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「夢かなって異世界の王女様に転生しましたが……、この王女様、思ってたのと全然ちがう!」 ~廃嫡寸前のダメ王女に転生した私、魔法王国のキラキラ王女様を目指す~  作者: 白うさぎの子
第1章 「いきなり廃嫡宣告!?」陛下の無茶ぶり 編

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第10話 魔法補助の効果

 翌朝、私が目を覚ますと、アリエッタが隣で可愛い寝息を立てていた。


 侍女が主人よりも遅くまで寝ているのはいただけないが、一晩中、私のために魔力吸収と魔力注入をしていたのだから、その疲労は相当なものだっただろう。当たり前だが、私はこの件でアリエッタを責めるつもりは全く無い。


 ──アリエッタさん。私のための魔法補助、ありがとうございました。昨夜の言葉、とても嬉しかったですよ。


 私が顔を綻ばせてアリエッタの横顔を見ていると、アリエッタが私の方に寝返りを打った。


「……ソフィアさまぁ。そこはまだ触っちゃダメですよぉ。私の心の準備がぁ……。ムニャムニャ……」


 …………。


 …………。


 …………私、夢の中で、アリエッタさんのどこを触ってるの?


 アリエッタが一体どんな夢を見ているのか気になるが、今の寝言は聞かなかったことにしておく……。


 アリエッタは普段は無愛想なのに、今はまるで子供のような寝顔だ。起きている時は凛とした表情をしているが、寝ている時はその顔が少し幼く見えた。また、時々口元をムニャムニャと動かすのが、小さな子供のようだった。


 ──日向(ひなた)は元気にしてるかな……。幼稚園で頑張ってるかな……。


 私は孫の日向の笑顔を思い出しつつ、アリエッタの頭を撫でようと手を伸ばす。しかし、頭に触れる寸前で、その手を引っ込めた。


 ──孫の顔を思い浮かべながら、アリエッタさんの頭を撫でるなんて、アリエッタさんにすごく失礼だよね……。私は今、この世界で生きてるのに……。


 私は前世に思いを馳せるのをやめて、トイレに行こうと上半身を起こした。しかし、右手がギュッと引っ張られたことで、右腕と両足が紐で結ばれていることを思い出した。


 ──あっ、紐を(ほど)かなきゃ。


 私は腕の紐を(ほど)くため、アリエッタを起こさないように、紐の結び目に左手をかける。しかし、利き手ではない左手ではなかなか紐を(ほど)けず、手間取っているうちにアリエッタが目を覚ましてしまった。


「……ん~? ……あれ? ソフィア様?」


「おはようございます。アリエッタさん。起こしちゃってすみません」


 私はニコッと笑みを浮かべるが、アリエッタはハトが豆鉄砲をくらったような表情を浮かべ、固まったまま動かない。


「…………ぇっ」


「どうしました? 何か気になることでも?」


 すると、アリエッタは慌てて壁掛け時計に目を向ける。そして、視線を私に戻すと、一気に顔を青くした。


「……ひゃぁああ~っ!!」


「なっ、なんですかっ!? 急にどうしたんですか!?」


「寝坊しちゃった!! 侍女長に怒られるっ!!」


 アリエッタは慌てて上半身を起こしてベッドから下りようとするが、その左手は私の右手と結ばれたままだ。私が右手を急に引っ張られて「いたいっ!」と叫ぶと、アリエッタはハッとした表情で私に謝罪した。


「もっ、申し訳ありませんっ!!」


 アリエッタは必死の形相をしながら、右手で腕の紐を(ほど)くと、裸足のままベッドから飛び降りる。そして、寝ぐせでグチャグチャのヘアスタイルのまま、私に向かって深く頭を下げた。普段のアリエッタからは想像できない姿だ。


「いっ、いますぐに朝食の支度をしますのでお待ちください!! 申し訳ありませんが、トイレをお借りします!!」


 アリエッタはサイドテーブルの上に置いてあったメイド服を持つと、裸足のまま全速力で、トイレがある隠し扉に向かった。


「あぁぁ、よりにもよって、ソフィア様と寝た日に寝坊しちゃうなんて……。ソフィア様と寝てて寝坊したなんて、侍女長に言えないよぉ……」(小声)


 アリエッタは頭を抱えて独り言を(つぶや)きながら、隠し扉の向こうに消えていった。


 ──いつもあんなに強気のアリエッタさんでさえ、恐れる人がいるんだ。ちょっと意外……。


 私は苦笑しつつ、自分の足元を見る。


 ──できれば、私の足の紐も(ほど)いていって欲しかったけど、あの様子だと仕方ないかな。両手も解放されてるし、自分で紐を解こうっと。


 私は足を縛っている数本の紐を(ほど)く。太めの紐であるため、両手を使えば、難なく紐を解くことができた。そして、私はベッドの上に座ったまま、両手を大きく上げて背を伸ばした。


「ん~っ! 身体が自由になって、なんだか気持ちいい~!」


 ソフィアの身体が若いためか、もしくは、魔法補助が効いたからなのか、どちらが原因かは分からないが、妙に頭の中がスッキリしていた。そして、身体中をエネルギーが流れるのを感じる。


 ──この流れ、もしかしてエーテル? 私、今、なんだか魔法が使える気がする!!


