5話 初めてお弁当を食べさせてもらいました。
僕は困惑していた。
「錦クンさぁ、ちょっと流されやすいと思うのよね」
昼休みに僕は友達と食事を摂ろうとしてた時に、颯爽と現れた初さんが僕を連れ去っていった事に対してである。
「ほら、錦クン。口開いて…」
当然、クラスはざわつき始めたし
委員長なんかは怪訝そうな顔をしていたと思う。
「美味しい?」
「お、美味しいですよ。初さん」
そんな初さんが僕を連れてきた理由が今食べているお弁当だった。
初さんは僕の為にお弁当を作ってくれたのだ。
「錦クン、ある意味ヘタレだもんね。しょーがないね」
「なんの話です?」
「錦クンが流れやすいって話」
僕は初さんから見て流れやすいらしい。
僕はクラスメイトから、いろんな頼み事をされるけど、僕は頼られてると思ってる。
委員長も僕の事を頼ってるし手伝いもしてくれてる。
「だから、錦クンは嫌って拒否する事覚えといた方がいいよ?」
「そうなんですか?」
「そういうもんなの。それで喜ぶ女の子だっているんだよ」
初さん曰くそういう事らしい。
僕はあまり理解できてなかった。
「あっ! 錦クン今日一緒帰ろ?」
「いいですよ」
「じゃあ放課後ね」
というわけで一緒に帰る事が決まりました。
◇◇◇
放課後。
ふと携帯を見たら初さんからメッセージ通知が来ていた。
『ごめーん。今日お誘いが入った』
そんなメッセージに僕は落胆してしまう。
それに気づいた僕はいつの間にか初さんに感化されたんだなと思ってしまった。
『いいですよ。楽しんできてください』
『そう思ってるの?』
僕の落胆は初さんに見透かされていたようだった。
『錦クン? 昼間の事を思い出してから、もう一度言ってみ?』
言われた通り、僕は昼間の事を思い出していた。
確か初さんはこう言っていた。
『だから、錦クンは嫌って拒否する事覚えといた方がいいよ? それで喜ぶ女の子だっているんだよ』
と、初さんの言いたい事はわかった気がする。
だから
『嫌です。僕は初さんと帰りたい』
僕の本心だった。初さんと帰えれるという期待に対して落胆したという事なのだから。
『今いく』
程なくして僕は初さんに連れ去られていた。
クラスは昼間以上にざわつき
委員長はもう睨んでいた。
「錦クン! カッコよかったよ」
「初さんが言ってた意味がわかりました」
「んふっ! 惚れた?」
もう見慣れた初さんの悪魔のような、にしし顔。
「惚れたかどうかはわかりません。ただ初さんから離れたら落胆しましたし、初さんと一緒で帰れる事は嬉しいと思ってます」
「ふ、ふーん。ふーん」
初さんは朱を帯びた顔で空を見上げてた。
「で、大丈夫なんですか? 抜け出してきて」
「だいじょーぶ。だいじょーぶ。ただの遊びだから、てか…心配してくてんの?」
「それはするに決まってます。僕のせいなんですから」
「錦クン。カッコいいよ」
初さんは僕の腰に手を回してたのが強くなった。
だから、僕も強く抱きしめた。
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