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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
長すぎたサマータイム
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パニック

グラウンドに整列して並んでいる生徒、特に最前列の生徒は、議員さんが過労や持病で倒れたのではなくて、何か非日常的な異常事態に巻き込まれたということに気が付き始める。

女子生徒は口に手を当てて深刻そうな顔でじっとステージを見つめているけれど、男子生徒たちは口々に隣の人と話し始める。

「あれ、撃たれたんじゃない?」

「えっ、マジ?」

「ボディーガードがマンション見てる」

「マンション?」

数人の生徒が次々にマンションを見上げる。

「犯人は?」

「さあー?まだいるんじゃない?」

「俺ら、良い射撃の的じゃない?」

「こんな所に、ボーっと立ってて、ヤバくね」

犯人が議員さんを狙ったのならば次の銃撃は無いけれど、もし無差別殺人だったならば、だだっ広いグラウンドに何百人と生徒が並んでいる状態はまさに良い狩場。そのことに気付いた数人の生徒が勝手に列から外れて校舎の方へ走り始める。

でも走り出すのは男子ばかり。女子はじっと立ち止まっている子がほとんど。いつもと違う異常な雰囲気に気圧されてごく少数が半泣きになりしゃがみ込む。

男子と女子だと、普段はやっぱり男子の方が頼りになる。文化祭や運動会でも男子がリーダーシップを取る場合が多い。もちろん女子でもそういう子はいるけれど少数だから、たいていの場合は男子がクラスなりクラブなり引っ張って行ってくれる。男子はイザという時は頼りになるものと思っていた。だから今の目の前の光景は意外。だって男子の方が逃げ足が速いから。他人を放っておいて我先へと逃げ出す。女子なんか目に入ってないみたい。

「ちょ、ちょっと」

先生たちも対応に困っている。生徒が無秩序に校舎の昇降口に殺到すると混乱で転倒など怪我をするかもしれない。でも”ゆっくり並んで〜”などと言っていたら無差別殺人犯の標的になってしまう。

「えっ、あ、あっ」

どう指示を出して良いか、どの先生も分からなそう。

グランドからさらに逃げる生徒が増えて、もはやパニック状態。泣き叫び何度も転びながら必死に校舎の陰に滑り込む大勢の集団。

かろうじて教頭先生が

「君も、そこ、降りて」

と、やっと私に気付いてくれる。

けれども、私はなすすべもなく茫然と立っている。

もしかしたら次の狙撃があるかもしれない、と漠然と思って本当なら避難するべきなのだけれど、逆に動くと余計に狙われるかもしれないという変な考えも浮かぶ。目立たないためには下手に動かない方が良いかもしれない。同時に本能的に恐怖がジワジワと襲ってきて、そのせいで足がすくんで動けなくなる。私の頭の中で、どっちが多くを占めているのか分からない。どちらにしても動けない。これが凍り付くっていうことなんだな、と思う。

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