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「夢かなって異世界の王女様に転生しましたが……、この王女様、思ってたのと全然ちがう!」 ~廃嫡寸前のダメ王女に転生した私、魔法王国のキラキラ王女様を目指す~  作者: 白うさぎの子
第2章 「いきなりお茶会!?」王妃の無茶ぶり 編

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第22話 お茶会の準備……をしたいけど、「お茶会」が分からない!

 朝食後の穏やかな一時(ひととき)──。


 腕を組んで考える私の前に、アリエッタが()れ立ての紅茶を置く。ふんわりと前世のローズティ―と同じ香りが漂った。


「……ソフィア様。昨日のエリザベート様との面会はいかがでしたか?」


 アリエッタは、私の様子を(うかが)うように問い掛けた。私はテーブルに置かれた紅茶を見つめたまま、アリエッタの問いに答える。


「そうですね……。とても貴重な、素晴らしい体験でした」


 私の言葉に、アリエッタは安堵してニッコリと微笑(ほほえ)んだ。


「それは良かったです。エリザベート様もお喜びのようでしたし、私も面会を提案した甲斐(かい)がありました」


 しかし、私はアリエッタの言葉には反応せず、再び黙り込んだ。すると、アリエッタが怪訝(けげん)な表情を浮かべて、私の顔を(のぞ)き込んだ。


「……あの、ソフィア様。どうしてそんなに難しい顔をして腕を組んでいるのですか? ……やはりエリザベート様のアレでお悩みですか?」


「はい、アレです。私、どうしてもアレが腑に落ちなくて……」


「確かに突然ですもんね……」


「いや、突然と言うか、お母様はズルいと思うんです……」


「……え?」


 私は隣に立つアリエッタに人差し指をピッと立てた。


「なんと、お母様は私よりも小柄なのに、とても気持ちのいい豊満な胸だったんですよ! 私を産んだはずなのに形が抜群に良くて、しかも、弾力があってプニプニだったんです。あれは私が吸った後の胸なんですよね? ……やっぱり、どう考えてもおかしいです!」


「…………は?」


「赤ん坊を育ててしばらくしたら、普通はダラ~っとなるじゃないですか。ほら、こんな感じにダラ~っと」


 私は両手を胸に当てて、両胸が垂れている様子を表現する。


「……ダラ?」


「しかもですよ、お母様の胸に顔をうずめたら、その柔らかさは別次元でした。私はお母様と親子のはずなのに、今の私の胸はお母様の大きさの半分くらいしかなくて、これはズルイとしか言いようが……」


 チョロロロ……。


「……ふぇっ!? アッチャッチャッチャ~ッ!!!!」


 アリエッタがなぜか紅茶のカップを手に持って、私の方に傾けている。テーブルの上を伝った熱湯が端に到達し、私の太腿(ふともも)の上にポタポタと落ちてきていた。


「きゅ、急に何するんですかっ!! 熱いですよっ!!」


 私は椅子から飛び上がって、太腿に掛かった紅茶の熱湯を懸命に払う。


「すみません。エロ王女に向かって、無意識に手が傾いてしまって……」

 

「手は勝手に傾くものじゃないですよっ!! しかも、カップを持ってるじゃないですかっ!! これ、私、大やけどですよっ!!」


 私は涙目で、アリエッタに向かって叫ぶ。すると、アリエッタは珍しく「ちょっとやりすぎましたね。申し訳ありませんでした」と大人しく謝った。


 そして、私の太腿の前に両膝(りょうひざ)を立てて(ひざまず)くと、手を私の太腿にかざした。


「治癒の女神キュアリーよ。ソフィア様に癒しを与えたまえ。……ヒールッ!」


 私の太腿がボワッと温かくなる。そして、やけどの痛みが徐々に引いてきた。


 ──はぁ~、気持ちいい。魔法って超便利~♪ ……じゃなくて!! 私は王女に不敬を働いたアリエッタさんを、このまま許すことはできない!!


「アリエッタさん!」


「はい」


「ちょっと今回のイタズラは度が過ぎています! お仕置きしてもいいですか?」


「……どのような?」


「実は、私の左腕がうずくのです……」


 私はサイコガンを持つ某宇宙海賊のように、左腕を上げながら右手を添える。


「私は記憶喪失者です。この国の『普通』を知るため、お母様の胸の感触と、アリエッタさんの胸の感触を比べたいのです。あの最高の感触を忘れないうちに、アリエッタさんの胸のおさわりを……ぐぁっ!!」


