第十六話 とある使い魔のおっさん育成計画
お久しぶりです。
プライベートが少々落ち着いたので再開します。
引き続き、評価とブックマークをお願いします。
「よ、よろしくお願いします。真一さん」
「よろしく頼むのじゃ」
蔵王のおっさんと話した翌日、早速特捜局の訓練場を借りて有希ちゃんに稽古を付ける事にした。現在二人はカフェ二階居住スペースのよし江とミァの部屋に居候している。勿論よし江は犬モードで俺の部屋で寝た。購入したマンションの引き渡しまでの辛抱だ。
ひとまず有希ちゃんには魔力の制御方法を覚えてもらわなくちゃならない。いつもの如く、俺は有希ちゃんの手を取って魔力をゆっくり流し込んだ。
「俺の魔力が今有希ちゃんの右手から流れ込んでいるのがわかる?」
「はい…真一さんの熱くて逞しいモノが私のナカに…」
うっとりした顔で際どい台詞を吐く有希ちゃん。
「有希ちゃん、やっぱり私が教えますね」
「そうね、真一には任せておけないわ」
潤んだ瞳で俺を見上げた有希ちゃんが俺の足に抱きつこうとした瞬間、訓練場に飛び込んできた香苗ちゃんと絵梨花ちゃんによって俺と有希ちゃんは引き離された。
「それなら妾と訓練するんじゃよ?妾も元は歳経た蛇の変化、魔力も持っておる筈じゃからの」
今度は蛟が頬を赤らめながら俺の手を取る。
だがそれも香苗ちゃんと絵梨花ちゃんによって阻止された。
「はいはい、蛟ちゃんも一緒に魔力感知から覚えましょうね」
「い、嫌じゃ!妾は真一と訓練するんじゃよー、ギャワー!」
「全く油断も隙もあったもんじゃ無いわね」
「お兄さんは向こうで蔵王さんと遊んでて下さいね」
幼女たちに仲間外れにされた俺はとぼとぼと蔵王のおっさんの待つ特捜局の執務室へ向かった。こうなっては仕方ない。暇だから蔵王のおっさんを魔法少女以上のパーフェクトソルジャーに改造するしかない。
魔法少女と特捜局の戦力バランスを取るいい機会だ。元々近接戦闘型、所謂レベルを上げて物理で殴るタイプの俺は他人の強化は不得意だ。そもそもぼっちの俺には荷が重い。
今までは捜査員それぞれの魔力を底上げし、魔力の正しい使い方を教える事で戦力増強を図っていたが、ちょっとそれだけじゃ香苗ちゃん、絵梨花ちゃん、有希ちゃんの三人の魔法少女には追いつけない。ならば少々の無茶は許されるはず。クーを解き放った今だから出来る術ってものがある。
「蔵王のおっさん、楽しい楽しい訓練の時間だぞコラァ!」
のんびりお茶を啜っていた蔵王のおっさんを拉致してカフェリトルウィッチ二階の自室に戻り、押入れの戸を開いた。
「クー、いるかー?」
「いるよー。どしたの?」
クーを封じていた白牢のゲートは今も俺の部屋の押入れに固定されたままだ。押入れ上段からクーがのそのそと現れた。
「昼寝中に悪いな、ちょっと白牢の中貸して貰えるか?俺が全力で暴れても周りに被害が及ばない場所ってーと、ここしか思いつかなくてな」
「別にいいけど、私の家具壊さないでよね?それより、白牢ってシンイチお兄ちゃんの精神世界の深層に作り出した亜空間よね?自分の精神世界に入るとかどうなってんの?バカなの?死ぬの?」
「んー、どうなんだろうな?アイテムボックスの魔法を解析して作ってみたけど、細かいところは適当だしなあ」
それより、私の家具ってなんやねん。
俺のだろうが。
「あ、それからクー、蔵王のおっさんに加護って与えられるか?クーの使徒にすれば魔力とか身体能力とか結構上がるよな?」
「いけるよー。私の使徒になればシンイチお兄ちゃん程じゃないけど、向こうの世界の英雄クラスの魔力が手に入っちゃうよ!ホントなら信仰を捧げて貰わなきゃいけないんだけどね」
「今クーは管理神でもないし、信仰されても仕方ないだろ。御供物は牛野家の牛めしでいいか?」
「生卵もよろしくー」
俺とクーの間でサクサク蔵王のおっさんの改造計画が進んでいく。話に着いて来れずに唖然としている蔵王のおっさんを白牢の中に連れ込むと、クーがおっさんに向けて手をかざした。
「今から君は私の使徒だよ、簡単に言えば女神に見出された勇者ってやつ。御供物は毎日牛野家の牛めし特盛生卵付き一杯、豚汁も付けてくれたら嬉しいな」
クーのかざした手から放たれた光が蔵王のおっさんを包み込む。
「見た感じ変わりないな?」
「角はやしたり腕増やしたりした方が良かった?」
「勘弁してくれ…」
憔悴した顔の蔵王のおっさんを連れて白牢の中へ入る。家具に被害が出ないように少し離れた空きスペースへ移動した。無限に広がる真っ白い空間で五メートルほど離れて蔵王のおっさんと向かい合った。
「それじゃ慣らし運転だ。ちょっと本気出すからしっかり着いて来いよ」
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