第18話 伝説の王女スキル?
フレイアはすっかり落ち着きを取り戻したようだ。
アニメの美少女キャラのようにニコニコとしながら、目の前のお茶菓子をパクパクと食べている。謁見の間で、周囲の視線を気にせず取り乱していたのが嘘のようだ。フレイア本人が自覚している通り、彼女の感情の起伏が激しいのは本当らしい。
それにしても……。
「アリエッタ。他に美味しいお茶菓子はないのですか? もっと沢山のおかわりをお願いします」
「えぇっ!? またおかわりですかっ!?」
「……何か文句でもあるのですか?」
「いっ……いえっ!! 今すぐ厨房に確認しに行ってきます!!」
アリエッタが扉へ向かおうとすると、フレイアが彼女を呼び止めるように手を上げた。
「アリエッタ! ちょっと待ちなさい! お茶菓子に加えて、新しいお茶も用意しなさい。もちろんソフィア様の分もですよ」
「はいっ!! すぐに用意いたしますっ!!」
アリエッタがフレイアの要求を次々に受けて、慌てて部屋を出ていく。
──フレイアさんって、大人しそうな見た目と違って、結構我儘な貴族なのかな? ……まぁ、前世の日本にも、こういう我儘な成金お嬢様はいたと思うから、上位の貴族なら当然なのかもしれないけど……。
そんな事を考えながら私がフレイアを見ていると、フレイアはお茶菓子を摘まみながら、私にニコッと笑顔を返してきた。その表情は、まさしく「輝く花」だ。
──カワイイ~! 極上の可愛さ! フレイアさんは我儘かもしれないけど、こんなに可愛い子、前世で見たことがない。きっと、前世の遺伝子ではこの可愛さは実現できないんだろうな。これだけでも、異世界に来れて良かった~。
私は目の下にクマを作りながら、フレイアに軽く微笑んだ。
◇ ◇ ◇
私とフレイアが、それぞれの婚約破棄の話を終えてから、既に一時間半が経過していた。
フレイアはすっかりご機嫌になり、この一時間半で、魔法学園での私の様子を色々と教えてくれた。もちろん、転生前の過去のソフィアの様子についてだ。
フレイアの話を聞く限り、ソフィアはフレイアの前では姉のような振舞いをしていたようだ。随分とフレイアを可愛がっていたようで、愛を育みながら(?)、フレイアの悩みに真剣に対応していたのが良く分かった。異端王女ソフィアの意外な一面を知ることができた。
しかし、過去のソフィアの様子に興味はあるものの、私は疲労のために強い眠気に襲われていた。まともにフレイアの話を聞けず、内容が半分ぐらいしか頭に入ってこない。
「……あの、フレイアさん? 今日はそろそろお開きにしませんか? たくさんお話したことで、お互いのすれ違いの原因はもう十分に理解できたことですし……」
私の言葉に、フレイアはハッとしたような表情を浮かべると、ションボリと項垂れる。
「……ソフィア様は、私と一緒にいるのが退屈なのでしょうか?」
「いっ……いえっ、そんなことはありませんよ!! でも、今日、私は魔法披露でたくさん緊張したので、身体が疲れてしまって……。お話はまた今度、ゆっくりと聞かせていただけませんか?」
私は懇願するように、フレイアの瞳を見つめた。
すると、フレイアは急に席を立って、私の隣にやってきた。そして、頬を赤くして恥じらいながら、私の手を取ると、その手をグイっと引っ張る。
「……あの、フレイアさん? どうしました?」
「ソフィア様のおっしゃることは分かりました。確かにお疲れのご様子ですね。……でも、今なら二人だけです。少しだけベッドに移動しませんか? お疲れのソフィア様を、私が気持ち良くしながら癒して差し上げます」
「へっ!?」
──そうか!! アリエッタさんに無茶苦茶な要求をしてたのは、フレイアさんの我儘じゃなくて、そういうことだったんだ!! 二人きりの時間を作るためだ!! マズイ!! 私、襲われるっ!! フレイアさんと二人きりになったのは迂闊だった!!
