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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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ケーキ屋さんにて

それから数週間が経って、もう工場のことも、あの外人の女の子のことも全く忘れてしまった時。

お母さんがお店のお客さんに、市内のケーキ屋さんの割引券をもらってきた。

ケーキなんて贅沢品、滅多に食べないけど、それが3割引になる。

私はお母さんに頼まれて、ケーキ屋さんに行く。

ショーケースから、美味しそうなのを2つ選んで、店員さんに袋に入れてもらう。

「合計1200円になります」

「これでお願いします」

私は割引券を出しながら、店員さんの顔を見てびっくり。

数週間前に、工場で涼くんを粉砕機に突き落とそうとしたあの外人の女の子だった。化粧をしているから、火傷の痕は全く見えないけど、同じ顔。

「かしこまりました」

割引券を受け取りながら、ニコッと彼女は微笑む。

人違いかな?外人だから、みんな同じ顔に見えるのかもしれない。

それに、私を見て特に反応しないし、やっぱり別人かも。

「ありがとうございました」

ケーキを受け取って店を出る。

多分、別人でしょう。あれだけ涼くんのことを嫌っていたし、遠い国からわざわざ日本に来て、ケーキ屋さんで働くというのは考え難い。ケーキ屋さんなら、自分の国にもあると思うし。

家に帰りながら思う。

あの外人の女の子と、涼くんは過去にどういう関係があったのだろう?

知りたいけれど、でも知ってどうなるものでもないし。

だったら、彼が自分から話すまでは、私も聞かない方が良いかもしれない。

私にとっては、今の状態で全然満足している。むしろ知らなくて良いことを知ってしまって、後戻りできなくなることの方が恐ろしい。それだったら、最初から知らないでいたい。

大事なのは、彼の過去を知ることではなく、今一緒にいることだから。

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