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異世界救った帰還勇者だけど魔法少女の使い魔始めました。  作者: シモヘイ
第二章 夢見る無職じゃいられない。
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プロローグ とあるプー太郎の一日


ちょっと聞いてくれないか?

聞いたからって理解できるかどうかはわからないけど、俺も理解できてないから大丈夫だ。とりあえず聞いてくれ。


白石くんに運んで貰って実家に帰ったのが先週の土曜日でさ、今は水曜日なんだよね。


何で俺は香苗ちゃんのアパートに居るんだろうね?


まあ結果から言うと、松島ファイナンスビルに突撃した香苗ちゃんが俺の居場所を教えるまでここを動かないって居座っちゃって、根負けした会長が教えちゃったらしいんだなあ。


そこからはアレよアレよと言う侭にって奴だ。白石くんの運転で俺の実家に現れた香苗ちゃんが俺のズボンに縋り付いて「もう私を置いて行かないでっ」って泣き喚くわ、そんな女子小学生と来年三十になる息子の愁嘆場を見せられたお袋はキレ散らかすわ、親父は見ていられないと言った様相でこっそり仕事に海に行っちまうわ、まあ散々だったよ。


ちなみにウチの家業は漁師をしている。


で、事態を収集するには俺が香苗ちゃんのアパートに戻るしかなくなって、再びドライバー白石のBMWに揺られること二時間。こうして香苗ちゃんのアパートに連れ戻されてしまった訳で。そりゃ香苗ちゃんのお母さんもびっくりですよ、自分の娘がヤクザと一緒に県北の港町まで行った挙句におっさん拾って帰って来たんだもん。


俺なら間違いなく「元いた場所に戻して来なさいっ!」って言うね。


ただ、香苗ちゃんはお母さんに、病気を治したポーションの出所が俺だって教えちゃってたみたいで、お母さんも歓迎ムードなのには困り果てた。だって香苗ちゃんの住んでるアパートって1DKよ?ダイニングキッチンと母娘が寝る居室が一つだけだよ?そりゃ俺もロリコンの気は無いから香苗ちゃんと暮らすのは問題無いけどさ、問題はお母さんで、お母さん多分俺より一つ二つ歳上くらいだと思うんだけどめちゃくちゃ美人さんなのよ。もうね線が細いって言うか抱きしめたら折れちゃいそうな感じなのもポイント高いし、控え目に言って美少女の部類に入る香苗ちゃんをそのまま大人にした見た目をしてる。更には未亡人特有の少し陰のある笑みとか、まあぶっちゃけストライクです。ホント俺の好み。そんなお母さんと殆どプライベートスペースの無い1DKで同居なんてしたら間違いなく間違いが起きます。自信を持って言います。起きます。


そんな間違いを回避しつつ香苗ちゃんを泣かさずに済む方法は何だって考えた結果、香苗ちゃんのアパートの隣の部屋を借りて住めばいいんじゃないかと思い至ったんだけどさ、最近の不動産屋って厳しいのよ、無職で過去五年間職歴無しって言うか五年間行方不明の俺みたいな馬の骨には貸すアパートはねえ、みたいな。


そんなこんなで泣く泣く岩沼母娘と同居する事に決定したのが昨日の夜です。


まあ居づらいです。はい。

香苗ちゃんは四六時中俺の身体の何処かに触れてないと死ぬ病なのか、ずっとくっついてくるし、香苗ちゃんのお母さん、岩沼香澄さんは天然というか無防備過ぎて風呂上がりとかタオル一枚で出てくるし、濡れた髪から凄くいい匂いするの。で、鼻の下が二メートルくらい伸びた俺を見た香苗ちゃんが凄く不機嫌になるの。


もう限界です。


***


「助けて兵衛門」


駆け込んだ松島ファイナンスビルの会長室、目の前には苦汁切った松島兵衛さん六十歳、金融業経営、兼、ヤの付く自由業。


「仕事と住む場所ねぇ…それなら兄さんヤクザになればいい。アンタが継いでくれるなら儂も安心して引退できるってもんだ」

「ヤクザは勘弁してくれ、もう暴力で飯を食うのは辞めたんだ」

「とんだ言種だな、今どきのヤクザは頭使えなきゃ飯は食えねえよ。暴力だけで生活って、兄さんヤクザよりタチが悪い仕事してたんだなぁ」

「違えねぇ、確かにヤクザなんかよりよっぽど下衆な仕事をしてたよ」


国同士、種族同士の争いで抑止力とも脅迫材料ともなる、核兵器みたいな存在だよな。勇者なんて奴は。


大量の魔物や高ランクの魔獣、魔物から進化した魔人を討伐し、盗賊みたいな犯罪者をぶっ殺して名声をあげ、他国に対して武力を示す。ダンジョンや魔物のテリトリーになっている未開の地を踏破して人類の領域を広げる。


そりゃお姫様嫁がせて取り入ろうとするわ。

勇者を取り込んだ国家は勇者を持たない国家に対して余程無茶な要求をしても通るんだもん。要求に従わなければ、あの国は悪だって純朴極まりない勇者様に言って滅ぼすだけだ。


そんな騙されやすい高校生勇者が各国にいたもんだ。だいたい利用されるだけ利用されて死んでいったけどな。


嫌な事を思い出して首を振る俺に、何か思い立ったのか松島会長がニヤリと笑う。


「喫茶店のマスターとかどうだい?老夫婦がやってた店なんだが息子夫婦の世話になるってんで店仕舞したのを居抜きで買い取ってな。アンタがやる気ならそのまま提供しても構わない。一階が店舗、二階が住居スペースになってるからアンタのご希望通りだし、場所も泉区の繁華街に近いから立地もいい。余程不味いコーヒーでも出さなきゃ潰れないだろう。」


そして権利書はこれだ。もちろん土地付き。

そう言って一枚の書類をひらひらと目の前で振ってくる。


「話が美味すぎるな、条件は何だ?」


俺の問いに松島会長の目が好々爺然とした柔らかいものから鋭い猛禽類のそれに代わる。


「一人守って欲しい人間がいる。期間は長くて一か月、早ければ十日で蹴りを付ける」


入っておいで。

会長室の扉に向かって松島会長が声をかけると、ゆっくり開いた扉の隙間から香苗ちゃんと同年代くらいの少女が入ってきた。


ゆるくウェーブさせた髪を一つに纏めて左肩に流している。香苗ちゃんも美少女ではあるが、この子もかなりの美少女だな。ちょっと目付きがキツめだけど、それがいいって人も多いだろう。


「アンタが絵梨花の新しいボディーガードね。アンタみたいな何処の馬の骨かわからないようなおじさんに絵梨花の事を守らせてあげるんだから精々頑張るのよ。上手くできたらご褒美をあげるわ」


仁王立ちで俺に向かって高々と命じる絵梨花ちゃん。あー、異世界にもいたわこのタイプ。だいたいこのタイプって金髪縦ロールなんだよな、絵梨花ちゃんは縦ロールじゃなくて良かったよ、きっと専属スタイリストが付いてるんだろうな。だってこのタイプの奴が好きな髪型にしたら縦ロールになるだろ?スタイリストさんに感謝しろよ?


つーか今の日本で縦ロールとかホントにいるのかな?


「何か失礼な事を考えているんじゃなくて?」

「いーや、気の所為さ」


何だか知らんが楽しい依頼になりそうだぜ。


本日二度目の投稿となります。

今回も閲覧ありがとうございました、シモヘイです。


ダラダラ日常挟みつつ、第二章スタートです。

引き続きよろしくお願いします。

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