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第八話 とある使い魔とクズ女神の力

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絵梨花ちゃんが投げた鉄球が音速を超えて蔵王のおっさんに襲いかかる。


二人とも、とんでもない才能だとは思っていたけど、僅か数ヶ月の短期間でこの領域に足を踏み入れるとはね。


あの香苗ちゃんが発動させた魔法陣の中は、エナジードレインの術式を解析して精製された、魔力を食っては自己消滅するミクロン単位の悪魔で埋め尽くされている。人体にも入り込み魔力を根こそぎ食い荒らして消えていくだけの生物、えげつねえ魔法を作り出したもんだよ。恐らくあの空間の中に入ったら俺でも何も出来ずに魔力を空にされるだろう。


香苗ちゃんもとんでもないが、絵梨花ちゃんも大概だ。何だよあの腕は…俺の膨大な魔力を惜しみ無くぶち込んだ全力の身体強化魔法と同じくらいの馬力出てんじゃねえか。まだ身体の一部しか顕現させれないってのが救いだな。ホント末恐ろしい魔法少女だよ。


加速した思考の中でそんな事を考えている間にも絵梨花ちゃんが投げた鉄球は蔵王のおっさんに向かって飛んでいく。ヤバいな、このままじゃ蔵王のおっさんどころか着弾した衝撃で大河原姉妹と後ろにいる柴田さんまで挽き肉になっちまう。


仕方ねえ、あんまり使いたくは無いが魔力を封じられた状態であの鉄球を止めるとなると…


「クー、力借りるぞ!」


(蛇娘の時の貸しも合わせて貸し二つだねっ、お礼は牛野家の牛飯汁だく特盛でいいよ!)


「安い女だな。お前が貧乏舌で助かるよ!」


叫ぶと同時に俺の身体の中で魔力とは全く違った力が膨れ上がる。そのまま香苗ちゃんの封魔絶対領域の中に飛び込むと、迫り来る鉄球を片手で受け止めた。


間一髪ギリギリのダイビングキャッチ、珍プレー好プレー特集なら好プレーとして紹介されるレベルだぜ。


「絵梨花ちゃん、ナイスボール」

「お兄さん、私の封魔絶対領域の中でどうやって…?」

「真一、アンタ本当に化け物ね」


その場にいた全員が唖然として俺を見つめていた。香苗ちゃん、絵梨花ちゃん、蔵王のおっさん、大河原姉妹、柴田さん、誰一人として口を開こうとせず、張り詰めた空気が流れる。


そんな中、俺の呟いた一言は警視庁本庁舎の地下訓練場に良く響き渡った。


「よーし、香苗ちゃん、絵梨花ちゃん、お説教の時間だぞ?」


***


警視庁本庁舎内の柔道場の畳の上に香苗ちゃんと絵梨花ちゃんが正座している。二人が特捜局のメンバーを襲撃したのにも何かそれなりの理由があるんだろうが、悪い事は悪い事だ。以前魔法を教える時に、人に向けて使わないように言って聞かせていたのだが…


「二人とも、なんであんな事したんだ?蔵王のおっさんどころか、大河原姉妹も、柴田さんも死ぬところだったんだぞ?」


むっつりと押し黙る二人の魔法少女。

もー、この二人はホントに頑固なんだから…


「はい、正直に言わない悪い子は魔力精製器官をジャミングして魔法が使えなくしちゃいまーす。」

「まっ待ちなさいよ、言う!言うから!」

「むう、正直に言うのでそれだけはやめて欲しいです…」


おずおずと口を開く香苗ちゃんと絵梨花ちゃんは、東京にやって来るまでの経緯を語り出した。


「なるほど、俺が柴田さんに騙されているんじゃないかって思った訳だ」

「そうよ、その女はタダでさえモテない真一を誑かしているのよ!」

「そうですよ、お兄さんは狙われているんです。今回カッとなって切り札を切ってしまったのはやり過ぎだと思いますが、それは蔵王おじさんが短期間に思ったより強くなっていましたので、つい力が入りすぎた結果と言いますか…」