私は慌てて適当な理由を口にして、フレイアの誘いを断ろうと試みる。
「そっ……そのっ、真昼間からそういうことをするのはどうかな~と思います! 私達二人が一緒にベッドにいると、お天道様も恥ずかしいんじゃないですかね~?」
私が口にした無茶苦茶な理由に、フレイアはきょとんとした表情を浮かべた。
「ソフィア様の記憶には無いのかもしれませんが、魔法学園で二人きりの時は、いつも日中でしたよ? 恥ずかしがる必要はないです」
──そうか! 私達は白昼堂々、魔法学園の王族用控室でイチャイチャしてたんだった!!
「さぁ、早く行きましょうよ~♡」
フレイアは、今度は私の腕を持ってグイグイと引っ張る。私はそれに抵抗できずに、椅子から無理やり引き剥がされるように立ち上がった。
──ヤバい!! 貞操の危機だ!! 私、どうしたらいいのっ!? ……あっ、そうだ、こういう時の常套句があった!! 困ったらコレ!! 授業や会社の会議から逃げ出す時もコレだった!!
「わっ……私、おトイレに行きたいですっ!! お茶が効いてきたみたいで、お腹が痛くなってきました!! 漏れそう!! すみませんが、手を放して下さいっ!!」
私の言葉に、フレイアは手の力を緩めると、残念そうに眉尻を下げる。
「そうですか。仕方ないですね……。じゃあ、私、ベッドに先に移動して、ソフィア様のお帰りをお待ちしていますね。早く済ませてきてくださいね」
フレイアはそう言うと、私の手を放して一人でベッドに移動していく。私はフレイアと反対方向に向かうと、壁にある隠し扉を開けて、さらにその中にあるトイレに籠った。
──アリエッタさんっ!! 早く帰ってきてっ!! 私、超ピンチですっ!!
私は便座に座りながら、手を祈るように組んでアリエッタの帰りを待つが、あれだけの要求を受けたアリエッタがそんなに早く帰ってくるわけがない。
…………。
…………。
…………。
…………まぁ、フレイアさんの誘いを断れなかった時のために、一応、用を足して綺麗にしておこうっと……。
ドンドンッ!! ドンドンッ!! ドンドンッ!!
「ひゃあぁぁ~っ!!」
私がトイレで用を足していると、突然、扉を激しく叩く音がする。あまりの驚きに、私は思わず、間抜けな悲鳴を上げてしまった。
「ソフィア様? 早く出てきてください。アリエッタが戻ってきてしまいます」
──いや、私は、そのアリエッタさんが早く戻ってくるのを待ってるんですけど……。
「……ん? 何も音がしませんけど、本当に用を足してるんですか? う~ん、おかしいですね……」
その言葉と共に、正面の扉にフレイアが耳を当てて、必死に身体をくっ付けているようなガサゴソという音がする。
──フレイアさん、下品っ!! そんなにまでして、私の排泄音を確認しないでっ!!
私は便座に座りながら、正面の扉の向こう側にいるフレイアに叫ぶ。
「ちゃんと用を足してますよっ!! フレイアさん、レディにそういうことを訊くのは失礼ですっ!! 恥ずかしくないんですかっ!?」
すると、フレイアが反論する声が聞こえた。
「……ソフィア様。ご記憶が無いようですので教えて差し上げます。ソフィア様は、私が魔法学園の上級貴族用のトイレに入っていると、いつもこうやって、私を呼び出しにいらっしゃっていました」
「…………へ?」
「私は最初、恥ずかしくて顔から火が出そうでしたけど、ソフィア様は『古代ニホンでは、『出物腫れ物、所構わず』と言うんだよ。だから、フレイアが今、何を出していても気にしないで』とおっしゃっていました。私は、ソフィア様のその博識ぶりに、用を足しながら感動したものです」
……え? 用を足しながら?
「さぁ、ソフィア様! 私の前で、思いっきり用を足してください!」
…………。
……じゃあ、遠慮なく……。
…………。
……って、恥ずかしくて、できるわけないでしょっ!!
