2話 初めて好きと言われました。
翌日。
僕は授業の内容が頭に入らなかった。
昨日、帰ったあと知ってるSNSとかで調べましたが、何も成果を得られなかった事。
ネットの海から情報は全くなかったからである。
となると、ストーカーさんが本線という事になるのだから頭が入るわけがない。
とりあえず、また遭遇する事があると思ったので防犯グッズ等をそのうちに買う予定だった。
「赤須くん? 呼ばれてるわよ?」
ふと、意識が戻ると、僕のクラスの委員長が呼び掛けてたらしい。
「…うん。ありがとう。誰が呼んでるんですか?」
「大神さん…。赤須くん気をつけてね、何かあったら助けるから」
大神さん…?
僕は全く心当たりがなかった。
そんな僕が廊下に出ると
全体的に色白で茶髪ストレートロングで、目尻が下がってまるまるの瞳、唇はリップなのか白に映えるような朱く染めてて、制服は崩していて、規則ギリギリまでスカートを折ったギャルがいた。
…というか、僕は大神さんに心当たりがあった。
「赤須クン、話があるの。だから来て」
「えっ!? えっ!?」
僕は、大神さんに腕を強く握られ強く引っ張られた。
昨日、初めてギャルと喋って。
今日、初めて異性
に触られた。
僕の頭の中はぐるぐると混乱していた。
そして連れ去られた場所は誰も来なそうな校舎の端っこ。
「赤須クン、なんで昨日逃げたの?」
「ご…ごめんなさい」
振り返ってきた大神さんは酷く膨れ顔をしていた。
話の内容はだいたい予想できてた。
昨日会って急に逃げられたら、僕でも問いただしをするかもしれない。
「僕は…、大神さんの事を知らなくて…、急に怖くなって…」
「あたしの名前知ってるじゃん」
「いえ、今さっき知りまして…」
そんな大神さんは苦笑して
「じゃあ、しょうがないねー。あたしの名前は大神初、赤須クンの事が好きなギャルね。これでもう逃がさないよ」
大神さんから聞いた事のない言葉を聞いた気がする。
「……す…き?」
「そう。好き」
僕の頭はどこかに飛んでいるだろう。
昨日、初めてギャルとナンパされ
今日、初めて異性に触れられて
今、初めて好意を向けられたのだから。
「あーでも、あたしの事はこれから知ってくれればいいから返事は後からでいいよ。…襲ってもいいなら今返事もらうけど」
「…後からで…ごめんなさい」
大神さんは、にししっと愛嬌あるあどけない笑顔を浮かべた。
「とーゆーわけで、はい。ケータイ出して」
「…携帯?」
「連絡先交換しなくちゃ話にならないよ? いつでも呼び出すから覚悟しててね」
大神さんはひったくるように携帯を奪い、そのままポチポチと操作をしていた。
「はい、これ。これで連絡取れるようになったから」
大神さんから渡された携帯からは、ちゃんと『大神初』という名前が載っていた。
昨日、初めてギャルにナンパされ
今日、初めて異性に触れられて
さっき、初めて異性から好意を向けられて
今、初めて家族以外の異性の人の連絡先が載った。
最近だけで大神さんに振り回されたのに
僕は明日以降どうなってしまうのかわからなかった。
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