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「夢かなって異世界の王女様に転生しましたが……、この王女様、思ってたのと全然ちがう!」 ~廃嫡寸前のダメ王女に転生した私、魔法王国のキラキラ王女様を目指す~  作者: 白うさぎの子
第1章 「いきなり廃嫡宣告!?」陛下の無茶ぶり 編

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第13話 特別学級

「は~い、ソフィアちゃん。今日は先生と何して遊ぼうかなぁ~?」


「…………」


 私の目の前には、長い(ひげ)をはやした気の良さそうな老爺(ろうや)が、ボールを持って立っている。メガネを掛けて、小さめの帽子を頭に乗せるようにかぶるその雰囲気は、前世の超有名な映画に出てきた老齢な魔法使いそのものだ。


 アリエッタが気まずそうにしながら、固まったままの私に近付いて、小声で話し掛けた。


「……このお方が、ソフィア様担当のオリバー先生、オリバー・ベンジャミン・グロスター伯爵様です」(小声)


 私はその説明を受けたところで、何を話したら良いのか分からない。フレイアと同様、初見ではないと考えられるため、挨拶から始めるわけにもいかなかった。


 私が言葉に詰まっていると、アリエッタがさらに声を潜めて説明を付け加えた。


「……えっと、オリバー先生はですね、……この魔法学園の校長先生です」(小声)


 …………。


 …………。。


 …………。。。


 …………はぁ!?


 私がオリバーを二度見すると、オリバーはなぜか、ボールを持っていない方の手で私にピースサインを返した。なんとなく、あの超有名なアニメの仙人にも雰囲気が似ている……。


 ちなみに、私達がいる部屋は講堂のように広く、机や椅子は無い。オリバーとアリエッタ、私の三人しかおらず、確かにボール遊びができる広さはあった。


「ん? どうしたんじゃ? そういえば、今日はソフィアちゃんの雰囲気が違うのぉ?」


「え~っと……」


 私はチラリとアリエッタを見る。すると、あからさまに視線を外された。


 しかし、私がそれでも諦めずにアリエッタの(そで)を引っ張ると、アリエッタは私の方を向いて、軽くお辞儀をする。


「……ソフィア様。それでは、私はこれで失礼します。授業が終わるころに迎えにまいります。楽しい授業時間をお過ごしください」


「まっ、待って!! アリエッタさん!! 私を置いて行かないで!! 『授業』が始まる気がしない!!」


 私がウルウルとした涙目で、今度はアリエッタの腕を掴むと、アリエッタは「はぁ」と大きな溜息を()いた。


「……ソフィア様の気持ちは分からなくもないですが、本来、侍女は魔法学園の授業に同席するものではないのです。私はとっくにここを卒業していますし……。今日はソフィア様の事情を考慮して、特別にご案内しただけですよ」


「お願いしますっ! 私を見捨てないで! 部屋に戻ったら、全身をマッサージしますから! 王女マッサージですよ! とても貴重ですよ!」


 私がアリエッタを逃がさないように、その腰にガッチリとしがみ付いていると、アリエッタは部屋の外に出るのを諦め、オリバーの方を向いて説明を始めた。


「オリバー先生。今のソフィア様は、少し前までのソフィア様ではありません」


「……ほぅ?」


「今のソフィア様は魔法の勉強に目覚め、やる気に満ち(あふ)れ、朝から晩まで寝る間を惜しんで、とにかく魔法の勉強を求めていらっしゃるのですっ!!」


 ……えっと、すみません。そこまでではありませんけど?


「おぉっ、ソフィアちゃん……いや、ソフィア様がついに魔法に関心を持たれたのか! この機を逃してはならんな!」


 オリバーがそう言ってボールを軽く空中に投げると、煙になるようにボールが消えた。


「うわっ、すごい!」


 オリバーは私の反応を見て、「確かに魔法に興味をお持ちのようで」と言いながらニコニコと笑う。そして、その右手を軽く振ると、魔法の杖がパッと手の中に現れた。


 ──この人、変な人だけど、偉い魔法使いなのでは!? 魔法の杖なんて初めて見た!