私は過去のソフィアの所業に溜息を吐きつつ、諦めてトイレから出ることにした。ウォシュレットのような魔道具や乾燥用の魔道具を使い、支度を整えて便座から立ち上がる。
ガチャ……。
私が扉を開けると、フレイアが即座に近付いてきて、私の手をギュッと握った。
「やった! ソフィア様が出てきました! 早くベッドに行きましょう!」
フレイアは嬉しそうな顔をして、私の手をグイグイ引っ張っていく。私はフレイアに手を引かれるまま、隠し扉を出てベッドに向かった。
フレイアはベッドに着くと、私にベッドの端に座るように言う。私がそれに従ってベッドの端に座ると、フレイアが私にくっつくようにして隣に座った。
「今日はソフィア様が記憶を早く取り戻せるように、私からソフィア様にたくさんシテあげますね♡」
私が顔を引きつらせながら微笑むと、フレイアはニッコリと満面の笑みを見せた。
私はそんなフレイアを上目遣いで見て、弱々しい声でお願いをする。
「……フレイアさん。優しくお願いしますね。痛いのはイヤなので……」
すると、フレイアは頬を紅潮させながら、私に笑顔を向ける。
「もちろんですよ! 私、精一杯優しくします。ソフィア様を気持ち良くするのが、私の今日の仕事ですから!」
──うぅっ、前世の記憶があるとはいえ、転生してからの初めては緊張する……。前世の最後の経験から何十年も経ってるし、恥ずかしいし、ドキドキするし、相手がまさかの女の子だし……。
私がベッドの端にちょこんと腰掛けながら、頬を赤くしてフレイアに唇を差し出していると、フレイアが私から少し距離を取った。
──え?
フレイアはベッドの端に腰掛けながら、自分の太腿をパンパンと叩く。
「さぁ! ソフィア様の頭をこちらへ! 今日は存分に甘えてくれていいいですよ! 私がいっぱい愛して差し上げます! 恥ずかしいですけど、ソフィア様の頭をたくさんナデナデしてあげますからね!」
…………。
…………。
…………なんだ、ただの膝枕か。
…………。
…………。。
…………この、大きな期待を裏切られたような寂しい気持ちは、一体なにっ!?
「どうしたんですか、ソフィア様? 急に元気がなくなったように見えますけれども?」
私はフレイアの呼び掛けで正気を取り戻すと、顔を真っ赤にしながらフレイアに笑顔を向けた。
「あっ! ごめんなさい! じゃあ、私、いっぱいフレイアさんに甘えちゃいますねっ!」
「はいっ! いいですよ! さぁ、二人の愛を確認し合いましょう!」
私は顔を赤くしたまま、頭をフレイアの太腿の上に預ける。まだまだ子供っぽいフレイアの太腿は、正直なところ、硬くてあまり心地良くはなかったが、頭を優しく撫でてくれるフレイアの手はとても気持ちが良かった。
──心が落ち着く……。まだまだ子供のフレイアさんだけど、私にとって安らぎのひとときかもしれない。そういえば、こうして私を受け入れてくれるのは、アリエッタさんやオリバー先生に次いで、フレイアさんが三人目だから、この関係を大切にしたいな……。
私はフレイアの太腿の上で頭の位置を調整すると、頭を撫でられながら、猫のように目を閉じる。
──転生してからまだ一週間なのに、この短い間に色々あったなぁ……。なんだか涙が出そう……。
「フレイアさん……」
「はい。なんでしょう?」
「フレイアさんの膝枕、とっても気持ちがいいです。ありがとうございます」
「……私と過ごした甘い時間、思い出していただけましたでしょうか?」
「ごめんなさい……。多分、この先も、過去のフレイアさんとの事を思い出すことはないと思います」
「……そうですか……」
フレイアの落胆する声と共に、私を撫でる手の速度が少し遅くなる。
私は目を開いて、真上のフレイアの顔を見るために頭の向きを変えると、ニッコリと微笑んだ。
「でも、また今度、一緒に膝枕をし合いましょうね。次回は私が、フレイアさんの頭を撫でてあげますよ」
「本当ですか!? 嬉しいですっ!!」
「ふふっ、フレイアさんは本当に可愛いですね」
私は膝枕をされたまま、自分の頭を撫でているフレイアの手を持って、満面の笑みを浮かべる。すると、フレイアはそんな私を見て、寂し気な笑顔を見せた。もう記憶が戻らない私に、どこか落胆しているのかもしれない。
バンッッ!!
