表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/51

第十一話 とある使い魔とアメリカさん

もし少しでも面白い、早く続きを読みたいと思っていただけましたら、評価、ブックマークをお願い致します。


たかだかバッグ一つ分程度のアイテムボックスに何を大袈裟な。俺が首を傾げていると、蔵王のおっさんは深く溜息を吐いた。


「あのな、こんなのがあったら税関はスルーパスで密輸し放題、危険物も持ち込み放題で要人に会う前に手荷物検査あるところでも関係無く暗殺し放題、バッグに入るサイズなら絶対バレずに泥棒し放題、これがヤバくなかったら何がヤバいって言うんだよ」


言われてみれば便利過ぎるな、アイテムボックス。俺は時間停止機能を使って食い物の保管とか、ダンジョン産のアイテム保管するくらいにしか使って無かったよ。


むしろ仕込んだ肉や魚が時間停止機能のせいで熟成が進まないから、ちょっと不便だと思ってたくらいだ。元々漁師の息子の俺は釣りもするし魚も捌ける。向こうの世界で魔獣討伐するようになってからは肉の処理も覚えたよ。


「なるほどなー、世の中には悪い事考える奴もいるもんだ。」

「完全に他人事だな。頼むからこんな厄介なもんホイホイばら撒かないでくれよ。一人分の戸籍の礼にこんなもん貰えるなんて事になったら、まず間違いなくアメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、ルーマニア、中国あたりがお前に接触してくるからな。あと南米諸国からの勧誘にも気を付けろ」


蔵王のおっさんが言うには、この五年間に怪異絡みの事件が増加しているのは日本だけじゃなく、ほとんど世界中の国々で魔獣被害が頻発しているらしい。それぞれの国が特捜局のような組織を持っていると言う事だった。


「特にポーランドとルーマニアは吸血鬼の本場だし、イギリス、フランス、南米諸国もオカルト絡みの事件は昔から多い。まあなんだかんだ言ってアメリカが怪異対策には一番力を入れてるみたいだけどな、能力者の軍事転用も視野に入れた研究を進めてるって噂だ」

「ま、確かに日本に限った話って方が不自然だよな」

「でな、間が悪い事につい先日事件が起きた。ちょうど俺とお前が東京で訓練してた頃の話なんだが、毎年やっているアメリカ軍との合同演習の場で、怪異対策についても日米で協力体制を築きたいって申し入れがあったらしい。最初は現場単位の軽口程度だったんだが、昨日正式に外交ルートを通じて打診があった。」


話を聞くに悪い事じゃない気がする。蔵王のおっさんが言うにはアメリカは日本の特捜局のような独立した小組織では無く、軍の一部隊として潤沢な予算と豊富な人材が投入されていると言う。そんなアメリカ軍特殊部隊との交流は色んな意味でプラスになるだろう。


「あー、その交流に参加するメンバーが美鈴と鈴音なんだよ…」


すまんおっさん、そりゃ大事件だわ。

火に油とかそう言うレベルじゃない、二国間の外交に絶対亀裂が入る予感がする、いやあの二人なら間違いなくやらかす。


「おっさんは参加しないの?」

「俺が参加したらあの二人がどういう行動取るかわかるだろうが」

「そ、そうだね…なんかすまんかった」


おもむろに背筋を伸ばして何かを言いだそうとする蔵王のおっさん、俺は嫌な予感がした。


「それで、あの二人の監視役として…」

「あーあー聞こえなーい」

「特別訓練教官の黒川君にも参加して欲しいな、と。どうかな?」

「それ何て貧乏籤?」


勘弁してくれよ、爆弾抱えて地雷原ダッシュするレベルで自殺行為じゃねえか。幸いにして大河原姉妹は蔵王のおっさんが絡まなければ比較的に常識人ではあるが、今のあの二人の実力を他国に見せるのはマズいだろ、つーか訓練教官として俺が出張ったら大河原姉妹を強化したのが俺だってバレるだろうが。ついさっき他国の接触には気を付けろって言ってた癖にどう言う事だよ。


これは裏があるな。

日本国と特捜局共に俺の情報をアメリカに渡したくは無い、だがアメリカとの合同演習には参加して欲しい。明らかに矛盾している。


「なあ、蔵王のおっさん。何か他にも俺に言わなきゃいけない事ってあるんじゃないか?」


蔵王のおっさんは大きく息を吐くと話し始めた。


「実際には君ではなく香苗ちゃんと絵梨花ちゃんの二人に参加して欲しいと言うのがアメリカ側の要求だったよ。彼女たちの活躍がここ最近頻繁にメディアで取り上げられているのは知っているよな?」

「ああ、ワイバーンが現れた後から、あんたらは魔法や魔獣の存在を隠さなくなったからな。たしかブランシェとノワールだっけ?そんな通り名がつけられているのも知ってるよ」

「幸いにして彼女たちの正体は世間には知られていないし、日本政府としても表向きは知らないと言う事になっている。あくまでも善意の魔法少女として魔獣討伐に力を貸してくれているだけ、と言うスタンスだ。そこについては黒川君との約束もあるし、こちらとしては細心の注意を払っている事は理解して欲しい」

「なるほど、日本政府としては香苗ちゃんと絵梨花ちゃんに表立って協力は頼めない。だけど俺が演習に参加すれば、彼女たちは俺に着いて演習場に向かうだろう、と?」

「有体に言えばそう言う事だな。」


いやいや、状況悪化し過ぎだろ。

大河原姉妹の保護者ってだけでもヤバいのに、演習に魔法少女の香苗ちゃんと絵梨花ちゃんを連れて行けって?俺の胃に穴が開いたらどうしてくれるんだよ。こう見えて俺割とデリケートなんですけど?心配事があるとお腹痛くなっちゃうよ?


「すまん、蔵王のおっさん。整理させてくれ。俺は大河原姉妹の保護者としてアメリカ軍との合同演習に参加しつつ、香苗ちゃんと絵梨花ちゃんも正体不明の魔法少女として演習に参加させなくちゃいけない。これで合ってる?」

「残念ながら合ってる。黒川君の理解能力が高くて感心するよ」


あー、それからな…

蔵王のおっさんがまた何か言おうとしている。もう勘弁してくれ、俺のライフはもうゼロよ。


「すまんが、演習には本吉も連れて行ってくれないか?君が参加するって言ったら本人が凄く乗り気になってしまってなあ…」


本日も閲覧ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