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第三話 とある使い魔の出会い系アプリ


使い魔の条件って言っても大体三つに集約される。人語を解する事、動物型である事、可愛い事、勿論戦闘能力が高ければ言う事は無いが、この間ぶっ殺した陰険悪魔でもこちらの世界で言えばかなりの難敵で滅多に現れないレベルらしいから今の二人の戦闘能力で言えば問題ない。むしろ使い魔なんていらない。


「喋れる動物とか向こうの世界で知り合った古龍種くらいしか心辺り無いんだよな…全長一キロくらいあるけど。神龍かよ」

「そんなの連れて来ないで下さいよ」


夜も更けて香苗ちゃんと絵梨花ちゃんが帰宅した後、俺とよし江は店舗二階の居住スペースのリビングで使い魔の調達をどうするか相談していた。他に人もいないのでよし江も久々に人間の姿に戻っている。


「ずっと狼の姿でいると精神が肉体に引っ張られちゃうんですよね。お客さんから貰った高級ドッグフードが滅茶苦茶美味しく感じたり…」


カフェリトルウィッチの看板犬であるよし江、店での源氏名はヨッシー君。最近ではかなりのファンを獲得し、毎日のように高級ドッグフードの差し入れをいただいている。ホント食費が浮いて助かるよ。


ちなみに店舗の居住スペースには俺とよし江の二人で住んでいるが、その事が香苗ちゃんにバレるとアパートに連れ戻される事になるので、看板犬のヨッシー君がよし江だと言う事は香苗ちゃんと絵梨花ちゃんには秘密だ。


「喋る動物ねぇ…」

「目の前にいるじゃないですか、喋れる可愛い狼さんが」

「お前があの二人の使い魔になったら誰がこのカフェの看板犬をやるんだよ。ダメに決まってんだろ」

「知り合いの吸血鬼の子に頼んでみましょうか?多分暇してる子もいると思いますし」

「そんなに吸血鬼いるのかよ。むしろそいつら雇って看板犬にするからよし江クビにしていいか?いいよな?」

「ダメですよ、私辞めませんからね!」


なかなか良い手が思い浮かばない。よし江と戯れながら何気無くリビングを見回していると、小学校から回収してきた例の本、猿でも出来る悪魔召喚入門が目に止まった。


「何とかなるかも」


テレビ横のチェストから例の本を手に取り、見開きの召喚陣のページを開く。この術式はチャンネルの近い世界からランダムに力の強い存在を招く。それをちょっと改良して…と。


基本の術式がしっかりしているから改良には大した時間はかからなかった。あの下級悪魔にこんな高度な術式構築が出来るとも思えないが…


まあいい。アイツは俺がぶっ殺しちゃったし、今更この召喚陣の入手元を調べても詮無い事よ。


「俺がつい最近まで異世界に行ってたって話はしたよな。この召喚術式に向こうの世界に座標を固定して、条件検索機能を付けてみた」

「条件検索?」

「俺がいた異世界にチャンネルを固定する代わりに、現在地、種族、性別、年齢、フリーワードを指定して一致した奴を召喚できるようにした。俺の魔法をレジストできるクラスの魔法使いじゃなきゃ拒否できない強制召喚だな」

「それなんて出会い系アプリの検索機能よ。それに店長の魔法をレジストなんて…」

「ああ、レジストできるのは向こうの世界なら管理神くらいじゃねえか?ホントならあのクソ女神召喚して二時間くらい正座させて説教してやりてえんだがな」

「タチ悪すぎでしょ、この術式…強制的に召喚されるって事じゃないの」


もうちょっと改良すれば向こうの世界に行くゲートを開く術式が作れそうだけど、あんまり行きたくもないし、キチ王女に会いたくないし。でもゲート魔法が完成したら応用して転移魔法とか行けそうなんだよな。時間のある時にでもやってみるか。


