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第十五話 とある使い魔と社会情勢

本日2回目の投稿となります。

この後、少し時間を置いて第三章エピローグを投稿する予定となっております。


毎回のように言っており、大変申し訳ないのですが、評価とブックマークをお願い致します。


テレビの画面の向こうではアナウンサーのお姉ちゃんが声を張って、何処かで聞いた事のある台詞を連呼している。


『これはコンピュータグラフィックではありません!現実の出来事です!』


アナウンサーの背後にはS港付近の倉庫が立ち並ぶ港湾地区が映し出されており、その上空では体長十メートル近い翼竜がホバリングしていた。


「ワイバーンか、こいつら人食うからな。今は腹一杯なのか動く素振りは見せてないようだが…」

「近隣住民の避難は完了している。後は彼女たちが到着さえすれば」


県警本部庁舎の捜査員執務室はガランとしていた。俺と蔵王のおっさんを残して、ほぼ全ての捜査員と警察官がS港の現場へ出動しているからだ。


蔵王のおっさんが言うにはS港上空でワイバーンが発見されたのは今から二時間前、急ピッチで住民の避難指示が出された後、香苗ちゃんと絵梨花ちゃんに出動要請が届いたのがついさっきの事だ。泉区からS港までは緊急車両ではどんなに急いでも二十分はかかってしまう。今回はたまたま犠牲者は出ていないが、捜査員の配備や現場への迅速なアクセス方法の確立は今後の大きな課題になるだろう。


『今県警のヘリコプターから四つの人影が倉庫の屋根に降り立ちました。はっ?えっ?!魔法少女と…ライオン?』


アナウンサーの間の抜けた声と同時にテレビの画面がズームアップし、倉庫の屋上に立つ香苗ちゃんと絵梨花ちゃん、ワイルドブラッド兄弟の姿が映し出された。香苗ちゃんと絵梨花ちゃんは先日届いた魔法少女のコスチュームを身に纏いステッキを手に持っている。どこからどう見ても魔法少女だ。ワイルドブラッド兄弟も獣形態で二人を守るように前に立っている。


『今現場にライオンを二匹従えた二人の少女が姿を現しました。あ、M県警本部から公式発表が入っています、読み上げます。彼女たちは警視庁怪異対策室所属の魔法少女とその従者であるとの事です。超法規的措置をもってこの現場の指揮は彼女たちに一任する。だそうです。』


アナウンサーが県警本部の発表を読み上げ終える前に事態は動き出した。四人の持つ魔力に危機感を抱いたのか、ワイバーンが突如として四人が立つ倉庫の屋根に向かって急降下を始めた。


ワイバーンの攻撃方法は主に三つ、鋭い牙と爪による物理攻撃、尻尾の先にある毒針、そして喉の奥にある毒腺から毒液を撒き散らす猛毒のブレスだ。


だが、相手が悪かった。

哀れなワイバーンはその自慢の攻撃を一つとして披露する事無くその存在を消失させた。


急降下を始めたワイバーンに向かって、レオとライアンが野球ボール大の鉄球を全力投球で投げつけるとワイバーンの翼に大きな穴が二つ開いた。バランスを保てなくなって錐揉み回転しながら落ちてきたワイバーンを香苗ちゃんと絵梨花ちゃんの放った火属性魔法が塵一つ残さずに燃やし尽くした。


「えげつねえなあ…」

「三十秒もかかってないな。あんまり楽勝過ぎると過激派の動物愛護団体から苦情とか出るんじゃねーか?魔獣にも生きる権利がー、とかさ」

「そんな寝言をほざく連中なんぞ無視して構わん。現地の本吉が言うには俺たちでは全く勝ち目が無いって話だったからな。あの翼竜が弱いんじゃない、彼女たちが強すぎるだけだ」

「それが理解できるようになっただけでも十分成長してるよ、アンタらだってまだ強くなるさ」


俺の言葉に苦笑いで返す蔵王のおっさん。


「だが、これで彼女たち魔法少女の力は広く世間に知られる事になってしまった。これから彼女たちの周囲は騒がしくなるぞ、それを守ってやるのは俺たち大人の仕事だからな」


今の香苗ちゃんと絵梨花ちゃんの純粋な戦闘力は、レオとライアンのサポートを加えた場合、恐らく近代国家一国の持つ軍隊の総戦力に匹敵する。


物理障壁でアンチマテリアルライフルを含む殆どの銃器を無効化でき、たとえ直撃したとしても戦車の放つ砲撃でさえ彼女たちにダメージを与える事は出来ないだろう。どこかの国が本気で彼女たちと敵対する場合、感知されない程の超遠距離から街一つ巻き添えにするつもりで弾道ミサイルを撃ち込むか、数十万人の兵士を動員した総力戦で二人の魔力が切れるまで犠牲を顧みる事無く戦い続ける他無いのではないだろうか。


そんな国家に匹敵する戦力を持った女子小学生を世間が放って置く訳が無いだろう。事実はどうあれ、核ミサイルのスイッチを子供に持たせているようなものだ。


テレビの中では香苗ちゃんと絵梨花ちゃんがレオとライアンにそれぞれ跨ってカメラに手を振っている。


蔵王のおっさんが言った通り、この時からカフェリトルウィッチを取り巻く環境は変わり始めた。世間と言う名の目に見えない怪物が俺たちに目を付けて、牙を剥き出した瞬間だったのかも知れない。


***


人命が脅かされる程に強大な魔獣の存在と、それに対抗しうる魔法少女の存在を世界が認知した日から数日後、日本政府は迅速に事態の収集を図った。


初めに、それまで秘匿され公然の秘密とされていた警視庁怪異対策室の存在を公にし、警視庁の下部組織でしかなかった対策室を廃止して、内閣府直轄の魔法及び魔獣捜査機関『特殊事案捜査局』を設立した。ちなみに初代局長には蔵王のおっさんが就任する事が内定している。


特殊事案捜査局の設立と並行して、徹底したマスコミ対策も実施された。主眼に置くのは香苗ちゃんと絵梨花ちゃん、ワイルドブラッド兄弟の正体の秘匿だ。彼女たちは特捜局の最高戦力としてでは無く、あくまで善意の第三者として事件の解決にあたるものとされ、表向きは日本政府もその正体は知らない謎のヒーローとして公式発表された。


勿論そんな発表をマスコミ各社が間に受ける事もなく、暫くテレビや雑誌の誌面は魔法少女の正体を暴こうとする追跡調査や、日本政府、特捜局の陰謀を論ずる番組が主流となったが、やはりそんな根も葉もない噂程度の情報で番組を作ってもお茶の間に飽きられるのも早く、一ヶ月も経たないうちに姿を消していった。


だが、日本が世界に誇るオタクカルチャーの発信地であるネット上の某巨大掲示板では、突如として現れた二人の魔法少女に、ブランシェ(白)とノワール(黒)と言うニックネームを付け、アイドル的な存在として崇拝し、愛でるムーブメントが急速に広まっていった。


そのネット上における魔法少女フィーバーの陰では、日本最大の暴力団となった松島組とその傘下である菱山組総勢二万人の構成員による『俺たちの魔法少女ブランシェたんとノワールたんを日本一のアイドルにしようキャンペーン』と言うマーケティング戦略が行われていたとか、いなかったとか…


本日も閲覧ありがとうございました。

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