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第七話 とある魔法少女と蟲の知らせ

ギリギリ本日中に更新間に合いました。


嫌な予感がします。


お兄さんが蔵王おじさんの頼みで東京に向かって三日経ちます。お兄さんは毎日蔵王おじさんと高校生と思われる二人の少女と訓練に勤しんでいる様で今のところ女の陰はありませんが、お兄さんはぼっち気質の癖に天然のタラシなので油断が出来ません。幸いな事に二人の少女は蔵王おじさんにご執心のようなので安心ではありますが。


なぜそこまで事細かにお兄さんの動向がわかるのか?ですか?


そんなのはお兄さんのスマホに仕込んだ盗聴機とGPS発信機のおかげですよ?意中の男性のスマートフォンにGPS発信機と盗聴機を仕込むのは恋する乙女の嗜みです。


アプリは白石さんにお願いして子飼いのアングラアプリ業者に作っていただきました。以前私の家に怖い顔のおじさんを差し向けた借りを返して貰ったつもりだったんですが、青い顔で震えながらOKしてくれました。脅したつもりは無かったんですが、魔力がちょっと漏れていたかもです。てへっ★


常にデータを送信するとパケット通信が途切れなく発生しちゃってバレるらしいので、音声データは数時間分ずつを深夜にネット上のクラウドストレージにアップする形式にしてもらいました。本当ならリアルタイムでお兄さんの声を聞きたかったんですが…仕方ないのです。


そして事件はお兄さんが東京に向かって四日目の朝に起きました。正確には私がその音声データを確認した五日目の朝でしたが。


『昨夜は凄かったわ、真一君…』


何ですか?この音声は…

焦って前夜の音声データを探しますが、ずっとお兄さんの規則正しい寝息が聞こえるだけで、心配していた様な事はありません。


「お兄さんはこのおばさんに騙されているんですね…私の名は岩沼香苗、地球(おにいさん)は狙われている」


いけない、私の中で何かが目覚めてV-MAXを発動しそうになってしまいました。


私ははやる気持ちを抑え、携帯電話を手に取ります。ダイヤル先は絵梨花ちゃんの携帯。


「絵梨花ちゃん、お兄さんが危ないの。」


***


その日の夕方には私と絵梨花ちゃんは東京駅の新幹線ホームにいました。新幹線のドアが開いた瞬間、左右に並んだ黒いスーツを着たおじさんたちが深々と頭を下げます。


「お嬢様方、お待ちしておりました。白石の兄弟からお嬢様方の護衛役を仰せ使っております、亘理(わたり)と申します。ここから警視庁までの運転手も私がさせていただきます」


一番前に立っていた白石さんと同年代のおじさんが運転手兼護衛役だそうです。正直普通のおじさんに守ってもらう事も無いんですが…


絵梨花ちゃんが言うには亘理さんは松島組の傘下に入った菱山組の新しい組長さんで、白石さんとは五分の兄弟分との事です。春先にあった争い事で菱山組のお爺ちゃんたちが引退して世代交代が進んだと亘理さんは笑って言いました。


どうもヤクザ屋さんの人間関係は私には難しくて困ります。


「それじゃ亘理、頼んだわよ」


絵梨花ちゃんはそう言うと、東京駅のロータリーで待っていた黒塗りの車に乗り込みました。私も後に続いて後部座席に座ると亘理さんがドアを閉めてくれます。


凄いスピードで背後に流れていく景色を見ていると、ここがS市とは全く違う土地なんだって事を深く実感しました。人の数も、建物の高さもまるで違う。何より空気中の魔力の濃度が全然違う。


人間とコンクリートだけで構成されているこの街は魔力がとても薄い。息苦しささえ感じます。


お兄さん、ここは私たちのいるべき場所じゃないです。早く帰りましょう。S市に…


私が物思いに耽っている間に、亘理さんの運転する車は警視庁本庁舎ビルの前に止まります。


「御苦労、後は絵梨花と香苗の二人だけでいいわ。亘理は車で待っていなさい。」

「畏まりました、お嬢様」


車を降りてお兄さんのスマホに仕込んだGPSを追って本庁舎内に入ると、私と絵梨花ちゃんは受付をスルーして地下の訓練施設に向かいます。認識阻害魔法を使っているので誰も気付かないみたい。気付かれたところで今の私たちを止められる人なんていないと思います。私たち怒ってるんですよ?ふんす!