 アリエッタの強力なパンチが私の太腿(ふともも)に炸裂した。全く遠慮のない一撃だ。


 しかし、アリエッタは即座に二度目の治癒魔法を掛ける。すると、私の太腿から痛みが消えていった。


「……魔法って凄い。アリエッタさんの私に対する二度の不敬が、まるで無かった事のように感じます」


「はい。私もそう思います。ソフィア様のセクハラ発言が、まるで夢の出来事のようです」


「……おさわり、ダメですか?」


「今度は顔を思いっきり殴りますよ?」


「……この国って、侍女の方が王女より立場が上なんですかね?」


 私が苦笑いしながら、太腿に治癒魔法を掛けるアリエッタを見下ろしていると、アリエッタは私を見上げて問い掛けた。


「……ところで、ソフィア様。そんなことはどうでもいいので」


「出た! アリエッタさんのそのセリフッ!」


「本当に、そんなことはどうでもいいのでっ!」


「……はい」


「エリザベート様のお茶会に出席するための準備や、マナーの勉強はどうするんですか?」


「……ふむ」


 私はそれを聞いて、正気に戻る。そして、アリエッタに治癒魔法を掛けてもらいつつ、再び腕を組んで考え込んだ。


「そうなんですよね……」


 私は昨日のエリザベートからの忠告を思い出す。


『お茶会をナメちゃいけないからね。お茶会は女性貴族の戦場だよ。ソフィアちゃんがお茶会で上手に振舞えずに、いつもみたいな恥ずかしい対応しかできなかったら、私は本当にソフィアちゃんをリーヴァイ家に連れて帰るから覚悟しててね?』


 私は「はぁ」と軽く溜息を吐いた。


 エリザベートの言い分は分からなくもないが、「お茶会で上手に振舞えた」と判断する基準が不明だ。異世界転生者の私としては、まず、「この世界のお茶会とはどんなものか?」を経験者に聞く必要がある。


 私は足元のアリエッタに声を掛けた。


「アリエッタさんは貴族令嬢の頃、大規模なお茶会に参加されたことはありますか?」


「……すみません。ありません」


 アリエッタは、なぜか気まずそうにしながら言葉少なに答えた。私は怪訝に思いつつも、そのまま話を続けた。


「では、誰か貴族のお茶会に詳しい方はいませんか? 多分、オリバー先生は役に立たないので、女性貴族が良いと思うのですが……」


「う~ん、そうですね……」


 アリエッタは治癒魔法を掛け終えて、その場に立ち上がりながら、(あご)に手を当てて考え込んだ。


「例えば、フレ……」


「……イアさん?」


「……ンドリーな(かた)を探しましょう!」


 アリエッタは「失敗した!」という顔をしながら、私に視線を合わせずに、なんとか言葉を(ひね)り出す。


 ──今、アリエッタさんは「フレイアさん」って言いかけたよね?


 私はアリエッタの視線の前に身体を移動させると、その顔をじっと見ながら再確認する。


「やっぱり、フレ……」


「……ッシュな(かた)でも良いかもしれませんね!」


「…………」


 ──フレッシュな方って何? 新入社員?


「あの……、アリエッタさん。公爵令嬢の『フレイア』さんにお話を聞いてはいかがでしょう?」


「その名前、言ってしまいましたね! ダメですっ!! あの人は絶対ダメッ!!」


 アリエッタは敬語も忘れて、私の提案を全力で拒否した。しかも、フレイアを「あの人」呼ばわりだ。どうやら、先日の一件で、アリエッタはフレイアが極度に苦手になってしまったらしい。思い出してみると、アリエッタはフレイアから色々と無慈悲な命令を下されていた。


 しかし、背に腹は代えられない。私はアリエッタの説得に入った。


「でも、フレイアさんなら、多くのお茶会に出席していそうじゃないですか? おそらく、私達に見せた恥ずかしい姿ではなく、貴族令嬢として凄く評判の良い人だと思いますけど、実際のところはどうなんですか?」


 アリエッタは目を背けたまま、床に視線を落とす。


「……まぁ、確かおっしゃる通りです。フレイア様の正体を知らない人から見れば、フレイア様は令嬢の中でもトップクラスのお方です。もし次期王位継承者が男性でしたら、きっとフレイア様が王妃に就かれたと思います」


「やっぱり。それじゃ、決まりですね」


「…………」


 アリエッタはあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。私は、そんなアリエッタに優しく声を掛けた。


「それに、私が言うのもなんですが、私にお茶会のノウハウを教えてくれる人なんて、フレイアさんやお母様以外にはいないと思いますよ? 私はこの国の嫌われ者なんですから」


 アリエッタは近くのテーブルに両手をつくと、「仕方ない。これは避けられない運命……」と独り言を言いながら項垂(うなだ)れた。しかし、次の瞬間、何かを思い付いたように私に鋭い目を向ける。


「ソフィア様! フレイア様に協力を仰ぐなら、一つ条件があります!」


「じょ……条件?」


 アリエッタの勢いに、私がたじろぐようにして一歩後ろに下がると、それに合わせてアリエッタが私に迫った。


「フレイア様に、必ず専属侍女を付けるように言ってください!」


「……そういえば、フレイアさんは専属侍女を解雇したと言ってましたね」


「そもそも、あんな我儘(わがまま)なフレイア様が、ソフィア様の侍女になるなんて絶対に無理なんです! 結局前回は、私が二人の対応をしてたじゃないですか! 私、二人のバカの面倒を同時に見ることなんてできません!」


 ……え、バカ?


