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「夢かなって異世界の王女様に転生しましたが……、この王女様、思ってたのと全然ちがう!」 ~廃嫡寸前のダメ王女に転生した私、魔法王国のキラキラ王女様を目指す~  作者: 白うさぎの子
第2章 「いきなりお茶会!?」王妃の無茶ぶり 編

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第20話 王妃様との面会……に至る道

 王妃との面会は、予約当日の夕方に行われることになった。


 私は魔法学園の制服姿で王妃の部屋の前に立つと、深呼吸をする。


 本当は貴族の正装(ダサダサ・リボン無しセーラー服)で王妃に会うべきなのだろうが、あの正装はどうにも慣れない。そのため、アリエッタとも相談……いや、私が一方的に土下座をして、私自身が「カワイイ~♡」と思うことができる魔法学園の制服で、王妃に面会することにした。


 私は王妃の部屋の扉を軽く二回ノックした後、謁見の間に入る時よりも緊張しながら、その扉のノブに手を掛けた。王族の部屋を訪問する場合、侍女や兵士ではなく、面会予約者本人が扉を開けるのが礼儀らしい。


「しっ……失礼いたしますっ!」


 私は覚悟を決めると、扉のノブを回しながら、一気にその扉を押し開ける。


 うぅっ……。


 …………。


 …………。


 ……んっ?


 扉を開けると、魔道具の明かりで照らされた小さな部屋の奥に、もう一枚、扉が見えた。


 ──二重扉……。前世でも、ビルの自動ドアは大抵二重扉だったし、この世界も断熱用に緩衝(かんしょう)エリアを設けてるのかな? ……まぁ、今の私の部屋には無いけどね。


 私は二枚目の扉の前に進む。


「失礼いたしますっ!」


 私は大きな声と共に、再び緊張しながら扉を開けた。


「…………」


 目の前には、今開けたものと同じデザインの扉がある。三枚目だ。後から付いてきたアリエッタを見ると、特に驚いた様子もなく、()ました表情で背後に立っていた。


「あはは、まさか……ですよね?」


 私は背後のアリエッタを振り返って、苦笑いしながら三枚目の扉のノブを持つと、今度は挨拶せずに扉を開けた。


「…………」


 四枚目の同じデザインの扉が現れたのを確認した後、私は部屋に入るのをやめ、今開けたばかりの扉を静かに閉める。


「……私、この世界の無限ループにハマったのかな? 実はここは乙女ゲーの世界で、特定の条件下で離脱できなくなるバグに遭遇してしまったとか……」(小声)


 私が顔を青くしながら「う~ん」と悩んでいると、アリエッタが背後から声を掛けてきた。


「ソフィア様、何をしているんですか? 早く残りの三枚の扉を開けないと、王妃様には会えませんよ」


「無限ループじゃなくて良かった!! ……っていうか、どうしてこんなに扉が!?」


 私がアリエッタに向かって叫ぶように尋ねると、「あぁ、記憶がないソフィア様にとっては、これは驚くべきことなんですね」と言って、状況を説明してくれた。


「これらの扉は魔法障壁なんです。侵入者から陛下と王妃様を守るため、国王夫妻の部屋にはそれぞれ、六枚の魔法障壁が設置されています」


「……魔法障壁?」


「はい。物理攻撃と魔法攻撃を弾く強力な壁です。六属性『地・水・火・風・闇・光』の魔法障壁があって、どの属性の攻撃を受けても、いずれかの障壁がその攻撃を弾くようにできています。王宮の他の重要な場所、例えば、図書室にも魔法障壁が設置されていますよ」


 ──あぁ、あれか~!