 オリバーが杖を一振りすると、それまで何も無かった部屋に数十の机と椅子、そして、前方には黒板が現れる。あっと言う間に、部屋が前世でも見慣れた講堂に変わった。


「すごい! すごいっ! すごい~っ!!」


 私が子供のようにピョンピョンと跳ねながら、両手を祈るように組んで、オリバーの魔法に心から感動の声を上げると、オリバーは気を良くしてエヘヘと笑った。


「ソフィア様もたくさん魔法の勉強をすれば、こんなことはたやすく出来るようになりますぞ」


 オリバーのその言葉に私は真顔に戻ると、少し視線を下げた。


「……それがですね、ここ数日、たくさん魔法の勉強をしているのですが、全く魔法を使えないのです」


 私はションボリと(うつむ)く。すると、オリバーが私のことを気遣うようにしながら声を掛けた。


「ソフィア様。そんなに容易(たやす)く魔法を使えるようにはなりませぬから、ご安心を。……とはいえ、『全く使えない』と言うと、どの程度使えないのですかな?」


「何百回、魔法を練習しても、初級魔法の『ライト』すら使えないのです」


「ほぅ……」


 オリバーは長い髭を撫でるようにする。


「アリエッタさんに、寝る時に『魔法補助』を二度してもらっても……ふぐっ!」


「ソフィア様っ! それを言っちゃダメですよっ!!」


 アリエッタは真っ赤な顔をして、慌てて私の口を押さえた。


「ソフィア様は知らないかもしれませんが、『魔法補助』は親しい間柄(あいだがら)でしかしないことなんです!」


 ……え?


「言いましたよね!? 親子とか、夫婦とか、…………恋人とか」(小声)


 アリエッタは小声で私にそう伝えると、私の口を押さえていた手を放して、赤面して俯いてしまった。


「まぁまぁ、二人とも。わしは王女と侍女が禁断の関係にあっても、決して他言したり邪魔したりはせぬから安心しなされ。主人と侍女がイケナイ関係になるのは良くあることじゃからな」


「イケナイ関係じゃないですよっ!!」


 アリエッタが赤面したまま大声で叫ぶと、オリバーは胸の前に両手を小さく万歳するようにする。


「とりあえず、椅子に座って、落ち着いて話してはどうですかの? もう少し、ソフィア様のお話を聞かせていただきたい。お茶も、お茶菓子もお出ししますので」


 オリバーが再び魔法の杖を一振りする。すると、学生の机がいくつか合体して輝き、一つの大きなテーブルになった。そして、テーブルの上に紅茶カップ三客と、お茶菓子がパッと現れる。


 ──この人、全然校長先生らしくないけど、魔法の腕が凄すぎる……。


 オリバーは紅茶ポットを持つと、カップにお茶を注ぎ始めた。


「さぁさぁ、アリエッタ嬢もそこに座りなさい」


「……えっ? 私もお茶を頂いて良いのでしょうか?」


 アリエッタはそう言いながら私をチラリと見る。


「アリエッタさん。気にしなくても良いですよ。一緒にお茶をご馳走になりましょう」


「でも……」


「アリエッタさん。これは王女の命令です。……これで、私と一緒にお茶を飲めますか?」


 私の言葉に、アリエッタはニッコリと笑みを見せた。そして、私の椅子を引いて私を着席させると、空いた座席に移動して自分も着席した。


「ソフィア様。では、聞かせて頂けますかな?」


 私は軽く(うなず)くと、まず目の前のお茶菓子を口に入れる。


 ──わぁっ! 美味しいぃ!!


 私の食事は野菜食ばかりだったため、その美味しさが身体に染み渡った。私はいくつもお茶菓子を口に入れた後、転生してからの顛末を説明するために口を開いた。


「……えっと、ソフィア様。ちゃんとお茶菓子を飲み込んでから、口を開いてください。何を話しているか分かりません」


「ふぇ? しゅみみゃせん。ちゅい」(え? すみません。つい)


 私はお茶菓子をゴクリと飲み込むと、改めて初めから説明し直した。


 「三日後の国王陛下への魔法披露に失敗すると廃嫡になること」、「ここ数日、そのための魔法の練習に明け暮れていること」、そして、「記憶喪失で、ほぼ全てを忘れてしまっていること」をオリバーに伝えた。途中、アリエッタも私の説明に補足を加えてくれた。