騙されてる俺を助ける為、ねぇ…

まるっきり見当違いの怒りではあるが、俺の為って言われちゃうと怒るに怒れないよな…


「あー、その、アレだ。言っておくけど、俺と柴田さんには何も無かったぞ。騙されてるとかそう言うのも無いから安心しろ」

「えっ、真一君気付いてたの…?」

「そりゃ自分の事は自分が一番わかってますからね」


それに騙されたと言っても柴田さんが俺に何かを要求する事も一切無かったし。まあ一昨日からボディタッチが増えた気はするけど…それにしても惜しい事したなあ、俺のオールドルーキーの初陣になるかも知れなかったのか…


「だから香苗ちゃんも絵梨花ちゃんも心配しなくていい。ほら、みんなにごめんなさいは?」

「ごめんなさい…」

「わ、わるかったわね…」


神妙な顔でぺこりと頭を下げる二人。

素直でよろしい。俺甘すぎか?下手すりゃ警視庁本庁舎ごと吹っ飛んでたぞ。ま、二人とも可愛いからいいけど。


「蔵王のおっさん、こりゃ総理からの依頼は失敗だな。香苗ちゃんと絵梨花ちゃんにあんな隠し球があるとは思わなかったよ」

「あ、ああ。悔しいが何も出来なかったよ…」

「純粋に魔法での戦いなら良い線行くと思ったんだけどな」


なんだかんだで、この五日で一番伸びたのは蔵王のおっさんだな。香苗ちゃんと絵梨花ちゃんが切り札を切ったのは蔵王のおっさんの身体強化魔法に二人が危機感を覚えたからだろう。とは言え訓練期間は残り五日、その間に香苗ちゃんと絵梨花ちゃんのオリジナル魔法の対策を練るとか無理じゃねえか?アレ、多分俺でもキッツいわ。今回はクーの力借りたから何とかなったようなもんだし…


俺はズボンのポケットからスマホを取り出して総理から聞いていた直通番号をタップする。


『はい、大郷だ。』

「悪い、魔法少女の強さは想定外過ぎた。二人か三人仕込んで戦力拮抗させれるかな、とか考えてたけど無理だったわ」

『ふむ…そう言う事であれば仕方ないか。ちょっと蔵王君に変わってくれたまえ』

「はいよ」


スマホの画面をシャツの裾で軽く拭いてから蔵王のおっさんに渡すと、二言三言会話して通話を切った。


「黒川君、少々路線変更だ。短期的な戦力の育成から中長期的なプランに切り替えたい。この訓練期間が終わった後もS市に人材を送り込むから引き続き訓練教官を引き受けて欲しい、との事だ。」

「まあ仕方ない。俺が捜査員として特捜局に所属できたらそれが一番話が早いんだが、俺は二人の使い魔だからな。」

「それ、いつも言ってるけど何なんだ?使い魔って」

「こっちにも色々事情があるんだよ。」


そこは突っ込んで欲しくなかったわ。

俺の使い魔感とか第二話がピークなんだから。


「はいっ!はいっ!アタシS市行きたい!」

「…S市に行けば毎日パパに会える。私も引き続き訓練を希望します…」

「そう言う事なら私もS市に行くわ。美鈴と鈴音にばかり任せきりにも出来ないし、真一君と離れ離れになりたくないもの」


予想通り前のめりで訓練参加を表明する大河原姉妹はまだわかるとして、柴田さん支部長なのにS市に行くっていいの?東京大丈夫?


「パパと一緒に住みたいってのも勿論あるけど、あれだけの力の差を見せつけられて何もしないなんて有り得ないからね」

「…えっ、お姉ちゃんパパと一緒に住むつもりだったの?図々しい…それなら私も一緒に住みます」


こうしてなし崩し的に俺の臨時訓練教官としての仕事は延長される事になった。


それにしても、何で香苗ちゃんと絵梨花ちゃんは俺が柴田さんに騙されてるって思ったんだろう…


尚、俺の携帯から盗聴アプリとGPS発信機が見つかったのは、それからかなり後の事だった。


本日も閲覧ありがとうございました。

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