 私は、解錠の際に幻想的な光を放った図書室の壁面を思い出した。


「陛下と王妃様の部屋の魔法障壁は、面会予約者しか解除できません。ですから、私が代わりにこれらの扉を開けることはできませんので、ソフィア様自身で扉を開けていってください」


 私は「なるほど」と手をポンと打った。この仕組みがあるため、侍女や兵士ではなく、私自身で扉を開ける必要があるのだ。


 ──でも、そうだとすると、ソフィアの誕生日事件の際、ソフィアはどうやってここに入ったんだろう? アリエッタさんの話だと、王妃様が不在の部屋に忍び込んだみたいだし……。


「……それって、ここに忍び込む方法は無いってことですか?」


 すると、私の疑問に気付いたアリエッタが、苦笑いしながら答えた。


「以前は、もう少しセキュリティが甘かったんです。それが、ソフィア様のクソ……いえ、バカ行為で露呈しました。ですので、この先の魔法障壁が改良されていますよ」


「……お役に立てたようで光栄です」


 私は気を取り直して三枚目の扉を開くと、部屋に入って四枚目の扉を開く。すると、五枚目の扉が現れた。しかし、五枚目の扉にはドアノブが無く、代わりに扉の横に小窓が開いているのが見えた。


「ん?」


 私がそこを覗き込もうとすると、小窓の奥から「合言葉をお願いします」という女性の声が聞こえた。


「え? 合言葉?」


 私が首を(かし)げていると、アリエッタが前に進み出て、私の代わりに合言葉を伝えた。


「トウキョウ・トッキョ・キョカキョク!」


「まさかの早口言葉っ!!」


 私がアリエッタに突っ込みを入れるも、アリエッタはきょとんとした表情を浮かべた。


「え? 『早口言葉』って何でしょうか? この言葉は古代ニホン語ですよ」


「……日本語?」


「高名な学者によって解読された、古代ニホンの書物に書かれている言葉です。古代ニホン語は普通の人には読めないですし、発音が難しいですから、セキュリティを重視する王宮の各所で、侍女間の合言葉として使われているんです」


 ──ふむ……。まぁ、それは、意図的に発音を難しくしてる言葉遊びなんだけどね。


 私は顎に手を当てると、アリエッタを上目遣いで見つめながら、ニヤリと笑みを浮かべた。


「……アリエッタさん」


「はい」


「にゃまむぎ……」


「…………」


「なまむぎ、にゃまごめ……」


「…………」


「なまみゅぎ、にゃまごめ、にゃまっ……!!」


「……もしかして、生麦(なまむぎ)生米(なまごめ)生卵(なまたまご)って言いたいんですか?」


「そう、それっ!! アリエッタさん、早口言葉うまい!!」


「……というか、ソフィア様はどうして、侍女しか知らない最難関の合言葉を知っているんですか?」


 ──あ、しまった。調子に乗ってしまった……。


「……え~っと、魔法の勉強をしてる時に図書室の本で見たような見ないような……。あそこには、古代ニホンの書物がいっぱいありますしね!」


「そうですか。でも、ソフィア様には古代ニホン語は読めないと思うんですが……」


 私の背中を冷や汗が流れる。


「いや、その……、フレイアさんの話だと、昔の私は古代ニホンの知識が豊富だったみたいですし! もしかしたら、本じゃなくて断片的に思い出した言葉なのかも!」


 すると、小窓から侍女が顔を覗かせて、(あき)れた様子で声を掛けてきた。


「あの~、盛り上がってるところ恐縮ですが、中に入らないんですか? もう魔法障壁は解除してありますので、扉を押してもらえば開くようになっています。お入りにならないなら、再度障壁を設置しますが……」