「……なるほど。それで、ソフィア様がこんな真人間(まにんげん)になってしまわれたのか……」


 オリバーはそう言いながら、椅子にもたれて天井を見上げる。


「……もうお転婆(てんば)なソフィアちゃんには会えないのじゃな。寂しいのぉ……」(小声)


「「えっ!?」」


 オリバーの(つぶや)きに私とアリエッタが同時に驚きの声を上げると、オリバーは慌てて手を振った。


「冗談じゃ、冗談!」


 ──いや、今の表情はかなり本気で寂しそうでしたけど……。


「オホン! とにかく、事情は分かりましたぞ。わしも協力したい……と言いたいところですが、正直なところ、そこまでの練習と魔法補助がありながら、ソフィア様が魔法を使えない理由が分かりませぬな」


 それを聞いて、私は目の前の紅茶に視線を落として、再びションボリとする。


「そうですか……」


「ただ、少しソフィア様の身体を診断させて頂いてもよろしいですかな? ソフィア様は、何かしら、魔力系の病気の可能性がありますので」


「えっ!?」


 オリバーのその言葉に、私は目を少し見開いてオリバーを見た。


「心配しなくても大丈夫ですぞ。魔力系の病気で死ぬことはほとんどありません」


 オリバーはニッコリと微笑(ほほえ)むと、言葉を続けた。


「たまに精神病になってしまう者がおりますが、それも大抵は頭がパーになるだけです。一日中窓の外を見ていたりするだけで、人に危害を加えるようになったりはしません」


 ……いやいやいや! その病気、めちゃくちゃ心配なんですけど!


 オリバーは椅子を引っ張って、私のすぐ隣に移動して着席すると、私の左手を持った。


「うーむ……」


 ……なでなで。


 …………なでなで。


 ………………なでなで。


「……うむ。ソフィア様のお肌は、スベスベですな」


 パッシーンッ!!!!


 いつの間にかオリバーの背後に移動していたアリエッタが、オリバーの後頭部に平手打ちを加えた。


「あっ! すみません。オリバー先生の頭に虫がいましたので、つい」


 オリバーは後頭部を両手で押さえると、振返ってアリエッタを見る。


「……わしの後頭部はそんなに虫が止まるのかの? この前も別の侍女に叩かれた気がするわい」


 私がクスっと笑いながら、アリエッタに右手の親指を立てて見せると、アリエッタも可愛く笑った。


「オリバー先生。そんなことよりも、今のでソフィア様が魔法を使えない理由が分かったのですか?」


 アリエッタの問い掛けに、オリバーは長い髭を撫でる。


「うむ。もちろん分かったぞ」


「そうなのですか!?」


 私がオリバーに喜びの表情を見せると、オリバーはアリエッタに視線を向けた。


「アリエッタ嬢、でかしたぞ」


「え?」


 アリエッタは、オリバーの言葉に軽く首を(かし)げる。


「わしは今までにも、魔法を使えないソフィア様を何度か診断したことはある。一応、昔は王宮聖職者だったからの。しかし、今までソフィア様を何度診断しても、原因は何も分からなかった」


