第三話 とある使い魔の教育的指導
今回もバイオレンス注意です。。
「はいはい邪魔するよ〜」
S市中心部にある窓の無い事務所ビルの二階、監視カメラが幾つも付いた警戒厳重そうな鉄扉を蹴り破る。
「昨今の組事務所は銃撃対策で通りに面した窓がないって聞いてたけどホントなんだな」
おうおう、居るわ居るわ。
明らかに知能指数の足りなさそうな連中がひいふうみい、ざっと二十人ってとこか。
「おうテメェこら、ここが何処だか分かってん…ギャァ」
詰め寄って来た趣味の悪いジャージ姿の大男の膝を正面から蹴り砕く。大丈夫?足取れてない?
「くせー息吹きかけてんじゃねーよカス」
倒れて蠢くジャージの顔を軽く蹴って辺りを見渡してみれば、低脳共は呆気に取られてか、馬鹿みたいに全員揃って口を開けていやがる。
「このゴミ二人のケツ掻いて岩沼さん家に無茶な取立てさせた馬鹿はどいつだ?今すぐ名乗り出なきゃこの事務所ぶっ壊して更地にしてやるからな」
後ろ手に引きずってきた小男と坊主頭を放り出すと、奥にある豪華なソファに座っていた四十絡みの眼鏡が立ち上がった。
「岩沼健次郎の債権を買い取ったのは私だが、ウチの会社の債権回収に何か問題でもあったのかね?そもそも君は何だね?そんな格好で急に社内に入り込んで、あまつさえ我が社の社員に暴行を加えるとは…」
きっちり整髪料で撫で付けた髪に銀縁の眼鏡、パリッとした三揃いのスーツ、蛇みたいなネチネチした喋り方。コイツはアレだ、俺の大嫌いなタイプだ。馬鹿のくせに自分が頭良いと本気で思ってるタイプだ。中学ん時の数学教師にちょっと似てるのもまたムカつく。
「警察呼んでも良いんだよ?住居不法侵入、暴行、器物破損…」
なんかしたり顔でまだベラベラ喋ってやがる。
彼我の距離はざっと十メートル、身体強化魔法を使わなくても一瞬で詰められる距離だ。
俺は一度の跳躍のみで眼鏡の前に立つと、徐にポマードでベタベタの髪の毛を引っ掴んでガラステーブルに顔を叩き付けてやった。
「ぶべっ!」
あーあ、高そうなテーブルが粉々だよ。
周りの低脳共もあまりの展開に付いて来れないみたいだ。ぼっ立ちしたまま俺と眼鏡くんを見ている。
「おい眼鏡、お前がこの組の責任者か?」
口元を震わせるだけで何も言わない眼鏡くんの髪を掴んだまま引き摺り起こして、軽く横っ面を張る。
「そ、そうだ。私が若衆を纏めている…」
「名前は?」
「………」
「名前はって聞いてんだろ、黙ってちゃわからねえだろうがっ!」
力任せに掴んだ髪を引くと、思ったより簡単に髪の毛ごと頭の皮が剥がれた。ピンク色の皮下組織が見えてドッと血液が流れ出す。
「ひぎゃああああぁぁ!」
回答が気に食わない。
ひぎゃあって名前でもあるまいに。
露出した頭の皮下組織を狙って引っ叩くと、眼鏡くんは白眼を剥いて気を失ってしまった。
「おいおい、質問の途中で寝てんじゃねーよ」
あまり得意じゃないがこのくらいの怪我なら俺の回復魔法でも治せる。気付け代わりに軽く腹に蹴りを入れてから頭部に回復魔法をかけてやったら眼鏡くんはすぐに目を覚ましてくれた。さあ続きと行こうか。
「もう一度だけ聞くぞ、名前は?」
「わ、私にこんな事をして只で済むと思っているのか?」
「思ってるよ馬鹿野郎。いいか、一般市民の方々がお前ら腐れヤクザを痛めつけてドブに叩き込んだり、頭の皮を引っぺがしたり、目をくり抜いたり、殺して埋めたりしないのはな、面倒くせーからだよ。お前ら殺すのなんて簡単なんだよ。でもな、お前ら面子が潰されたとかクソみてーな理由で組織だって徒党を組んで群れを成して仕返しするだろ?それが面倒くせえから我慢してあげてんだよ。逆に言えば俺なんかはお前ら腐れヤクザに逆恨みされてもなんら迷惑じゃねーし、徒党を組んだら集まった奴全員一人残さず丁寧に殺してやる。だから俺はお前らの相手をじっくりねっとりしてやれるんだよ、どうだ嬉しいだろ?わかったか?わかったら名前を教えてほしいなあ?」
眼鏡くんの心がポッキリと折れる音は、この事務所にいた全員に聞こえただろう。
「…です」
「聞こえねえ、もう一回!」
「白石ですっ!」
宮○ですっみたいに言っても許してやらねー。
「んじゃ白石くん、君に許された返事の仕方はハイかイエスしかない。もし口を滑らせて違う返事をしたらその指一本ずつ引き千切るからな。よし、わかったら返事だ」
「は、はい」
「とりあえず今後二度と岩沼母娘には近づくな」
「え、それじゃ借金の回収が……イギっ」
言ってるそばからコレだよ。
白石くんの右手の人差し指を掴んで逆方向に折り曲げてから真っ直ぐに引っ張ると、割と簡単に白石くんは四本指になった。
「あと九回間違えられるから安心していいぞー、もし延長戦がお望みなら両手の指の後は目ん玉片方ずつ潰してやるからな。それでも足りないなら付け根から腕引っこ抜いてやるよ、多分いけるだろ。よし、返事は?」
「ふぁい…」
こうなってからは後は簡単だった。
パンツ一枚の暴漢に頭の皮を剥がされて指を一本引き千切られたヤクザなんてもう生きてても仕方ないとでも思ったんだろう。諦めたように聞かれてもいない事までベラベラ喋ってくれた。
組の内情から、他の違法貸金行為、はたまた組長の性癖まで。ホントありがとうな松島組若頭の白石くん。
「ウチの子分をあんまりイジメないでやってくれるか、お客人」
入り口の方から俺に投げかけられた声に振り向いて見ると、上品に和服を着た初老の男が立っていた。
俺が部屋に充満させた殺気混じりの魔力のおかげで二十人からいる組員は誰一人としてマトモに動けないでいる中、悠々と俺の前まで歩いて来やがった。恐らく何度も命の遣り取りを潜り抜けてきているのだろう。
身の丈は百七十センチに満たない小柄な身体にも関わらず、その眼光は鷹のように鋭い。
「アンタがこのゴミ共の親ってわけか」
嘲るような俺の言葉にも、眉一つ動かさないで、その老人は言った。
「そうだ。儂が松島組組長、松島兵衛だ」
こんばんは。シモヘイです。
本日もご覧いただきありがとうございました。
今日初ブクマ頂いてモチベ爆上がりでした。
明日からも頑張りますので、ブクマ、評価、コメントよろしくお願いします。
 




