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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
雨の日のランデブー
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サプライズ・スパゲッティー

「ちょっと台所、借りるよ」

「ええ、どうぞ」

何をするのかと彼の後ろ姿を見ていたら、冷蔵庫を開けていくつか具材を取り出し、見繕う。棚を開けていろいろ物色して

「あった、あった」

と乾燥パスタを取り出す。

まず大きな鍋で湯を沸かしながら、手際よく野菜やら魚介やらを適当な大きさに切って、調味料で味付けをし、時々フライパンで炒めた後、別の鍋で今度は煮込み始める。

湯が沸いたらパスタを入れ、その間に今度は冷蔵庫からいくつかの野菜を取り出し、適当な大きさにちぎって大きめの器に盛りつける。

3つの作業を並行して行っている。その手際の良さに私はびっくり。

ちょうどその頃に麵が茹で上がったので、ざるで湯切りして先に煮込んだ具材と一緒にほんの一瞬だけさらに煮込むと、こちらも皿に盛りつける。

お母さんでもこんなにテキパキと要領よく料理はできない。

ぼーっと見とれていると、テーブルの私の目の前にお皿が置かれる。

アサリとエビと青野菜が入った少量のスープにスパゲッティーが混ざっている。次にサラダ。レタスときゅうりとトマトに、黄色の?と思ったらパプリカだった。最後に飲み物。これは冷蔵庫の炭酸をそのまま入れただけだけど、持ってきてくれた。

「プーリア式ミスキアート・ポテンテ・アッレ・ヴォンゴレ」

「何?」

「簡単に言うと、シーフードスパゲッティー」

「私が食べて良いの?」

「今日1日、部屋を使わせてもらったお礼」

うれしい。素直にうれしい。

いつも、もう何年も夕食は一人で作って一人で食べていた。だから作るのも簡単なものばかりだったし、食器も洗う手間が省けるようにできるだけ兼ねていた。例えばスパゲッティの時なら麺を食べた後に、同じ皿にサラダを入れるとか。それ以前に野菜ジュースで済ましていた。それにスパゲッティーのソースは出来合いのレトルトを温めてかけるものだと思っていた。

うちにある材料からこんな豪勢なものができるとは思ってもいなかった。確かによく見ていると、一つ一つの具材は特段珍しい物ではなく、ごく普通のもの。それを組み合わせることと、盛り付け方の工夫でこんなに見え方、印象が変わるなんて。

「じゃ、いただきます」

まず麺をフォークで食べる。

おいしい。

ゆで方がちょうど良い。芯までキュッとアツアツの熱が通っているけれど、ゆで過ぎではなく適度な硬さを維持している。スパゲッティーってこんなにおいしいんだと改めて気付く。

次にスープを飲んで、あっ、全然違う、と思う。

いろいろなエキスが混ざり合っている。単に塩味、唐辛子味みたいな単純さではなくて、十分に素材の味が出ている。

「ESさんって、料理も出来るのですか?」

「一応ね」

感心する。戦争用の兵器と言っていたから、もっと雑な動きしかできないものと思っていた。

おいしいからついパクパクと食べて、ふっと彼が全く食べていないことに気付く。

「食べないのですか?」

「僕は機械の体だから必要ない。一応食べることはできるけれど、焼却するためにエネルギーを使うから、食べない方が効率が良いんだ」

こんなにおいしい物を作れるのに食べられないなんて、もったいない。

そう思いながらもあっという間に全部平らげてしまう。今まで食べたスパゲッティーの中で一番おいしかった。

「皿洗いは私がします」

「今日一日は良いよ。僕がするから」

と後片付けも彼がしてくれる。

最初は単に話し相手くらいにしか思っていなかったけれど、今晩のサプライズで彼の好感度が急に上がった。

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