「「……あっ、ごめんなさい」」


 私とアリエッタは赤面して俯きながら、トボトボと五枚目の扉を押して部屋の中に入った。


「……え?」


 部屋の中では、二人の侍女が防御魔法らしきものを前面に展開していた。そして、その後方にいる一人の中年侍女が、私に向かって光の弓を引いている。


「……あの、何をされているんですか?」


「私達がエリザベート様を守ります!! ソフィア様の悪事はもう許しません!! これ以上、エリザベート様を悲しませないでください!!」


「いやいや、私、王妃様に何かするつもりはありませんよ!?」


 私が変なことをする意思が無いことを説明するも、侍女達は納得しなかった。


「今すぐ手を上げて下さい!! そして、その上げた両手を、十秒以内に近くの壁に置いて!! こちらには絶対に近寄らないで!!」


「……私の話、聞いてます?」


「十、九、八……」


 私が慌ててアリエッタの方を振り返ると、アリエッタは侍女の言葉に従って壁を向き、両手を上げて壁に当てていた。そして、私に向かって叫ぶ。


「ソフィア様も早く!! 彼女達に従わないと撃たれますよ!!」


 私が侍女達を見ると、弓矢担当の侍女が矢をさらに引いて、弓をしならせた。本気で私を狙っている。


「はぁっ!? うそでしょ!? 私、この国の王女ですよ!?」


 私も慌てて両手を上げてアリエッタの隣に移動すると、同じように壁に手を置いた。すると、隣のアリエッタが私を責めるような目を向ける。


「これは、今までソフィア様がしてきたことが原因なんですから、文句を言わずに我慢して下さい」


 防御魔法を解いた侍女二人が、私とアリエッタに近付いてボディ・チェックを始めた。女性相手であるため特に恥ずかしさはないが、両手を上げてボディ・チェックされる(さま)は、まるでハリウッド映画に出てくる犯罪者のような扱いだ。


 「ちょっと、セクハラじゃないの?」と思われるぐらいのボディ・チェックを受けた後、私とアリエッタは解放される。弓矢を構えていた侍女も、その手を下ろして、光の弓矢を散開させた。


「……驚きました。王女でも、随分念入りにボディ・チェックされるんですね」


 私の言葉に、リーダー格の侍女と思われる女性が怪訝な表情を浮かべた。


「……あの、大変失礼ですが、ソフィア王女殿下ですよね? 話し方がいつもと違うようですが……」


 侍女達の様子を見て、アリエッタがリーダー格の侍女に近付き、私が過去の記憶を全て失っていることを伝えた。すると、その話を聞いていた侍女達が全員、目を丸くして私を見つめた。


「確かに以前よりもバカっぽくない……、いや、バカっぽさは変わらないかも?」


「ちょっと、そこ! なんか失礼なこと言ってますね!?」


 私が侍女達を指差しながら(わめ)くも、リーダー格の侍女がポツリと呟く。


「なるほど……。これは大きなチャンスかもしれません」


 ……ん? チャンス?


「これを機に、ソフィア様を教育し直しましょう! マナーを一から叩き込んで、王宮での勉強には家庭教師を付け、この国のために、二度と変な真似をすることが無いようにいたしましょう! 早速明日から、一日中休みなく、ソフィア様の再教育を……」


 …………。


 ……ぐすん。


 ……そう言われるのは仕方ないと思ってるけど……。


 …………。


 ……でも、少しぐらい遊ばせて。


 ……昨日、魔法披露を終えたばかりだし、王宮探検とか、庭園の散歩とかしたいんです!


 私が手を祈るように組んで、ウルウルした目でアリエッタを見ると、アリエッタは大きな溜息を()きながら私をフォローしてくれた。


「……それらの申し出は大変有難いのですが、ソフィア様の教育プランは私が考えますので、私にお任せください」


「しかし、いつものソフィア様に戻られては困るので……」


 リーダー格の侍女が渋る様子を見せると、アリエッタはその言葉を(さえぎ)るように話す。


「私がソフィア様の専属侍女ですので、教育プラン作成は私の専権事項ですよね?」


 アリエッタがバシッと言い切ると、リーダー格の侍女は何も言えなくなった。


 ──アリエッタさん、カッコいい!! 大好きっ!!


 私が頬を赤くしてアリエッタの毅然とした態度に感激していると、アリエッタも頬を赤くして、「オホン!」と軽く咳払いする。そして、アリエッタは上品に部屋の奥の扉を指し示した。


「それでは、ソフィア様。そろそろ行きましょう。これが最後の扉です」


 最後の扉だけはデザインが豪華だ。私は緊張しつつ、扉を二回ノックする。


「……はい。どうぞ」


 部屋の中から、とてもか弱くて可愛い声が聞こえた。その声は子供のように繊細で、もしかすると、声音(こわね)はソフィアよりも若く聞こえるかもしれない。


 私がドアノブに手を当てると、部屋の壁面が虹色に光って、魔法障壁が解除される。


 いよいよだ!


「ソフィア、ただいま参りました! 失礼いたしますっ!」


 私はドアノブを回すと、一気に押し開けて部屋の中に入った──。


盛り上がる場面がなくて申し訳ありません!

でも、本作はこういう作風ですので、ご容赦ください!

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