 私はスリッパを履いてベッドから下りると、テーブルに移動して椅子に腰掛けた。そして、人差し指を立てると、光を(とも)す「ライト」の魔法陣を心の中に強く思い浮かべて、指先に魔力を集めるイメージをする。


 ──昨日よりも集中できてる気がする。……わぁ、魔力がどんどん指先に凝縮されていってる。アリエッタさんが魔力の流れを作ってくれたお陰で、指先にエーテルが集まりやすくなってるのかも。これ、すごい……。


 …………。


 …………。。


 …………。。。


 …………。。。。


 …………。。。。。


 ……ダメだ! こんなに強くイメージできてるのに、魔法が実体化してくれない!!


 私は何回も魔法を使おうと試みたが、私の指先には全く「光」は現れなかった……。


 ──初級魔法の「ライト」が使えないなんて、まだまだ私の魔力を制御する力が弱いのかなぁ……。もう一回、アリエッタさんに「魔法補助」をしてもらわないとダメなのかも。アリエッタさん、協力してくれるかなぁ……。


 すると、女子中学生の夏服……いや、メイド服に着替えて一通りの支度が終わったアリエッタが、「やばい、やばい」とギャルのように言いながら、必死の形相をして隠し部屋から飛び出してきた。


「あっ!! アリエッタさん、待って!!」


 しかし、アリエッタに私の声は届かず、彼女はそのまま部屋を急いで飛び出していく。そのため、私もアリエッタの後を追うようにして部屋を出た。


「アリエッタさ~んっ!! 待ってくださいっ!!」


 私はアリエッタを追い掛けて、全速力で王宮の廊下を走る。


 すると、しばらくして、私は皆から注目の視線を浴びていることに気付いた。


 …………。


 …………ん?


 …………。


 …………しまった!! パジャマ姿のままだったぁ~!!


 私は両手で身体を抱き締めるようにして、不格好な姿で「見ないで~」と言いながら廊下を走る。すると、私の騒ぎに気付いたアリエッタが、私の(もと)まで戻って来てくれた。


「ちょっと、ソフィア様! どうして、こんな格好で部屋の外に出てるんですか!?」


 アリエッタは、王宮の廊下を歩く貴族の邪魔にならないように、慌てて私を廊下の(はし)に移動させる。私は全速力で走った後であるため、ハァハァと息を切らしながら、アリエッタの両肩を持った。


「アリエッタさんにお願いしたいことがあって!」


 私はそう叫んだ後、パジャマ姿のまま、すかさずその場に手をついて土下座をした。


「アリエッタさん! どうか、もう一度っ! もう一度、私と寝てください! もしかすると、昨夜、私が気持ち良すぎたのがダメだったのかもしれません! 私をきつく縛って、もっといっぱい出し入れして下さい! 少し苦痛を感じるぐらいが良いのかもしれません! 私が叫びそうなら、『猿ぐつわ』もしていいですから!」


「……はぁ!?」


 すると、廊下での私とアリエッタのやり取りを見て、すれ違う貴族がニヤニヤとしたり、クスクスと笑っている。「あらあら、独り寂しいソフィア様は、ついに侍女に手を出して、夜の相手をしてもらっているのですね。殿方には相手にされませんものね」と、嫌味っぽく言う女性の声も聞こえた。


 ……あ、しまった。コレ、他の貴族に王女と侍女が変なプレイをしていると勘違いされてるかも……。


 私が恐る恐るゆっくりと顔を上げると、アリエッタは顔を真っ赤にして、プルプルと震えながら私を睨んでいた。


「いっ、いや、これは、そういう意味ではなくて……」


「…………」


「単に、もう一回、アリエッタさんと仲良く寝たいな~って。少しぐらい強引にシテもらった方がいいのかな~って。……あれ? ちょっと言い方が違いますかね?」


「……こっ、このバカ王女ぉ~っ!!!!」


 アリエッタは、私の頭をスパーンと叩く。廊下に私の頭を叩く音が響くが、それを止めるものは誰もいない。「夜の変態行為を廊下でバラされたら、侍女も怒って当然ですわね……」という同情の声が遠くから聞こえた。……身体が若いと聴力も鋭く、遠くの声が良く聞こえる。


 私が痛みに頭を押さえながらアリエッタを見ると、彼女は涙目で今までになく本気で怒っていた。


「何を誤解を生むような言い方を公衆の面前でしてるんですか!! 私、ソフィア様の夜の相手をしてるって勘違いされてるじゃないですか!!」


「……いや、まあ、夜の相手をしてもらってるのは本当ですし……。すっごく気持ち良かったですよ?」


「はぁ!? もう許さない!! 今度はグーでいきますよ!!」


「ごっ、ごめんなさいっ!! 私達はそんな変なプレイはしてませんでした! 普通のプレイでした! 昨夜は気持ちいいだけの健全プレイっ!」


「プレイじゃありませんよっ!! 『魔法補助』ですっ!! ソフィア様はもう口を開かないでください!!」


 アリエッタは私の腕を強引に掴むと、そのまま私を自室に引っ張って……いや、私を引きずっていった。


「部屋に着いたら、お説教ですからね!」


「じっ、侍女長に連絡しなくてもいいんですか!?」


「どうせ怒られるんです! だったら、ソフィア様でストレスを発散してから報告に行きますよ!」


「ひぃぃ……」


 前世で(よわい)62歳だった私は、自室の部屋の床に裸足で正座させられ、20歳(はたち)の美少女アリエッタから3時間近くも説教をされる羽目になった。


 やはり、精神の成熟度は年齢だけによるものではないと実感した……。


初めて本作をお読みいただいた皆様、もしよろしければ、☆で評価して頂くと作者が喜びます。宜しくお願いいたします。

評価して下さった皆様、本当にありがとうございました。本作はまだまだ続く予定です。

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