 オリバーはそこまで言うと、再び私の左手を持って、なでなでした。すると、アリエッタがオリバーの後頭部に二度目の平手打ちを加えた。


「……それで?」


 アリエッタは、オリバーと私の手を両手でそれぞれ持つと、引き裂くようにして私とオリバーの手を離した。


「オホン! ……アリエッタ嬢がソフィア様の体内の魔力の流れを整えたことで、ソフィア様が魔法を使えない理由がやっと分かったのじゃ」


「ホントですかっ!? 何が原因なんですか!?」


 私が胸の前で祈るように手を組みながら、パアッと笑顔を浮かべると、オリバーは自信ありげに「ふんっ!」と荒い息を吐く。


「ソフィア様が魔法を使えない原因は……」


「はい!」


「ソフィア様の体質に関係する……」


「はい!」


「長年にわたる……」


「はい、はい!」


「…………便秘じゃ」


「…………」


「…………」


「…………」


「…………」


「あの……、アリエッタさん。私、帰っていいですか? 王宮の図書室で勉強したいので」


「奇遇ですね。ここ数年では奇跡的に、私もソフィア様と同意見です。魔法学園に来たのは時間の無駄だったようですね」


「二人とも、待たれよ!!」


 アリエッタが、私の椅子を引こうとして背もたれに手をかけたと同時に、隣に座っていたオリバーがキラリと瞳を輝かせた。


「……なんですか? ただのオリバー先生」


 アリエッタが低い声でそう言いながら、オリバーをジト目で見ると、オリバーが少し(ひる)む。


「……え~っと、少し表現が悪かったようじゃの。便秘とは言っても、身体的なものではない」


 私はオリバーに怪訝な表情を向ける。


「それは、どういう意味ですか?」


「ソフィア様は、体内で生成した魔力の排出がうまくできていないのじゃ。指先まで魔力の流れが来ているのは分かるが、その指先から漏れ出る魔力の量が少なすぎる」


 私が怪訝な表情なまま、オリバーの言っている内容を理解できずに首を(かし)げると、オリバーは説明を付け加えた。


「そういえば、ソフィア様は魔法を使ったことがないから分からないんでしたな。……通常、『魔法(エーテル)分離の祝福』の後に生成した魔力は、ずっと体内に留めておくことはできないのです。そのまま魔力を留めておくと、体内のあちこちに魔石を形成するようになってしまいます。ですから、魔法使用者は、不要な魔力を排出口から自然に体外に排出しているのです」


「えっ? そうなのですか?」


 私の問い掛けにオリバーは軽く頷いた。


「『魔法(エーテル)分離の祝福』を受けた殆どの者達は、魔力の分離と同時に魔力の排出口が開くのです。……しかし、今日初めて分かったのですが、なぜかソフィア様の魔力の排出口は小さい」


「では、私の身体には魔石が……」


「いや。不思議なことに、ソフィア様の体内には魔石はできてはおりませぬからご安心ください」


 私はその言葉に安堵すると、真剣な表情でオリバーを見つめた。


「では、魔力の排出口が小さいのは、どうやったら直せるのでしょうか?」


 オリバーは再び、右手で長い髭を撫でる。


「……正直なところ、わしにはその方法は分かりませぬが……」


 オリバーは少しの間、目を閉じた後、再び開いて言葉を続けた。


「これまた不思議なことに、ソフィア様の魔法(エーテル)は身体に合っていないようなのです。以前、ソフィア様を診断した時には漠然としか分からなかったのですが、今回、確信に変わりました。アリエッタ嬢による『魔法補助』で魔力の流れが整流されたことで、それがよく分かるようになりましてな。……ソフィア様は、『霊力』と『魔力』が、それぞれ別人のものであるような感じがいたします……」


 私はオリバーのその説明に、目を大きく見開いた。


 ──あっ、これ、異世界転生のせいだ……。


 私はオリバーの説明で、自身の魔力をうまく排出できない理由が分かった。以前のソフィアも異世界転生者だったため、魔力の排出に問題があったのだと考えれば、オリバーの説明には説得力があった。


「なんとか! なんとか、私の魔力の排出口を広げる方法は無いのでしょうか?」


 私が必死にオリバーに迫ると、オリバーは長い髭を撫でたまま、一つの案を話し始めた。


「……効果があるかは保証できませんが、一つ案があります」


「それは?」


「強力な『魔法補助』です。それも一晩だけではなく、休憩や食事をはさんで、一日中です。とにかく、ソフィア様の魔力の排出口を開き続けるのです」


「……強力な『魔法補助』を一日中ですか?」


「ただ、強力な『魔法補助』を行うと、施術する方も、受ける方も、身体に相当負担が掛かります。特に施術を受ける方、つまりソフィア様は魔力が急激に入れ替わりますので、かなり気分が悪くなります。……普通の人間なら、きっと気を失ってしまうでしょうな」


 ……あれ? この前、アリエッタさんに全身を縛られた時の『魔法補助』のこと? 確かに気を失ったような。


「あぁ、あれですか。それなら経験済ですから、多分、大丈夫……むぐっ!」


 私が話している途中で、アリエッタが慌てて私の口を押さえた。


「ソッ、ソフィア様っ!!」


 すると、オリバーは少し驚いた表情を浮かべた後、椅子にもたれ掛かった。


「……経験済みとは驚きましたな。あれは、なかなかマニアックなプレイですぞ」


 ──え? プレイ?


