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第二話 とある使い魔の肉体言語

注意

少々バイオレンスかつ勇者らしくない描写が御座います。


パンツ一枚でキメ顔、しかも自称勇者とか俺はなんて恥ずかしい事を…後悔は先に立たない。昔の人は良く言ったもんだ。


今俺はこざっぱりとしたアパートの一室にいる。1DKのダイニング部分だろう。板貼りの床にテーブル、椅子は二脚と言う事は二人暮らしか?


流石に半裸の成人男性が小学校の図書室にいつまでも居られる筈も無く、岩沼香苗と名乗った少女に促される侭、彼女の自宅アパートまでノコノコとついて来てしまった訳で。


ん、半裸で小学校からどうやって移動したかって?持ってて良かった認識阻害魔法ですよ。効果はドラ○もんで言う所の石ころ帽子、誰も俺の事を気にも止めなくなる。


はぁ?ずっとボッチだったから認識阻害魔法使いっ放しと同じ状態だろって?うるせえよ、泣くぞ。


「こんな物しかありませんが…」


香苗ちゃんがトレイに乗せた麦茶を持ってキッチンからダイニングに入ってきた。


差し出された麦茶に口を付けて、アパートまでの道すがらに話した内容を思い返す。


ここはM県S市泉区で、俺が異世界に召喚されてきっかり五年経過している。幸にして異世界と地球に時差も無く、何の偶然か喚び出される前に俺が住んでいたのもM県S市内。


流石に五年も行方不明になっていれば以前住んでいた賃貸マンションは解約されているだろうが…


とは言え戻って来れたのは僥倖だ。

何よりあのキチ王女と結婚しなくて済む。


少し薄目の麦茶を味わって、帰還した喜びを噛み締めていると、目の前に香苗ちゃんが座る。


「あの、お兄さん…」

「ああ、話の途中だったな。それで香苗ちゃんは悪魔なんか喚び出して何を頼むつもりだったんだ?向こうの世界から喚び戻して貰った恩もあるし、大抵の事は協力出来ると思うけど」


香苗ちゃんには道すがら向こうの世界で勇者をやっていた事、それなりに魔法が使える事、とてもお腹が減っている事、今夜寝る場所もない事を伝えていた。


最後の二つ要らないよね?


俺が要らん事を考えている間にも、じっと自分の膝を見つめたまま俯く香苗ちゃん。


言い難いのはわかる気がする。

ダイニングの椅子の数、調度品の趣味から見て恐らくは母子家庭、その母親がこの時間に帰っていない事、片付いているというよりは不要な物が無さすぎる室内、丁寧に着てはいるが着用回数が多い為か少しほつれのある服の袖口。


十のうち七は金銭的な事情、二が親の事、残り一割がそれらの両方ってとこだろう。


「あの…」

「お母さんは今何処にいる?」


意を決したように話しだそうとした香苗ちゃんの言葉を遮って問いかける。こんな時は勢い任せに限る。


「病院に…」

「病気なのか?」


答える代わりに力なく香苗ちゃんが項垂れる。


ビンゴだ。

アイテムボックスにはかなりの数の治癒ポーション、回復ポーションが入っている。ダンジョン深層産の最高級品だ。心臓さえ止まってなければ治るだろう。


「多分大丈夫だ、お母さんは治るよ。だからそんな悲しそうな顔はしなくていいんだ」


涙を堪えてこちらを見上げてくる香苗ちゃんのさらさらの髪を力一杯撫でてやる。


「明日一緒に病院へ行こう」


多分それで俺の出番は終わり。

ああ、多分親父かお袋が俺の行方不明届出してんだろうな。実家帰って行方不明届の取り下げしなきゃな。


それで少しばかりゆっくりして、落ち着いたら仕事でも探すか…


ドンドンドンドン

「岩沼さーん、いるんでしょー?」

「借りたお金は返そうねー?」


すっかり終わった気になってた俺の耳朶に、唐突にドアを叩いて喚き散らす下品な声が聞こえてきた。


今時こんな取立ての仕方、マトモな貸金業ならやる訳が無い。大方債権を買い取ったヤクザだろう。


「香苗ちゃん、俺お腹空いちゃってさ。悪いけど何でもいいから晩御飯食べさせて貰えないかな。その間にあいつら追っ払ってくるから」


ドアを叩いてがなりたてる取立て屋の声に怯える香苗ちゃんをキッチンに下がらせて、玄関に向かう。


いいね、この感じ。

勇者なんて呼ばれるようになったのはここ一年くらいで、その前までは永らく狂犬なんて嫌な二つ名で呼ばれてたもんだ。


社会の屑にはそれ相応の対応ってのがある。

今ドアを叩いてるバカ二人にはそれを嫌ってほど理解させてやらなきゃいけないねぇ


「うるせえよ馬鹿、何時だと思ってやがる。九時だぞ九時!良い子は早く帰って寝る時間じゃねえか、わかってんのか?」


ドアを開けるなり捲し立て、手前に立っていた坊主頭のゴリラにビンタを食らわせる。


「あがっ!」


加減は忘れないようにしないとな。

普通にビンタしたつもりが下顎が消し飛ぶなんて事になりかねない。でも歯は全部折れちゃったみたい。ごめんな。


口から血と歯の欠片を撒き散らしながらゴリラが横倒しに倒れた。残るは派手なスーツを着た小男が一人、相棒がぶっ飛ばされたのを見て目をパチクリしてる。可愛くねえよ。


「お、お前何なんだよ!何でパンツ一枚なんだよ、そもそもお前誰だよ、この部屋に住んでるのは岩沼健次郎のカミさんとガキだろ?」

「ギャーギャーうるせえな」


事態を飲み込めず混乱して喚き散らす小男の鼻を摘んで力任せに捻ると、思ったより簡単に鼻が千切れた。


「ギャアァァァァァァァァァァ!!!!!」


千切り取った小男の鼻を床に捨てて踏みつける。


「パンツ一枚で悪かったな、俺がパンツ一枚でお前に何か迷惑でもかけたか?あぁん?」


既に無い鼻を押さえて蹲る小男の髪の毛を掴んで引き摺り起こし、次は右耳を掴む。何をされるか理解したようで小男の目に怯えと諦めたような色が浮かんだ。


「声出すなよ、騒いだらもう片方も行くからな」

「イギッ!」


脅しが効きすぎたか、右耳を千切り取っても小男は叫び声をあげなかった。必死に自分の口を押さえて涙と血と鼻水と涎が混じり合った体液を垂れ流している。


「やれば出来るじゃねえか。んじゃ、お前んとこの事務所まで案内してくれや。おめーらみたいな下っ端じゃ話にならねえからよ」


オメーんとこの組長は、どれだけ千切ったら鳴き声あげてくれんのかね?そう言って小男の尻を爪先で蹴って先を歩かせ、倒れたままのゴリラの足を掴んで引き摺りながらアパートの外に出る。


「あ、あんたは一体…?」


振り返りながら問いかけた鼻と片耳を失くした小男に精一杯の笑顔で答えてやった。


「俺か?俺はお前らが食い物にしようとしてる岩沼香苗が喚び出した使い魔だよ」


こんばんは。シモヘイです。

本日もご覧いただきありがとうございました。


ストックも作らずに勢いだけで書いている為、皆様の反応だけがやる気を支えております。


一区切り着きましたらストック作りますが、暫く自転車操業となる事を先にお詫び致します。


それではまた次回、お会いしましょう。

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