「さてさて、アイツらの拠点はフェアフィールドの街だったっけな。人数は三人、獣人族、男二人に女一人のパーティ。フリーワードは冒険者でいいだろ」


リビングのテーブルを除けてスペースを確保してから、床に手を突いて術式を構築していく。よし、完全一致が一件。間違いなくアイツらだ。


床に紫色に輝く魔法陣が描かれていく。一瞬後、魔法陣が放つ光が収まると、そこには二足歩行のごついライオンが二匹と頭に猫耳を載せた十代半ばくらいの少女が呆然とした顔で立っていた。


***


「よぉ、久しぶり」


訳もわからずキョロキョロするライオンが二匹。お、やっと俺に気づいたか?こちらを見て牙だらけの口をあんぐりあけている。


「お、お前、シンじゃねえか!今までどこで何やってたんだよこのチンピラ勇者」

「シンくん、久しぶりだね〜。元気だった?」


久々に会ったってのにチンピラとは随分な言種ですな。このライオン丸どもが。


「お前ら獣臭えんだよ。早く人間の姿に戻りやがれ」


コイツらとは五年前に俺があっちの世界に喚ばれてクソ女神からアイテムボックスの魔法だけを与えられて放り出された時、一番最初に辿り着いた街で知り合った。


無一文で言葉もわからず、寝る場所さえ無く、途方に暮れていた俺に言語理解の魔導具を貸し与え、冒険者のイロハを教えてくれた恩人だ。フェアフィールドの街のAランク冒険者、かつて滅びた獣王国の名を家名にもつ三兄妹、それが彼らだった。


「邪魔ニャ!どくニャ!」


言うなり猫耳の少女が俺の前から強制的にライオン二匹を排除した。高速ネコパンチを後頭部に食らいライオンどもが膝から崩れ落ちる。


「兄ぃたちは顔がデカいから邪魔ニャ。シン兄ちゃん会いたかったニャ〜」


いきなり飛びついて来た猫耳の少女を抱き止める。嬉しそうに俺の胸に顔を擦り付ける少女は目を細めて俺を見上げた。大人しく兄二人の後ろを着いて歩いていた頃の面影は無い元気いっぱいの笑顔。


「お前、ミァか?デカくなったなぁ、昔はこのくらいしか無かったのに」


ミァは三兄妹の歳の離れた一番下の妹で、依頼をこなして宿に帰った後は付きっきりで大陸共通語を俺に教えてくれていた。当時九歳だったから今は十四歳か。身長は勿論だが、胸部装甲が異常に発達して自己主張している。ホントにデカくなったね、お兄さん嬉しいよ。


「シン、俺の妹をそう言う目で見るのは感心せんな」

「シンくんはえっちだね〜」

「シン兄ちゃんなら…いいニャ」


ああ、この感じ懐かしいな。

まだ勇者なんて自覚も無くて日銭を稼ぐために冒険者として依頼をこなして四人で同じ宿で暮らしてたっけ。


「で、その三人は何て言ってるんですか?店長」


感傷に浸る俺をよし江が現実に引き戻す。あ、そういや言葉通じないんだっけ。アイテムボックスの中から言語理解の腕輪を取り出して三人に渡す。邪神討伐の為に中央大陸以外の地域にも旅する事が多かった俺の必携アイテムだった。


「言語理解の腕輪だ、前に借りてた奴より翻訳機能が上がってる。これを付けてみてくれ」


俺に促されて三人が手首に腕輪を装着した。


「よし江、ちょっと三人と喋ってみてくれ」

「ようこそ、異世界のお客様。こっちの世界も楽しんで行ってね」


よし江はニヤリと笑うと狼に姿を変えた。

風呂上がりだったのでTシャツにスエットパンツのラフな格好だ。そのまま犬モードになったもんだから、なんか無理やり服を着せられた金持ちの家の犬みたいになってる。


「……はっ?」

「い、犬が」

「喋ったニャ!?」


いやいやいや、お前らも喋るライオンだからな?何自分の事棚に上げてビックリしてやがる…


こんばんは、シモヘイです。

本日も閲覧ありがとうございました。なんとか更新できました。


いよいよストック0で毎日更新がしんどくなってまいりました。土日には少しでも書き溜めれるように頑張ります。引き続きコメントや評価、ブックマークをお願い致します。

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