「普通は、夫婦や、深い仲にある恋人しかしない行為なのです。……アリエッタ嬢は、ソフィア様とそんなに仲が良かったのじゃな。少し前は犬猿の仲だと思っておったが……。もしかして、以前ソフィアちゃんが言っていた『ツンデレ』というやつかもしれんの?」


「…………」


 背後から私の口を押さえているアリエッタが、フルフルと震えている。


 ……ヤバイ。アリエッタさんが激怒してる……。でも、今は「魔法補助」を試してみるしかない。


 私は意を決すると、アリエッタの手を口から強引に離し、後ろを振り返ってアリエッタの顔を見た。


「アリエッタさん!」


「…………」


 アリエッタの顔は真っ赤だ。そして、激怒しているというよりも、泣きそうな顔をしていた。


「どうか、お願いします! 私にもう一度、強力な『魔法補助』をしてください!」


 アリエッタは顔を赤くして俯いたまま言葉を発しない。私は椅子から立ち上がると、オリバーの目の前であるにも関わらず、アリエッタに向かって土下座をした。すると、アリエッタが私を止めるようにして叫ぶ。


「ソフィア様っ!! 気安くそういうことをしてはいけませんっ!! 私はソフィア様の侍女なのですよ!!」


 私はアリエッタの言葉を無視して、(ひたい)を床に付けた。


「そんなことは分かっています! でも、どうかお願いします! 私には、頼れる人がアリエッタさんしかいないんです! アリエッタさんが承諾してくれるまで、私は土下座をやめません!」


「…………」


 私は土下座をしているため、アリエッタの顔を確認することはできないが、その雰囲気からアリエッタが困惑しているのが分かった。そんなアリエッタに、オリバーが静かに話し掛けた。


「アリエッタ嬢。こんなにもソフィア様に慕われていることは誇って良いことじゃぞ」


「でも……」


「そなたの仕事と使命はなんじゃ?」


「……ソフィア様の身の回りのお世話をすることです」


「それだけではないであろう? 今なら言えるそなたの本当の思いを言ってみなさい。そなたの顔には、それが書いてあるように思うぞ」


 すると、アリエッタは少し間を置いて、小声でその思いを語った。


「……ソフィア様を助け、ソフィア様の役に立つことです。私の使命は、ソフィア様が女王になれるように、全力で支えることです。……今は、そう思えます」


 その言葉に私が顔を上げると、アリエッタは赤面したまま慌てて視線を逸らした。


「それでは決まりじゃな。時間も無いことじゃし、王宮に戻ったら、早速『魔法補助』を開始しなさい」


 オリバーは私とアリエッタを見て、ニコニコと笑う。オリバーは真面目に話していると、とても信頼できる優しい校長先生だった。


「アリエッタ嬢は魔法学園の授業で習ったはずじゃが、魔力の出口はいくつかある。最も魔力が流れ出しやすいのは、指先と手の平、そして、魔法の詠唱を行う(くち)じゃ。魔法の杖は、指先と手の平から出る魔力を効率良く解放するためのものじゃ」


 オリバーは手に持った杖を軽く振る。すると、星屑のようなキラメキが、魔法の杖の動きに合わせて残像のように残った。私はその幻想的な光景を見て、「わぁっ」と思わず声を漏らした。


「ちなみに、(くち)と口で行う『魔法補助』が一番効率が良いのじゃ。一時間で、三時間分の『魔法補助』の効果があるじゃろう。……お二人の関係なら、そっちの方が早いかもしれませんな?」


 オリバーは私達にそう言いながら、ウィンクをした。


 私とアリエッタは顔を見合わせて頬を赤くすると、オリバーに向かって同時に叫んだ。


「「だから、そういう関係じゃないって言ってるでしょ!!」」


 私は言葉だけだったが、アリエッタは同時にオリバーの頭をはたいた。


 アリエッタはきっと大物の侍女になるに違いない……。


本作をお読みいただき、ありがとうございます。

最近本業が忙しく、なかなか執筆ができておりませんが、そんな状況でも本作の更新をお読みいただいている皆様に感謝いたします。

アクセス数を見ますと、私の想像以上のアクセスを頂いているようで、(もちろんbotもたくさん含まれているのでしょうけれども)、本当にありがとうございます。

ご新規の方、また、このお話までで離脱される方、是非☆で評価して頂けますと幸いです。

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