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第五話 とある使い魔の職場訪問

少しでも面白い、続きが読みたいと思いましたら、

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結局よし江が帰ってくるまで三時間程香苗ちゃんを膝の上に乗せたまま過ごしたよ。それまでに三人にはざっくりとしたこの世界の常識を教えておいた。


特にこちらの世界には獣人は存在しないから獣形態で出歩く事は固く禁じたし、魔法もほとんどの人が使えないし魔力の存在も知らないから出来るだけ使わないように念押しした。


それから一番大事な事を伝えなければいけない。特にレオとライアンに。


「お前らちゃんと服着ろよ。普段は獣形態だから毛皮があるかもしれんが、こっちじゃ戦闘なんて滅多に起こらないんだから」


不満そうなレオとライアン。

コイツらいつでも獣形態になれるように緩めのハーフパンツ一枚なんだよな。真冬でも短パン一枚とかどこの小学生だよ。


今は二人とも人間の姿になっている。

燃えるようなオレンジ色の髪は三兄妹共通だが、ホント似てないよな、この兄妹は。


レオは短髪でガッチリしており身長も百九十センチくらいはある。逆にライアンは小太りで髪はふわふわの癖っ毛、身長百七十五センチの俺よりいくらか背が低い。


「ただいま戻りました〜」


昼をだいぶ回ったところでよし江が買い物から帰って来た。両手いっぱいに買い物袋を抱えている。


「店長、三人の服買って来ました。後で精算してくださいね」

「ああ、わかってる。領収書置いといてくれ」


良くあるファストファッションのチェーン店のロゴがプリントされた紙袋を渡して三人を着替えさせた。レオにはダメージジーンズに長袖のカットソー、ジャケット。ミァにはパーカーにデニム生地のホットパンツ。ライアンはTシャツにオーバーオールだった。


確かにそれぞれのキャラには合ってると思うが、体型、髪型とマッチしてライアンがアメリカのデブな子供にしか見えない。お前今日からボブに改名しろよ。


「おいおい、シン。こんな高そうな服貰っても良いのか?生地も柔らかいし縫製もしっかりしてる、こんな服、貴族でもそうそう着れないぞ」

「あー、それウニクロだからな。そんなんで良かったら幾らでも買ってやるわ」


なろう系の大半の例に漏れず、あっちの世界は中世っぽい世界観だった。服と紙が高くて食い物と人件費は安かった。人種も西洋っぽい顔立ち体付きが多かったな。


「シンくん、ありがとう〜」

「シン兄ちゃん、ボクこんな綺麗な服着たの初めてニャ」


満足してくれたようで良かったよ。

まあ俺が選んだ訳じゃないけどな、よし江が地味にお洒落さんでちょっと悔しい。


「着替えたら出かけるぞ。蔵王のおっさんとこ顔出してから肉食いに行こうや」


喫茶店のドアに臨時休業の札をかけてから、俺たちは地下鉄で県警本部へ向かった。警視庁の出先機関である怪異対策室はM県警本部庁舎内に間借りしているようだ。


案の定、移動中の市営地下鉄で三兄妹が電車にビックリしていたのはご愛嬌って事で。


***


青葉区の県警本部に着いて受付で蔵王のおっさんの名前を告げると、会議室に通された。片側八人掛けのデカいテーブルの傍で蔵王のおっさんが立ち上がってこちらに軽く会釈をする。


「御足労をかけて申し訳ない。座って貰えるかな」


全員が椅子に座った事を確認して対策室側の四人が頭を下げた。奥から蔵王のおっさん、二十代半ばの女が二人、一番手前に白髪の初老の男。


「今居るのが警視庁怪異対策室東北支部の全捜査員だ。一応俺が上長って事になっている。課長の蔵王だ。よろしく」

「情報分析官の米山です」

「捜査員の本吉よ」

「嘱託捜査員の栗原です。昨年定年退職したんだが、再雇用で引っ張り出されましてな」


定年退職したお爺ちゃんまで現場に駆り出すとか、よっぽど人材不足なんだな…


「それじゃこっちも自己紹介と行こうか。香苗ちゃんと絵梨花ちゃんについてはそっちで既に調査してるんだろうし省略させてもらう。黒川真一、泉区で喫茶店経営をしている」

「宵闇葵よ、泉区の喫茶店リトルウィッチで店員をしてるわ」


あ、よし江がまた厨二ネームを…

馬鹿じゃねえのか、国家権力相手に偽名使ってキャラ作るとかすぐバレるだろ。


「宵闇…まさか闇夜に彷徨う者か!?関西支部の捜査員を全員無傷で無力化したって噂の」

「そう呼ばれた事もあったわね、今はしがないカフェ店員よ。そちらが馬鹿な行動を取らない限り敵対する気は無いわ」


意外に有名なんだな、よし江の癖に…

つーかナイトワンダラーてなんだよ、どんだけ恥ずかしい二つ名持ってんだよ。あとお前は店員じゃなくて看板犬だからな。


「レオンハルト・ワイルドブラッドだ。レオと呼んでくれて構わない。エリカの護衛兼従者をしている」

「ラインハルト・ワイルドブラッドだよ〜。ライアンって呼んでね。お仕事はカナエちゃんの護衛かな?」

「ボクはミーア・ワイルドブラッド、シン兄ちゃんのお店で給仕をする予定ニャ」


全員がつつがなく自己紹介を終えると、蔵王のおっさんが契約書?誓約書?みたいな書類をテーブルに並べ始めた。


「それじゃ自己紹介も終わったところで本題に入ろう。岩沼さん、松島さん、我々に力を貸してはくれないだろうか。君たちに望むのは我々が力及ばず倒れた後この東北の平和を守る事、それだけだよ。だからそれまでは戦闘に参加する事は許可できない。」

「嫌よ!」


絵梨花ちゃんの即答入りましたー。

そりゃそうだよなあ、魔法少女になりたい絵梨花ちゃんが、こんな出番が少なそうな条件飲む訳ないよな。


「私もその条件には納得出来ません。普段は小学校があるのですぐに駆けつける事は出来ないかも知れませんが、出来るだけみなさんと同じように扱って欲しいです」


出来るだけ子供に頼りたく無いってあんたらの考え方は立派だよ、だけどさ、ちょっと二人を甘く見すぎてるよね。


「ダメよ、承諾出来ないわ!貴女たちがどんなに強いか知らないけど子供には違いないじゃない。子供を戦わせてのうのうとして居られるくらいなら警察なんて辞めてるわよ!!」


本吉と名乗った捜査員がテーブルを叩いて怒鳴っても香苗ちゃんと絵梨花ちゃんはどこ吹く風だ。


しかし、このままじゃ埒が開かないな。一つ提案してみる事にするか。


「そこまで言うなら、香苗ちゃんと絵梨花ちゃんの実力試してみたらいいんじゃねえか?言っとくけど、さっきアンタらがビビってた闇夜に彷徨う者(笑)だっけ?こいつらの中では一番弱いからな」


あ、しまった。よし江がショックで泣きそうな顔してる。ごめんて。後で犬用チュール買ってやるから勘弁しろって。


「仕方ないな…訓練施設に案内しよう。そこで実力を証明してほしい。我々が君たちを子供と思わなくて済むぐらいの圧倒的な実力を」

「簡単な話ね」


絵梨花ちゃん煽るなあ。

頼むから本気出さないでね…

多分二人が本気出したら県警本部無くなっちゃうから……


本日も閲覧ありがとうございました。

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