涙目のフレイアと見つめ合っていると、突然部屋の扉が開いた。
「お待たせしましたっ!! お茶とお茶菓子をたくさんお持ちしましたっ!!」
私が驚いて、開いた扉に目を向けると、部屋に入って来たアリエッタと視線が合う。
「…………」
「…………」
「…………」(なでなで)
「…………」
「…………」
「…………」(なでなで)
「……私がちょっと目を離したすきに、どうして二人はイチャイチャしてるんですか?」
私は慌てて上半身を起こした。
「いやっ、これはイチャイチャじゃなくて、えっと、その……」
──「フレイアさんに誘われたから」って言うべきだろうか? でも、それだと、フレイアさんを悪者にするみたいだし、私もホイホイ誘いに乗っちゃう尻軽王女だと思われちゃうし……。
私が状況をどう説明すべきかを悩んで言葉に詰まっていると、フレイアが口を開いた。
「アリエッタ。あなたにはもう隠す必要はないと思いますが、私とソフィア様は『深い愛』で結ばれた関係なのです。この行為は私からお誘いしました。私とソフィア様が、秘かにこのような破廉恥な行為をしていることは、絶対に他言無用でお願いしますよ」
フレイアがアリエッタにドヤ顔で説明する。すると、アリエッタは軽く溜息を吐いた。
「……まぁ、それぐらいでしたら、問題無いです。私は誰にも言いませんし、咎めたりもいたしません。ですから、好きなだけイチャイチャしてください」
その言葉に、私はアリエッタに笑顔を向ける。
「さすがアリエッタさん! 心が広いっ!!」
「……いえ、別にそこまで言われることではありませんし、実際のところ、そんなに破廉恥ではないと思いますよ」
「まぁ、確かにそうですよね~。アリエッタさんと一緒に寝た時の方が、よっぽどエロかったですもんね」
「…………ぇ?」
私は口を滑らせた。それも、言っちゃいけない人の前で……。
ガシッ!!
隣のフレイアが、私の右腕を強く鷲掴みした。
私は顔を青くして、ギギギと音がするように首を回しながら、隣のフレイアに視線を向ける。すると、フレイアが可愛い顔を崩して眉間に皺を寄せ、ゾンビが獲物を襲うような表情で私を見ていた。
「ひぃぃいぃ~っ!!」
「……ソフィア様。どういうことですか? 『アリエッタと寝た』って何ですか?」
「いやっ、その、それは魔法の勉強の一環で……」
「は? どうして魔法の勉強で、アリエッタと一緒に寝るんですか? ……さては、別の勉強をしていたんですね? ……そういえば、ソフィア様はあんなにアリエッタに憎まれていたのに、今は随分と仲が良さそうですもんね?」
フレイアが私を睨む眼光がとてつもなく鋭い……。
私が涙目でアリエッタに助けを求めると、「自業自得」と言わんばかりに、アリエッタは即座に私から視線を逸らした。
私はフレイアに視線を戻すと、少し声を震わせながら、魔法の勉強との関係を説明した。
「まっ……魔法補助ですっ!! 私が魔法を使えなかったのは、体内の魔力が淀んでいたのが原因だったんです!! だから、夜寝る時に、アリエッタさんに『魔法補助』をしてもらって、魔力の流れを整えたんです!!」
フレイアは、私の言葉に怪訝な表情をしつつも、納得したように元の可愛い顔に戻る。
「なるほど……。ソフィア様が急に魔法を使えるようになったのは、それが理由だったんですか。でも、魔法補助でしたら、私に言って下されば、すぐにここに駆け付けましたのに……」
フレイアは悔し気な表情を浮かべながら、私に訴えるように言う。
──そう言われても、私は先週転生してきたばかりで、フレイアさんのことは全く知らなかったし……。
私がどう答えたら良いか悩んでいると、フレイアは私の手を取った。そして、すぐに自分の指を絡めて、ギュッと恋人繋ぎをする。すると、急に私の体内に魔力が流れ込んできた。