訓練施設のドアを開けると、模擬戦を繰り広げる蔵王おじさんと二人の少女、それを眺めるお兄さんと、お兄さんの肩にしなだれかかるお母さんと同年代の女性。そう、あの人がお兄さんを騙しているのね。


カッと頭に血が昇りました。


「絵梨花ちゃん、行こう。お兄さんを助けなきゃ」

「わかってるわ。最初から全力で行くわよ」


ワイバーンを灰に変えた火魔法をお兄さんの横の女に向かって放つと同時に、私たちは訓練施設に飛び込みます。


「なっ、魔法少女!?」

「パパの敵?なら倒すだけ…」


高校生らしき二人の少女が私の火魔法を氷の障壁で相殺しました。恐らくあれが特捜局の切り札、大河原姉妹。よく練り上げられた魔法だけど、まだ私たちには届かない。


「鈴音、アイスフィールドを」

「…パパの敵は殺すわ」


大河原姉妹の妹の方から放出された薄い霧のような魔力が私と絵梨花ちゃんを覆っていったの。魔力の感じからして、おそらくここから始まるのは空気中の水分の急激な凍結、そして姉が撃ち込む超高温のファイアボールとの接触で起きる水蒸気爆発。


「甘いわね」


絵梨花ちゃんの魔力障壁が爆発の瞬間に私たちを覆う。


「そんな、アレを受けて無傷なんて」

「……化物…」


擦り傷一つ負っていない私たちを見て唖然とする大河原姉妹、その隙間を抜けて蔵王おじさんが飛び込んできました。


「絵梨花ちゃん、おじさんの攻撃は当たっちゃダメだよ。多分アレはお兄さんと同じ種類の魔法だから。私たちに届く魔法」

「へぇ、たった五日で使えるようになるなんて、おじさん凄いじゃない」


三枚重ねて張った魔法障壁を簡単に破る蔵王おじさん。まさかたった五日で私たちの命に届く刃を研ぎ上げてくるなんて。やっぱりお兄さんは凄いです。教え方がいいんですね。


「でも、まだ私たちが負けるわけにはいかないですよね?」

「そうよ、魔法少女は常に最強じゃないと」


仕方ないのです。切り札を出しましょう。

必殺技を出します。必ず殺す技ですが、私は蔵王おじさんも好きなので死んでほしくないです。だから頑張って耐えてくださいね!


封魔絶対領域(アンチマジック)


蔵王おじさんを中心に広がる魔法陣が全ての魔力を分子レベルで分解していきます。この直径十メートルの範囲では魔法は一切使えず、全ての魔力的効果は掻き消される。これが私の切り札、乙女の絶対領域。


そして普通の人間以下の能力値まで下がった蔵王おじさんに領域外から絵梨花ちゃんの遠距離物理攻撃が襲いかかる。


「あんまり可愛くないから使いたくないのよね、これ………鬼神顕現『剛腕』!」


レオくんたちの獣形態(ビーストフォーム)への変身と、身体強化魔法を解析してミックスした絵梨花ちゃんのオリジナル魔法。身長百三十センチそこそこの絵梨花ちゃんの右腕だけが、数倍に膨れ上がり、禍々しい鬼神の腕に変わります。


握り込んだ野球ボール大の鉄球が鬼の強靭な力で投擲され、一切の防御方法を持たない蔵王おじさんに襲い掛かるのです。


これが私たち魔法少女ブランシェとノワールの必殺技。名前はまだ無いの。


蔵王おじさん…死なないでね★


本日も閲覧ありがとうございました!

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