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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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月島へ

その週末に、涼くんと2人で月島へ行った。

池袋で地下鉄有楽町線に乗り換え、月島駅で下車。涼くんと電車には何回か乗ったことがあるから、もうアンドロイドだとばれるのではないかと不安になることはなかった。

もんじゃ祭りという名称から下町風情の街並みを想像していたけれど、地下鉄駅から地上に出てみると、高層マンションが道の両側に建っていてびっくり。でもちょっと歩いて一本裏通りに入ると、背の低い戸建や店舗が立ち並ぶ商店街が現れた。月島もんじゃ祭りの旗が一本、商店街の入り口に申し訳なさそうに立っていた。

もしかして、もんじゃ祭りって、浅草の三社祭のような大きなお祭りでは無くて、地元の商店街の毎月のイベントみたい感じなのかも。

ちょっと拍子抜けしながら、道の両側の歩道の上にかかっているアーケードの下を進んだ。

特に代わり映えのしない商店街。

人通りもあまりない。時々すれ違う人はいるけれど、ほとんどが地元の主婦層。高齢男性も時々見かけるが、食料品の買い物中に見えた。

所々にもんじゃ屋さんがある。それほど密集しているという訳では無いけれど、もんじゃ屋さん自体がもともと珍しい業態だから、それが所々目につくということは、この商店街のもんじゃ屋さんの割合はとても多い。

時刻は昼ごろ。ちょうど昼食の時間だけど、もんじゃ屋さんが混雑している風には見えない。

「どこが有名なお店とか、あるのかしら?」

「調べてみようか?」

涼くんはきょろきょろっと周囲を見渡した。

電波が見えるのかしら?

それから、目は開けたまま少しじっとした。これはネットに接続している時の様子。多分、人気の店を検索しているのだろう。

「この先の左側の店が有名みたい」

前方を指さすので、そっちの方へ歩き出した。途中、もんじゃ屋さんを数軒通り越した。大きな店もあれば小さな店もあり、規模はいろいろ。でもチェーン店は無くて、全部が個人商店みたいだった。

彼が示した店の前に着いた。前面がガラス張りで小奇麗な店。ここに来るまでに時々見かけた、ちょっと保守的というか部外者を寄せ付け無さそうな、いかにも頑固おやじの経営するお店、という感じなら入るのに抵抗を感じたけれど、この店ならすんなり入れそうだった。

ガラス越しに中をチラッと覗くと、ほぼ満席。でも待つほどではなく、私たちが今入って座れそうな空席はあった。

店の入り口の横に、もんじゃ祭り参加店とポスターも貼ってある。ということは私たちが持っている無料券を使えるという意味だろう。

「じゃ、ここにしよう」

自動ドアを入る。特に声をかけられなかったので、空いている4人席に涼くんと向かい合って座った。テーブルの真ん中に大きな埋め込み式の鉄板がある。

自分で焼くのかしら?

考えてみれば、私は今までもんじゃ屋さんはもちろん、お好み焼き屋さんにも来たことが無かった。確か大阪のお好み焼き屋さんでは、お好み焼きを箸でなくヘラで食べると聞いたことがある。

ヘラって金属の板と思うのだけど、あれで食べて熱くないのかしら?それとも、お好み焼きの本場、大阪だけの話かしら?

そんなことを考えながら、2人で4人席を取ってしまったので、お店の人に席を変わってと言われるかもと、しばらく周囲に注意していたけれど、特に何の反応もなかった。

今まで男子と一緒に食事に行ったことなんか無かったから、涼くんと一緒に人前でテーブルに付くというのが、ちょっと誇らしかった。もちろん彼は人間ではなくアンドロイドなのだけれど、知らない周囲の人から見れば、普通の男の子に見える。それもかなり、いやとてもイケメンで滅多にいないほどの美少年。

きっと周囲の視線を集めるはず、と思ってなんとなく周りの人の様子をそっと観察してみるけれど、意外に誰も私達を気に留めていない。

あらっ、そんなものなのかしら?

店の客層は中高年が多い、それもほとんど男性ばかり。もともと周りをあまり気にしないタイプの世代なのかもしれない。または彼らから見ると私達が若すぎて目に入っていないのかも。

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