「ちょ……ちょっと、フレイアさんっ!? 何をするんですかっ!?」
「アリエッタだけズルイです!! 私だって、ソフィア様の魔力を整えられるんですからっ!!」
すると、アリエッタが慌ててフレイアに近付いてきた。そして、フレイアが私と繋いでいる手を両手で持って、必死に引き離そうとする。
「フレイア様っ!! ダメです!! ソフィア様の魔力を吸い込んじゃダメですっ!!」
アリエッタの叫びも空しく、私の体内をフレイアの魔力が駆け巡った後、掃除機に吸い込まれるようにして、私の魔力の一部が一気にフレイアに流れ込んだ。
「あぁぁんっ!!」
…………。
…………。
…………。
……あれ? なんだか、ちょっとエッチな感じのフレイアさんの叫び……。
フレイアは大きく開いた目を天井に向けると、頬を赤くして涙を浮かべる。そして、幸せそうな顔をしながら、ベッドに背中からパタンと倒れ込んだ。
「……フレイアさん? 大丈夫ですか?」
私が隣に倒れているフレイアの顔を覗き込んでいると、アリエッタが私の腕をグイッと引っ張る。
「ソフィア様っ!! フレイア様に襲われたくなければ、今すぐトイレに逃げてくださいっ!! あとは、私がなんとかしますので!!」
「えっ?」
隣のフレイアに再度視線を向けると、フレイアは放心状態で寝転んだまま、小声で何かを呟いている。
「……はぁぁ、気持ちいいぃ。こんな快感、初めて……」(小声)
すると、アリエッタが私の腕を持つ手に力を入れた。
「ソフィア様っ!! 早くっ!!」
私はアリエッタに促されるまま、ベッドから立ち上がってトイレに向かった。その途中、背後からフレイアの声が聞こえてくる。
「……ソフィア様、行かないで。ソフィア様がもっと欲しい……」
私がその声に思わず振り返ると、フレイアが上半身を起こして、トロンとした表情で微笑みながら、私をじっと見ていた。
しかし、その視線がとてつもなく妖艶だ。子供とは思えず、大人の女性の雰囲気を出している。
その顔を簡単に表現すると、
…………、
…………、
とてつもなくエロい顔だっ!!
「……ソフィア様ぁ。好き、好き、大好きですぅ。心から愛してますぅ……。今すぐ一緒に寝ましょうよぉ。私の奥まで魔力をいっぱい入れて、もっともっと気持ち良くしてくださいよぉ……」
「へ?」
すると、アリエッタが叫ぶ。
「ソフィア様っ!! 足を止めてないで、早く逃げて下さいっ!! ソフィア様の魔力は媚薬なんです! 凄まじい催淫作用があって、私もあやうく……」
アリエッタはそこまで言うと、口ごもって頬を赤くする。
「とっ……とにかく!! この様子だと、フレイア様は我慢できない人ですから、絶対にトイレの扉を開けてはダメですからねっ!!」
「はっ、はいっ!!」
私が駆け足で隠し扉に向かう後方で、アリエッタがソフィアの身体をベッドに押さえ込む。そして、早口で魔法を詠唱する声が聞こえた。
私が魔法の勉強を通じて得た知識からすると、どうやらアリエッタは催眠作用のある魔法をフレイアに掛けるつもりのようだ。眠らせて、フレイアの動きを止める気なのだろう。
それにしても、私はなんという魔力を保持しているのだろう。アリエッタの話し方だと、アリエッタも、私の魔力が持つ催淫作用の影響を受けたようだった。アリエッタの自制心が弱ければ、私はアリエッタに襲われていたかもしれない……。
私は隠し扉の中に入ると、両方の手の平を広げて、まじまじと見つめる。
……あぁ、私はなんて罪作りなんだろう。もしかしたら、私は、美少女を惑わす催淫魔力を持つ伝説の王女なのかもしれない……。
…………。
…………。
……って、私は、ゆりゆりサキュバス王女に転生したかったわけじゃないよっ!! こんな魔力、何の役に立つの!? これが私の異世界チートスキルじゃないよね!?
私がキラキラ王女様へ至る道は、まだまだ果てしなく遠いようだ──。