 私は(まゆ)(ひそ)めると、軽くアリエッタを睨む。


「オホン……。最近のアリエッタさんは、感情的になると、王女に向かって遠慮がありませんね。少しは慎んだ方がいいですよ? 私じゃなかったら、どうなっていたことか」


 私の指摘に、アリエッタはさすがに言い過ぎたと思ったのか、頬を赤くして(うつむ)いた。


「私は、今のアリエッタさんの発言を絶対に認められません」


 私の珍しく強い言葉に、アリエッタが息を呑んだのが分かった。私はゆっくりとアリエッタに近付いて行き、その肩に手を乗せる。


「アリエッタさん……」


「はい……」


 …………。


 …………。


 …………。


「今の私の方が、フレイアさんよりもお利口です!」


「……これが、古代ニホンの書物にあるという『目くそ、鼻くそを笑う』の状況……」


 アリエッタは仏頂面(ぶっちょうづら)のまま、私を冷めた目でじっと見つめる。


「……でも、まあ確かに、今現在はソフィア様の専属侍女の方が幸せかもしれませんね」


「でしょ~っ!!」


 私が同意を求めると、アリエッタは少し笑みを浮かべつつ、諦めたように軽く溜息を吐いた。


「……まぁ、冗談はこれぐらいにしておきましょう。アリエッタさんの言う条件は分かりました。私も同意です。確かにフレイアさんは暴走すると怖いですしね」


 私はアリエッタに優しく微笑(ほほえ)みかける。


「それで、どうやってフレイアさんに連絡したら良いのでしょうか? 記憶喪失の私には、その辺りのことが全く分からなくて」


 私が苦笑いしながらアリエッタに問うと、アリエッタは普段通りのシャキッとした凛々しい姿勢に戻って、連絡手段を教えてくれた。


「いくつか方法はありますが、ソフィア様は王女ですから、私を通じてフレイア様にご連絡いただくのが良いです。私が、王宮に控えているレーゲンス家の連絡係に、ソフィア様の用件を伝えます」


 ──さすが王侯貴族の世界。人を使うことこそが、富と権力の象徴ということだね。


「ちなみに、他にはどんな方法が?」


「ソフィア様は魔法を使えなかったので無用の長物でしたが、親しい間柄ですと、『魔法札』という魔道具を二つに割って、事前に双方で所持しておく方法があります。魔法札に同時に魔力を送り込むと、その波動に合わせて音声を送受信できるんです。呼び出し時は、片方が魔力を送ることで、相手側の魔法札を光らせることができます」


 どうやら、この世界にも電話のようなものがあるらしい。ただ、この方式だと相手の数だけ魔法札が増えるため、かなり非効率ではある。また、呼び出し音が無く、光だけというのも少し利便性に欠けると感じた。


「とはいえ、殆どの人は使いません。魔法札は、相手が応答する・しないで頻繁にモメるんです。特に恋人同士だと、何をしていても応答を求められると聞いています」


 ──恋愛の大変さは、どこの世界も一緒だなぁ……。


 私はアリエッタの最後の説明には何も答えず、ただ苦笑した。


「それでは、アリエッタさん。連絡係を通じて、フレイアさんのご都合を訊いていただけますか?」


「分かりました。専属侍女の条件を満たすことができたら、フレイア様にこちらに来ていただくということでよろしいですか?」


「それで構いません。私には何の予定もないですしね。……超ヒマなんで」


 私は窓の外に寂しい視線を向けた。アリエッタはそんな私に笑みを見せると、部屋の出入口に向かう。そして、ドアノブに手を掛けて一旦立ち止まると、こちらを振り向いた。


「……ソフィア様。王妃主催のお茶会を甘く見ちゃいけませんよ。これから、とても多忙になります」


「えっ?」


「エリザベート様は本気です。王妃が全令嬢を招待するということは、ソフィア様の派閥を作るという宣言です。年頃の令嬢達は、ソフィア様についたらこの国で生き残れるのかどうかを家族で議論し、各家の運命を掛けて、何がなんでもお茶会に出席します。……たとえ、病気であってもです」


「そうなんですか?」


「……ソフィア様は何もご存じないのですね。まぁ、記憶喪失だから仕方ないんでしょうけど」


 アリエッタは(あき)れたような笑みを見せながら、説明を続ける。


「王妃主催のお茶会に欠席したり、有力な派閥の見定めに失敗した場合、令嬢達は婚約者から婚約破棄されます。ほとんどの場合は、没落決定です」


「……本当に?」


「はい……。この世界は非情なんですよ。平民の方が幸せだと思うぐらいに……。ちなみに、ソフィア様が婚約破棄されても許されていたのは、この国の王女だからです。普通の令嬢だったら、路頭に迷う寸前です」


 アリエッタは視線を私から外すと、ドアノブを持って苦笑しながら床を見つめる。


「私の家も、姉が失敗してしまって……」


 アリエッタはそこまで言うと、ハッとして顔を上げた。


「あっ! 今の話は忘れてください! それでは、行ってまいります!」


 アリエッタは、私から逃げるようにして部屋を飛び出していった──。


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