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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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危機一髪

声をあげる余裕もないし、もしあげることが出来たとしても機械の騒音で掻き消されてしまう。それにこの工場の周りは全く人通りが無かった。

どうしよう?

彼を失って、またモノクロの単調な日々に戻るか、それとも自分の命を守るために、彼の腕を離す?

でも彼のことを思うと、それは締め付けられるような孤独感、虚無感を引き起こす。

だったら私に残された選択肢は一つしかない。涼くんと一緒に粉々になること。

覚悟を決めないといけないかも、と思った時。

外人の女の子が手にしていたリモコンみたいな端末が、彼女の手から滑り落ちる。それはそのまま粉砕機のローラーの間に落ちて行き、ローラーの突起に挟まれて、グシャッと押し潰されて、あっという間に隙間に消えていく。

すると、つかんでいる涼くんの腕の感覚が柔らかくなってくる。

彼の方を見ると、金属の骨格と細長いオレンジ色のチューブの体に、再び皮膚が戻り体を覆い始めている。数秒で体の皮膚は復活し、目に生気が宿り意識が元に戻る。

彼をおかしくしていた、あのリモコンみたいな小さな機械が壊れて、元に戻ったんだ。

「涼くん、助けて」

私は叫ぶ。

が、彼は宙ぶらりんで、ジャンプするために反動を付ければ、私の片手がその反動に耐えられずに、みんな粉砕機に落ちてしまう。

やっぱり、遅かった。いくら涼くんでも、この状態では何もできない。

そう思った時、彼が目をつぶる。

ビシッと小さく音がして、涼くんの体が小さく青白い火花で覆われる。

次の瞬間、工場の明かりが一斉に消え、完全な暗黒に包まれる。

今までガーッと音を立てて回っていた粉砕機のローラーの音が段々小さくなってきて、ついに音が止まる。

そして、私の手も限界を迎えて、支柱を離してしまう。

ドサッと落ちた先は、ローラーの噛み合わせ部分。

足が何か硬いものに触った時、巻き込まれてもうお仕舞だ、と本能的に思ったけれど、音が消えたということは、ローラーの回転も止まったということで、私たちは粉砕機に巻き込まれずに済んだ。

しばらく本心状態で何も考えられない。

ちょっと高い所から落ちて、さらにローラーの隙間でゴツゴツと突起が付いていて足場の悪い所だったので、足を挫いたようで足首が少し痛い。

周囲はすごく静か。全く音がしない。そして真っ暗。何故だろう?まさか、実は死んでたりして。

少し時間が経つと、目が暗闇に慣れてきてだんだん見えてくる。工場の壁の上の方に明かり取りの窓があって、そこから月明かりが差し込んでいる。

やっぱりここは粉砕機のローラーの上で、すぐ隣に涼くんと外人の女の子が倒れている。

涼くんを揺らすけど、起きない。外人の女の子は気を失っているみたい。

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