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大集団

作者: 雉白書屋

「終わりだ……」


 ある日、空を見上げ一人の男がそう呟いた。

いや、一人だけではない。全人類が呟き、あるいは思い、もしくは叫んだ。


 彼らの視線の先にあるのは空に浮かぶ大船団。大小、様々な宇宙船である。

ワープ航法なのか、突然続々と現れたのだ。

 蟻の行列を連想したのは小さく見えたからだが

それは距離の話で、近づけば到底、太刀打ちできる大きさではないことが明白。

いや、大きさの問題ではない。彼らの技術力は人類の頭で測れるものではないのだ。

 だが、その目的は子供にもわかる。


 侵略。


 他に何があるというのだ。ただの交流ならこうもゾロゾロと来る必要はない。

代表者を立てれば済むこと。

 急遽設置された対策本部の議論もそう纏まった。

中には「セールスにやって来たのでは? ほら、どうも宇宙船に統一感がありませんし」

との意見も出たが冷ややかな目で見られた。


 仮にそうだとしても宇宙人の口から直接そう聞くまで誰が信じられようか。

混乱し、騒乱。略奪、殺人そして自殺。

もはや楽観的な物言いを受け入れる余裕は人類にはなかった。


 飛ばした戦闘機も慰めにならない。

何の反応なし。未だ宇宙船は大気圏外に浮かんだまま降りてこないのだ。

 彼らの内で何か話し合っているのだろうか。

情に目覚め、引き返してくれることを人類は願った。


 しかし、事は更に思いも寄らぬ方へと動いた。


 大船団が動き出したのだ。しかし、その方向にあるのは太陽。

まるで光に引き寄せられ、電灯に進む羽虫。


 一体、何を求めているのか。答えを導き出すのにそう時間はかからなかった。

太陽、そのエネルギーの抽出。彼らの未知の技術ならそれも可能だろう。

考えてみれば地球を植民地にするために来たにしては数が多い。

 あの大船団の目的が災害による断水地域の住民が水を求め、給水車に並ぶように

太陽のエネルギーを取りに来たのなら納得だ。

 しかし、太陽はどうなる?

 人類への影響は?

 地球の生命に配慮した作業をしてくれるとは限らない。

人類が虫やネズミを気にしないように。


 人々が不安な気持ちで見守る中、日が沈む。

明日は来るのか。今生の別れ。あの太陽の輝きをまた拝むことが出来るのか……。

 地球全体に重苦しい空気が立ち込める。


 が、宇宙局から耳を疑うような速報が入った。

 観測の結果、宇宙船が次々と消失しているとわかったのだ。

つまり、太陽に飲まれていったのだ。

 恐らく船の耐久性等、計算違いがあったのだろう。

気づいたときには蟻地獄のようにもはや引き返すこともできずに、というわけだ。

 

 人類は体を叩き合い喜び、そして笑った。

 何でもないことで大騒ぎした事。

 罪を犯し捕まった者。絶望し、わざわざ自殺までした人々を嘲笑った。


 そして月を見上げ、優越感に酔いしれるのだ。

 月明かりだけの真っ暗な夜空。

徐々に消失していく星の光に気づき、恐怖に飲み込まれるまで……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作品を読んでいる途中は何でジャンルホラーなの? パニックで良いじゃんって思ってたんですが、読み終わってから、恐怖がジワジワと湧き上がって来ました。 恐怖が湧き上がる作品を読ませて頂き、…
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