生きてたのね!」


「生きてる、生きてる! なんとか耐えてるよ!」


 マリーはアリエッタに近付くと、ハイタッチするように両手をアリエッタと合わせて、前世の女子高校生のように再会を喜び合った。


「マリーはどうしてここにいるの?」


「前いた伯爵家をクビになっちゃってさ~」


「えっ!? マリー、またクビになったの!? 何度目!?」


 私を前にして会話の内容がアレだが、二人の様子はとても親し気だ。


「……あの~、お二人はお知り合いなんですか?」


 私がアリエッタとマリーを交互に(うかが)うようにしながら声を掛けると、「あっ! 大変失礼いたしましたっ!」と言いながら、マリーが深く頭を下げた。すると、隣のアリエッタが、マリーを私に紹介する。


「マリーは私の同期なんです。魔法学園の時代、一緒に侍女コースを受講していました。卒業後、私は王宮の侍女部門に配属されたのですが、マリーは高位貴族系の侍女希望だったので、王都から離れた大規模領地の侍女部門に配属されたんです」


「そうなんですね。でも、ここにいらっしゃるということは、今はフレイアさんの専属侍女に?」


 私の言葉に、マリーが満面の笑みで答える。


「はい! 1時間程前に王宮侍女長から突然呼び出されまして、フレイア様の専属侍女になるようにとの命令を受けました!」


「……1時間前?」


「先週、私は失敗続きで伯爵家をクビになりましたので、次の職探しのために王都に戻って来ていたんですが、こんなに早く復職できるなんてビックリです!」


「ほ、ほぅ……」


「フレイア様は令嬢の中の令嬢とお聞きしています。常々、私は高位貴族の侍女を希望していましたので、憧れのフレイア様の専属侍女になれて夢のようです! 本当に嬉しいです!」


「ほぅ、ほぅ……」


 私はひたすらハトのように相槌を打つ。


「……でも、どうして失敗続きの私が選ばれたんでしょう? とても不思議です」


 マリーは(あご)に手を当てながら、天井に向かって(つぶや)いた。


 ──王宮侍女長は、フレイアさんの本当の性格が我儘(わがまま)だと知っていて、マリーさんを捨て駒的にあてがったのでは……。


 私がテーブルの椅子の前に立つフレイアに視線を向けると、フレイアは、アリエッタとマリーのアレな会話を全く気にしない様子で、マリーに声を掛けた。


「マリーったら大袈裟(おおげさ)ですね。そんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しいです。きっとあなたの何かが評価されたのでしょう。これから、私の身の回りのお世話、よろしくお願いしますね」


 フレイアは優しい笑みを浮かべたまま、一切の感情を表に出さない。さすが、生まれながらの公爵令嬢である。マリーに対して興味の無さが漂うセリフだが、それを感じさせない振舞いにプロフェッショナルさを感じる。


「はいっ! もちろんです! 誠心誠意、フレイア様に尽くします!」


 マリーは子供のように興奮しながら、フレイアに元気良く返事をする。


 私とアリエッタが「良いのは最初だけだよ……」とマリーの行く末を心の中で祈っていると、フレイアが突然パッと満面の笑みを浮かべた。


「あっ、そうだ! マリー、アリエッタと仲が良いなら、ここで魔法札を交換しておきなさい」


「「……ふぇっ!?」」


 今朝、アリエッタから聞いたばかりのヤバイ魔道具の名前に、私とアリエッタは同時に変な声を上げた。


「ソフィア様は魔法が使えるようになりましたし、王宮付きの連絡係など通さずに、私と『いつでも、どこでも』話せた方が良いでしょう? それに、毎日ソフィア様と寝る前にお話できますから、ソフィア様のその日の悩みを聞いて差し上げることができます。ね、ソフィア様?」


 ──ヤバイっ!! これは、私とアリエッタさんの危機だ!! 毎夜おやすみコールなんて、精神が持たないよ!!


 私は視線をアリエッタに全振りする。しかし、アリエッタはフレイアの言葉に固まったまま動かない。どうやら、私が相手の時とは違って、フレイアには強気に出ることができないらしい。アリエッタさん、意外と小心者っ!


 私はアリエッタからの支援を諦めて、懸命に言い訳を考える。


「……いっ、いや~、王女はそういう魔道具を使う立場ではないと言われていまして……」


 私はフレイアから視線を外しつつ、適当に誤魔化した。すると、フレイアが即座に言葉を返す。


「はい。ソフィア様ではなく、アリエッタが持っていれば良いと思います。アリエッタが『いつでも、どこでも』応答してくれます。私も、まさかソフィア様に応答させようなんて思っていませんよ」


 フレイアがニッコリと微笑む。一方、アリエッタはこの世の終わりのような表情を浮かべた。


「マリー。さぁ、今すぐ魔法札を王宮聖職者から受け取ってきて、割った半分をアリエッタに渡しなさい」


「はい! 分かりました」


 元気よく返事をするマリーの後ろで、アリエッタは顔を青くして懸命に首を振っていた。フレイアからの呼び出しに応答できなかった時が怖いのだろう。……というか、私を相手にしている時とは随分態度が違う。


 私はムッとしつつも、アリエッタのため、そして自分のために、頭をフル回転させた。


「ちょっと待ってください!」


 私が大声でマリーが部屋から出るのを止めると、フレイアとマリーがきょとんとした表情で私を見た。


 私はエリザベートを真似て、格好よく右手をバッと差し出す。


「王女命令です! その魔道具を取りに行ってはなりません!」


 すると、フレイアが怪訝な表情を浮かべて、私に少しずつ近付きながら責めるように言った。


「……ソフィア様? どうしてダメなんですか?」


 ……うぅっ、理由までは考えていない……。


「え~っと……」


「はい」


「う~んと……」


「はい」


 私は懸命に考える。考えて、考えて、考え抜く!


 …………。


 …………。。


 …………。。。


「……『魔法札を持った二人は絶対に別れる』と噂で聞きました! 縁起が悪いですよ! 私、大好きなフレイアさんと別れたくありません!! ず~っと一緒にいたいですっ!!」


 …………。。。


 …………。。


 …………。


「ソフィア様ぁ~♡♡♡」


 フレイアが胸の前で両手を祈るように組む。そして、頬を紅潮させながら涙を浮かべた。瞳と口の中にハートマーク♡が見えたような気がした。


「私も大好きですっ!! 私もずっと一緒にいたいですっ!! ソフィア様の心配は分かりました。確かに、私も恋人同士の(いさか)いの話は聞いたことがありますので、やはり魔法札はやめましょう!」


 フレイアの言葉を受けて、私がアリエッタに視線を向けると、彼女は最高の笑みを浮かべていた。そして、珍しく……いや、むしろ転生後初めて、アリエッタは私に敬意と感謝を示すように深く頭を下げる。


 ──これでアリエッタさんとの絆はさらに深まったかな?


 私はお辞儀をするアリエッタを見て、軽く笑った。


 それにしても……。


「…………」


「…………」


「……ソフィア様ぁ♡」


 ……近付いてきたフレイアに、力の限りギュッと身体を抱き締められているこの状況、どうしたらいいいの?


 危機を回避するためとはいえ、私が放った言葉(ウソ)の代償は大きそうだ……。


なかなかお茶会の本題に入れませんでしたが、次回からフレイアを交えて、話を進めていく予定です。

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