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人型自走電磁パルス兵器と地味で普通の女子高生の物語  作者: 岡田一本杉
タタールの記憶
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廃棄物処理所

私、比呂美はちょうどその時、工場の外側で涼くんを探していた。

周囲は暗くなり始めている。

近くで唯一明かりが点いている建物があり、「産業廃棄物処理所」と看板が出ている。

明かりが点いているということは人がいるということで、もしかしたら涼くんと一緒にいた外人の子を見かけた人がいるかもしれない。

私は敷地内に入り、明かりのついている、いかにも工場といった感じのトタン板の壁の建物のドアをノックした。

返事がない。

でも、人の話し声が聞こえる。

「すみませーん」

ドアを開け、隙間に顔を入れ、中を覗き込む。

大きな機械がうねり声をあげて動いていて、その上にかかっているタラップに2人の人影がある。

涼くんと、さっき見かけた外人の女の子。

2人は何か話していて、私に気付いていない。機械の音が大きすぎて私の声が届いていない。

私は機械の傍まで行くと、梯子を少し登る。

すると、彼らの話し声が聞こえる。

「私の国を無茶苦茶にして、私をこんな醜い体にしたあなたが憎い。でも、一番許せないのは」

なんかただならぬ話題みたい。

外人の女の子が今にも涼くんを下に突き落としそう。彼らの下は、ごみを砕くためにギザギザの付いた大きなローラーが噛み合わさる箇所で、そんな所に落ちたら、死んでしまう。

私は梯子をもう少し登り、タラップに頭を出し、声をかける。

「あのー、すみません」

外人の子が私に気付く。

「あっ、あなたは、ESと一緒にいた子。何しに来た?」

「夜も遅いので、そろそろ涼くん、家に帰った方が良いかなと思って」

彼女は警戒した顔で私を見る。

「これとは、どういう関係?」

と、涼くんを指さす。

「関係?一緒に暮らしていて、身内ような者ですが」

昼間に参道で見かけた時とは、明らかに雰囲気が違う。昼間はのんびりとして天然みたいな雰囲気を漂わせていたけれど、今は一分の隙もないような張り詰めた、まるで雌豹みたいな感じ。

「これが何か知ってるの?」

「えーっと」

私は答えて良いものか迷う。もちろん涼くんがロボットであることは知っているけど、目の前の外人の子は知らないかもしれない。

涼くんは、私と彼女の会話の間中、全く身動き一つしない。やっぱり何か変。

私が答えないので、彼女は手にしているリモコンのような端末のスイッチを押す。

すると、涼くんの顔の真ん中に一筋の割れ目ができて、顔の皮膚が左右に割れて、中から金属フレームが現れる。まれでそれは金属の頭蓋骨のようなかたちで、その前面に丸いセンサーが2つ付いていて、まるで骸骨に目玉だけ付いているように見える。

頭だけではなく、腕や足も同じように、皮膚が真ん中から2つに分かれて、銀色の金属の骨格と、樹脂製の関節、その周りに無数のオレンジ色の細いピストンのようなチューブが現れる。そのチューブは体中に無数に張り巡らされ、多分人間の筋肉の代わりになるもので、骨格を動かすのだろう。

そして、そのチューブの隙間に、所々配線と、いくつもの黒いチップが載った深緑色の基板が見える。

涼くんがロボットだということは頭では分かったつもりだったけど、実際に目にすると恐怖心を感じる。

それはとてもグロテスクで、人間ではあり得なくて完全に機械なのだけれど、逆に中途半端に人間に似ていて、全身の皮膚がない人、つまり骨格と筋肉だけに見えるから、余計に不気味に見える。

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